第一章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆はじめての気持ち
2004.01.01
今日は元旦だ。
Lや捜査員の皆はこれを祝ったりするのだろうか。事件でそれどころでもないのだろうか、それとも各々自宅で家族と新年を祝うのだろうか。
__皆はいまここに居るのだろうか。
Lはもう起きているのだろうか。
気になってマイクのスイッチをつけるが、人の声は聞こえてこなかった。
様々なことを考えながら私はシャワーと着替え、朝のスイーツの準備などに取り掛かる。そして最後に自らの手記を見た。
次に起きるのは南空ナオミと夜神月との対面だ。しかしいまいち記憶の中からそれがいつ起きるのかを引っ張りだせずにいる。
そうくれば、もう毎日毎日、耳を澄ましているしかない。
今日という日にそれが起きてもおかしくない。
レイ・ペンバーの死を救えなかった以上、彼女は間違いなく私の知るように行動する。
キラに騙され、ここに来ようとする。
できることならば、彼女も救いたい。彼女を救い、キラが追い詰められてしまったのでは弥海砂の行動を把握しかねることになるが、うまく言葉を交わすことでどうにか死の運命だけから彼女を遠ざけることは可能なはずだ。
そう、例えば身元を隠して失踪したように振る舞ってもらう、キラに動きを見せないと約束してもらう、などだ。彼女はLを全面的に信頼している。そこをうまく利用することができれば。
「ちょっと早いけど・・・竜崎もう起きてるかな」
・・・夢見があまりに悪かったので、Lの顔が見たかった。
朝のスイーツの準備は他の時間帯よりも大変だ。はじめて竜崎の朝食を目にしたときのあのスイーツの山、あれは毎朝必要とされるものらしかった。
そのために私は朝だけ銀のカートをおして部屋を出ることになる。まだ竜崎が活動していないことも考え、お茶はあとで向こうで淹れればいいだろう。茶葉と、スイーツを数種類、取り皿やスプーン、予備のポットも全部載せて、私は自室を後にした。
「・・・おはようございます」
しずかに部屋に入ると、暗い部屋は静まり返り、数個のモニターが光っていた。捜査員の皆はやはり居ないようだった。部屋がずいぶん広く感じた。
「竜崎起きてる?・・・というか、いる?」
もし寝てたら起こしてしまう、と小さな声で呼びかけた。部屋にはから、とカートの音だけが響いた。
「早いですね。」
「ひあっ」
真後ろの真上から声が降ってきた。びくっと肩をすくめつつ振り返ると、予想よりずっと至近距離に竜崎が立っていた。目の前はシャツだ。そう言えば足元が影っている。見上げた竜崎はいつものように指をくわえていた。
「お、起きてたんだ。びっくりした・・・」
「ずっといましたよ。・・・あとひとつ、あとひとつと考え事をしていました。」
そう言いながら竜崎は早くもカートにのせたままのワッフルを手でつまんで食べる。上機嫌なのか、目を大きくして、口元はにやりと、まるでピエロの横顔だった。
「あとひとつ、あとひとつ?・・・なにそれ。」
「手掛かりのことです。」
手掛かり、それはつまりキラに迫るための材料。なんとも穏やかでないことを言っているのに、なぜだか竜崎の様子は穏やかに感じた。何時ものことながら隈も深く寝ていない様子であるのに、と今更ながらその身を思いやった。
と、同時に、「あとひとつ・・・」という単語が脳裏に引っかかり、私はひとつの記憶を呼び覚ました。
「竜崎、もしかして昨日みなさんが帰った後窓際で考え事してた?」
「ええ」
__今日だ。今日、南空ナオミがキラと対面する・・・!
であれば私は、いよいよ先手を打たなければならない。キラより先に彼女に会い、彼女の「Lへの伝言」を受け取ることができれば。あとは彼女には静かに息をひそめてもらうことさえできれば。そのためには、もしかしたら私は今日、初めて夜神月と顔を合わせることになるかもしれない。
「なぜそれを知っていたかは置いておいて、夕陽、昨晩は大丈夫でしたか。」
竜崎の声に、ふと現実に戻る。
「ん?大丈夫って、何が?」
__夢のことか・・・と一瞬考える。
「いえ、すぐ部屋に戻ってしまいましたので・・・。私やワタリ以外の人間に会ったことで何か変化があったのではないかと」
あぁ、そのことか、と私は思った。たしかに多少不自然な挙動だったかもしれない。
「大丈夫ですよ。ううん・・・大丈夫!。」
ほんとうは気まずさに出てきちゃった、なんて言えずに、正直にそのことだけは言った。ともかく、今後は気をつけないと。
南空ナオミのことが今日であると分かると、それに関連して少々情報が戻ってきた。
この捜査本部には、世間の情報を得るためにたしか表向きのキラ捜査本部での窓口役が必要とされる。そこに相沢さんが向かうときに、すでに夜神月と南空ナオミは道で会話していたのだ。あの二人の会話自体はそんなに長いものではなかったはずだ。時間は、警視庁職員の一般的な登庁時間から1〜2時間以内といったところだろうか。
夜神ライトが南空ナオミに出会ったのは、父親への届け物をするため、警視庁の窓口だ。出会いは偶然であり、夜神月が彼女に出会うことを未然に防ぐことは不可能ではない。
私がこちら側でつじつまさえ合わせてしまえば、彼女と出会わなかったこと自体で、未来はそう大きく動かないはずだ。
問題は外出できるかどうかだが・・・幸い場所は警視庁周辺であるし、場所の確認をしても違和感はないだろう。
「竜崎、朝ごはんとお茶の準備はできてるし、散歩がてら警視庁の場所を確認してきてもいい?そして近くのカフェによって来てもいいかな?」
「ええ。構いません」
よかった。
案外なんの反応もなくOKをもらうことができた。
無意識にかにっこりすると、竜崎はおだやかな様子でソファーに腰をかけた。
そして「夕陽」と言いながら隣に座るよう、右端のスペースを指し示した。
わたしは「はい」といって隣に座る。
「やっぱり、悪くないですね。誰かが隣に居るというのも」
ごく平坦に、しかし微かに笑うように口を動かしながら、竜崎が呟いた。いや。わたしに話しかけているのかもしれない。
それは以前ちらっと聞いたことのあるような台詞だった。でもあれは冗談だと思っていた。冗談でなくとも、ただの気まぐれにすぎないと、そう思っていた。
「はじめての気持ちですね。」
私はその意外な言葉になにも言えず、その横顔をただ見た。
おどろき、目を見開く。
当然のことながら、その先には固く、無機質な、鋭い印象の竜崎がいる。そんな竜崎が、視線に気づいたように柔らかい表情でこちらを見た。
おもわず恥ずかしくなった。
「そっか、ならここに座ってるよ。」
もしかしたら竜崎は、隣に誰かがいるという感覚から、また別の何かを感じているのかもしれない。それが孤高の天才であるからか、それとも他の理由があるからか、私が分かることじゃない。でも、それなら私ができることはただ、ここに座って竜崎の隣にしっかりといることだ。それだけが、私にしかできない、単純なこと。
「はい、どうかお願いします。」
再び丁寧に、穏やかにそして平坦に竜崎は言った。わたしはふふっと笑って、膝を抱えて前を見る。
もちろん私がここ、竜崎の傍でしなくちゃならないことはたくさんある。彼を守ること、私の知る未来から、できるだけ悲劇を遠ざけること。でも、私のしらないところでも彼の足りない心があるのなら、そこを埋めてあげたいと思う。そのことが、もしかしたら、なにかを変えるきっかけになるのなら。
恩人のために、大切な、竜崎のために。
私はただここに座って、一緒にいればいいのなら。いていいのなら。
「あのさ、竜崎」
「なんですか」
「ちゃんと言ってなかったね。・・・こんな私だけど、居てほしいって言ってくれて、居場所をくれて、ありがとう。いつか記憶が戻るまで、迷惑かけちゃうけど、・・・それまでよろしくね。」
たどたどしく気持ちを告げると、ふっと竜崎はほほ笑んだ。初めて見た、とわたしは驚く。
幸せだ、とわたしは思った。
ただ、憧れた人が、言葉にならない気持ちだけれど、こうして近くにいられることが、その顔を見ていられることが。
Lはどんな気持ちなのだろう、とふと思ったが、
からかわれそうなので黙って美空ナオミの計画を練ることにした。