第一章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆手の届くところ
・・・ううーん・・・しかし煮え切らない。この胸のもやもやは何だろうか。
私は不機嫌さと不可解さを併せ持ちつつ、頭をひねった。竜崎の丸い背中が横目に見える。
ちらっとその顔のほうに目を移すと、大きな眼がこちらに向けられた。私はびくっとする。
「夕陽さん、このあとホテルを移動し、日本捜査本部の方々と合流します。あなたにはこの捜査に携わる間、当分役目を離れてもらおうと思っています。」
「・・・!」
「もちろん監視下および保護下に置くことは継続します。捜査員の方には夕陽さんの存在を隠すという意味です。」
予想はしていた。
ついに言われてしまった、と私は思った。
とっさに「それはだめ」と叫びそうになるが、ぐっとこらえる。
私は必死になんて返そうか考えた。早く竜崎を説得しなければ。彼は行動が早い。
「すみませんが私は、付いていきたいです。お願いします。」
「だめです。私も大きなリスクの上での判断です。あなたは危険を冒す立場ではありません」
「危険、でも・・・付いて行かせてください。今まで通りスイーツ係として、捜査本部に加えてほしいんです。」
私はひたすら頭を下げた。断固として分かってくれない気もするが、まずは頼まないと、と思ったのだ。
「だめです。」
だめ、それじゃあ
__みなさん、しにが
__竜崎!!
あの、未来を止められない。
あの”ストーリー”が、現実になってしまう。
私に力がなくても、たとえ未来は変えられなくても、私は
私は、
__冗談です。でもここにいてください。
あなたがいなくなる未来を、黙って見ているだけなんてできないよ。
不気味かもしれない、身分も知れない私に「居て」って言ってくれた。役割と居場所をくれた・・・。
だったら私のもってる力、私の与えられるもの・・
それが無意味でも、せめて守るために・・戦わせてほしい。この手の届くところで・・・。
じゃないと意味がないんだ!
「・・・たし、知って・・る・・・から」
気が付いたらぶるぶるとこぶしを握りしめ、そんなことを口走っていた。竜崎はとくに表情を変えるでもなく、こちらを見ている。
「私、超能力者かもって・・・いっ、言いましたよね。それで・・協力できるかもしれないんです。」
頭の一番表層に浮かんだ理由づけを必死に口にする私だった。
「協力、ですか」
「はい、事件、キラ事件のこと・・」
__言えない。
私は言いかけて言葉を途切れさせた。
散々考えてきたことだったのに、下手に口を滑らせるなと。・・何処まで言っていいか考えなきゃ。
考えなきゃ・・・。これから来る捜査員の名前を知っているだとか、そんなことは言えないし、考なきゃ・・・。
「な、なんとなく・・知ってるような、未来のようなものが、・・・犯人が誰かとか、次に何が起きるかとか、そこまではわからないけどぼんやりと見えるような気がするんです。だから、助けになるかも・・私も、力になりたいです。」
なんとも曖昧にぼかして、私は悪いことをしているかのように俯いた。実際、悪いことを、していた。自分の本心でなく、竜崎に対しても真実を言っていない。なんとなくそれらしき理由を並べるだけの言葉は罪悪感でいっぱいだった。
ばりっ、と竜崎が食べていたキャンディーを噛み砕く音がした。
「お気持ちは嬉しいですが・・やはりだめです。」
竜崎が俯いて言う。前髪がその表情を隠し、私にはばりばり、ばりばり、という飴の音しか聞こえてこない。
「あなたは「Lの側にいること」の危険を分かっていません。自分から危険を冒すようなことはしないでください。」
落ち着いて放たれた言葉に、胸が痛かった。Lの危険、という言葉も、そこから私を遠ざけるような言葉も全部、痛みだ。
ましてや、その理由が他人を心配してのことなんてなおさらだ。私だってあなたの関与を止めたいくらいなのに。できればこんな事件に関わって・・・命を落としてほしくないのに。
私は自分勝手だ。沢山の命と竜崎をはかりにかけるようなことを考えている。それなのに・・・
「夕陽さんの部屋は別フロアに確保してあります。行きま」
「・・・竜崎だめっ・・・いかないで・・!」
気が付いたら私はそのシャツを掴んで引きとめていた。
下を向いたまま、頭が考えることをやめ、私の頬を生ぬるい涙が伝った。
指先に、つ、と力がかかり、竜崎が立ち止まるのが分かる。
「・・・いかないわけにはいきません」
真上から竜崎の声が降ってくる。驚いているのか、辟易としているのか、それとも無表情か、私にはなにも分からず、考えることもできなかった。ただ、声をかけて引きとめたかった。ぽたっ、と涙がひとつぶワンピースのすそに落ちる。
「夕陽さん?」
「Lが・・・竜崎じゃなかったらいいのにって、いま思いました。」
思ってもいないことを、自分でも気付かなかったようなことを、ぽつぽつと私の口が話し始める。目の前には微動だにしない竜崎の青いジーンズがある。
「私・・・・・「夕陽」って名前をくれて、「居ていい」って言ってくれて、すごく嬉しかった。」
だめだ、だめだ、と静止をかけるもう一人の自分が、口をついて出る言葉たちをなすすべもなく眺めている。私は竜崎に額を当てる。
「そんな「あなた」が・・・“L“じゃなくて「あなた」が、すごく、なんていうのかなぁ・・・
自分の中で大きすぎて、危ない思いをするのが辛いんです。
あなたは私に居場所をくれました。
なのに、こんなに早く・・・置いて行かないでください。」
論点も定まらない言葉がやっと途切れたところで、竜崎が少し動いた。私ははっとしてその服にしがみついていた両手を放す。
「夕陽さん、顔を上げてください。」
その声とともに、温かい手が肩に触れた。そっと前かがみだった私をまっすぐに起き上がらせた。
もうばれてるだろう、と私は泣き顔のまま少し前髪を触りながら見上げた。
すると、ずっと高いところに、分かっていただろうに、どうしてか目を大きくした竜崎の顔があった。でも、何時ものようにワンセットのにやりと上がっっているはずの口角は無表情のままだった。
「夕陽さん、まず・・・置いて行きません。居なくなりません。」
どうしてですか、と彼は尋ねた。
「あなたは、未来が見えると言いました。」
見上げて、私はこくんと頷いた。
「であればあなたの「見てきた」私は、この事件で消えてしまうみたいです。・・・そう思います。そんなはずありません。」
消える、と言ったときに、微かに竜崎が目を細めたように感じられた。しかしそれは気のせいであるかのように、すぐにいつもの問い詰めるような表情でまっすぐ私と目を合わせてきた。私はもう誤魔化すことをあきらめ、ただ頷くこともできず、ただ再び泣かないようにそれを睨み返すことしかできなかった。
「事件が終わったらまた、よろしくお願いします。・・・それではだめですか?」
その質問に含まれる沢山の質問に目をつむり、目じりの涙をぬぐう。私は再び竜崎を見つめた。そして肩にあてられた手に自分の手を重ねた。竜崎はたしかに居る、そんな実感を手のひらに感じながら、軽く、深呼吸をした。
「前に、守ってくれるって言いましたね。だから私はキラ事件にかかわっちゃだめなんですか?それは、私の身を案じてですか?・・・それなら、わたしもあなたが大切で、憧れで、私の正義です。なので、命を落とすかもしれないキラ事件なんかに、正直関わって欲しくないです。・・・・・・でも竜崎はL。それに守りたい正義もある。だから、私に止める資格はありません。分かっています。」
だから、と私は一旦言葉を区切った。
「私にも、私の正義を守らせてください。私は、あなたを守りたい。・・・なにもできなくても、せめて手の届く場所に居たい。それに私、名前がないから死んだりしません。」
私は竜崎の手をとった。そして再び頭を下げる。
「竜崎。もう一度お願いします。捜査の邪魔はしません。ただ、今まで通りスイーツ係をさせてください。一緒に、連れて行ってください・・!」
言っちゃった。喋りすぎちゃった。と、
言いたい放題言って、ひとことも口をはさまなかった竜崎の反応が不安だった。でももう頼み込むしかなかった。こんなに竜崎という人物に踏みこんで、多く語って、未来はどうなる。私はどうなる。漠然とした闇が私の前に広がっていた。
「・・押しきるつもりでしたが、やはり無理でしたね。」
すこしして、さっきまでとは様子の違う声で竜崎が言った。顔を上げると、そこにはいつものにやけた顔があった。
「えっ、じゃあ!・・ん・・・・や、やはり?」
「ええ、やはりです。」
涙目のまま拍子抜けと疑問に困惑する私に対して、いつにもましてにやり感のつよい竜崎。首をかしげると、彼の視線は私の手元に移る。
「・・・・あっ、いやっ・・・すいません!!!」
あわててぱっとその手を放す。竜崎はその片手を加えると、にやりと笑って距離を縮めてきた。
「やっぱり夕陽さん、わたしに惚れてるんですね。」
大きな眼が目前にあり、その中にあんぐりとした私が移り込んでいた。
「違います!・・・ほ、惚れてるとか、一言も私言ってないですからね。」
「そうですね。惚れてるは言いすぎでした。」
「そうですよ。あれはそんな意味で言ったんじゃ・・」
「私けっこう記憶力良いほうですよ?再現してみましょうか。・・りゅ」
「あーーーっ!!」
なんとなく収集のつかない言葉の応酬が続き、私はひとまず捜査本部に参加できることとなった。竜崎に言ったことは半分くらいが予定外の内容だったが、ぎりぎりの線で言ってはいけないことを避けられたように思えた。恥ずかしいことを言ってしまったのは、私の主観だからこの際考えないことにする、というスタンスを構えることにした。
「もう、いいじゃないですか。私、嘘ついてないし!後ろめたいことないもん。」
「・・・夕陽さん、最近口調が砕けるようになってきてます。どちらかにしてください。」
「じゃあ、こっちにする。・・・他の方が居ないときとかに。」
「そうしてください。それと、夕陽さんは捜査員の方々からみれば「こっち側」になりますので・・私も呼ぶときに「夕陽」と呼ばせて頂きます。」
タメ口に呼び捨て。ひいい・・言い回しに誤魔化しがきかないなあ、と私は竜崎に背を向けて舌を出した。リューク相手とかなら強気に出て話す必要があるけど竜崎が相手だと、どうにも難しい。
「何をぼけっとしているんですか。スイーツをつまみ食いできないのはいやだから、と泣き落されたとワタリには伝えておきます。荷物をまとめてください。」