第一章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆ひとりぼっちの作戦
2003.12.5
ここ数日間、もっといえばリュークと会話したあの時から、自分なりのキラ対策としてノートに「知っていること」をまとめよう、という考えはあった。しかし、件の「定位置」により、なかなか自室に長い間こもる時間がとれずにいた。加えて、比較的平穏な日々が続いたことも、こうして私がサボるきっかけになってしまったように思う。
音原田九郎の件でそのことを反省した私は、今日こそはやらないと、と考えていた。Lを守る、と幾度も決意を固めてきたが、昨日は逆に「守るので安心していなさい」といったように宥められてしまったのだ。釈然としない、という理由に加え、「心配だ」とか「手を出すな」と万が一言われてしまったら・・・未来を変えることはできなくなる。そういった心配もあった。
そのためできるだけ、悩んだり頭を抱えるところを、竜崎に見せるわけにはいかなかった。弱い、とも見せてはいけないし、悩んでいる、も良くない。危なっかしい、とも思わせては駄目だな、と私は考えた。
そこで「今日は、ちょっと頭の中を整理させてほしい」と竜崎に頼みに行くと、意外とすんなり了承してくれた。
そういうわけで、私は現在、自室の机で「デスノートやキラ事件にまつわる事柄」なる手記をつづる作業に当たっているのである。
「さて・・・とはいってもどう書こうかな」
私はまず、開いたページに大きく死神とデスノートのイラストを描いた。自分にしかわからないようなお粗末さだ。
そしてそこから線を伸ばし、死神の目やノートのルール、リンゴなど、思い出せる事柄を書き込んでいくことにした。思い出せた事柄はひとまず書き込み、それから整理する作戦だ。
「ノートをさわると死神がみえるっと・・・わたしは触ってないけどなぁ」
今更ながらの疑問も口にする。それも星マークを付して横に書き込んでみた。それからすこし思い直し、ノートを逆の表紙から開いてそこに自分に関する事柄を整理する場所とした。
「デスノートに名前を書き込むと40秒で心臓麻痺。その時間内なら死因も書くことができて、さらに・・・6分40秒だっけ・・・詳しい死の状況を書くことができる・・・。」
私はその「詳しい状況」という文面に下線を付し、なぜか「FBI」と濃く書いた。書いてから、レイ・ペンバー、南空ナオミ、といった名前が浮かんだ。それから、おぼろげに「ファイルの順番」「バスジャック」という用語も同時に浮かびあがる。近々事件に関わることになる名前に間違いがないが、いまいち明瞭にその立ち位置を思い出せない。
私はそれらの単語もページを変えて箇条書きでメモした。追加事項があれば書きたせるように、それぞれの間には十分な余白を取った。
私は、自分でも不気味なほどにその利用法を熟知していた。もしかして以前キラだった?なんて恐ろしい考えも浮かんだが、「デスノートの所有権を失うとデスノーに関する記憶を失い、死神も見えない」といったルールから外れる。記憶喪失だけはあてはまっている。それにしても死神から名前を見ることのできなかった私は別物だということになるのではないか。ここではもう、自分の不気味さだとか真相については疑問点をメモするにとどめることにした。
少しだけ思考がそれ、私は再び南空ナオミ、レイ・ペンバーといった名前に目を戻した。そうすると、名前の他にもぼんやりと思いだせることがあった。南空ナオミは、夜神月との会話の末、デスノートによって自殺に追い込まれること。
「理由は・・・そうだ、バスジャックとレイ・ペンバーの死が原因で、Lに情報提供をしようと・・」
南空ナオミとレイ・ペンバーは婚約者同士で、レイ・ペンバーの死を怪しんだ彼女は自ら調査をし、「キラは心臓麻痺以外でも人を殺せる」という結論にたどりつく。
「いや、その前にレイ・ペンバーの・・・FBIの死因を思い出すんだ。あとFBIがいつごろ日本にやってくるのかも・・・」
私はそこまで考えてから、時間軸にそって整理するべきだと、新しいページをめくった。
1.L,ICPOにて日本警察の協力を要請
2.L、キラは日本警察の情報を得ることのできる人物だと推定
3.FBI入国、日本警察キラ対策本部上層部の関係者の尾行
4.バスジャック(レイ・ペンバーが名前を見せる)
5.レイ・ペンバーとFBIの死
6.日本警察とLが合流
7.南空ナオミの死
8、レイ・ペンバーの調べていた家への監視カメラ設置
時間軸に沿って、一番上層に浮かんでくる出来事を番号を付して整理する。日付がないのが問題だ、と私は頭をかしげた。それに、まだ助かるかもしれない人物に対して「死」と書いてしまうこと憚られた。しかし、これで一旦出来事の前後関係は整理されたように思えた。
その下部には
*ただし、4までのどこかでキラは「死の状況」の範囲を断定している。つまり、刑務所の囚人を操っている。(「えるしっているか」)
*4が「死の状況」の範囲の断定に必要だったのか、FBI駆逐の計画の一部だったのかは不明
*Lも囚人の情報から「死の状況」を操れることができることを知っていた?6の時点で捜査員に「実験していた」と説明している。
*南空ナオミの情報は重要なものではなかった可能性(このあたりの記憶は思い出せない)
*現時点で1に居るか
などと、確定しない事柄や補足事項を書き込んだ。
補足を書いている途中から、私の意識は明らかに「レイ・ペンバーや南空ナオミを助けることはできないか」という方向に傾いていた。彼らは竜崎と同じだ。もし、Lにそれとなくなにか提言し、「何があっても身分証明をしないで」との指示をFBIに出すことができたなら・・・。それがだめでも、南空ナオミとどうにか接触し、Lはもうその可能性に辿りついてると伝えることができれば・・・。
でも自分の知る未来を変えることで、私はその先も竜崎を守り通すことができるだろうか。
正直、自信はない。先が見えないのならば、私はただの一般人だ。頭だって彼ら_夜神月や竜崎_ほど回転が速いわけではない。自分の知る未来を変えることは、たとえるならば武装解除であると同時に、「動きをみせた注意すべき対象」としてキラに認識されることでもある。同じ土俵に立ってしまえば、キラにとって私など、全く骨のない存在だ。
自分が命を落とすことは、それ自体は怖くない。しかしそれでは「Lを守る」ことを果たせない。私しか彼を守れないのだ。それに、下手をしたら、最悪の場合助けられないどころか、私はその首を絞める手段になってしまうかもしれない。
例え「夕陽」という人間が、死神の目をもってしてもその本名を知ることのできない存在であったとしても、一人の取るに足りない人間であることに変わりない。いくらでも駒にされうるのだ。
私の、進むべき道は・・・つまり。
___Lをとるか、多数の見殺しを選ぶか
・・・ほんとうにそういう問題なのか?
私は、「違う」と、誰にともなく強く言い放つ。
ノートに書き連ねた多くの人物の名前を見る。
南空ナオミ、レイ・ペンバー、夜神月、L、夜神局長をはじめとする捜査員の松田、相沢、宇生田、模擬、弥海砂・・・
彼らは皆、まだ会ったことのない人たちばっかりだ。でも私は知っている。
かれらは、自分の中の正義に忠実に生きている、生きてきた人間だということを・・・。
結果など、憎しみなど、エゴなど、感謝や善悪など、全てはただそれに付随するだけのものにすぎない
そして現在ここにいる「夕陽」・・・私の選ぶ正義は・・・言うまでもない
_「私は、私の目の前で人の命が奪われることを許しません」
_「それが私の正義です」
目を閉じると、記憶の片隅でそんな言葉が強く強く反響した。
この言葉を、この正義を守ることが、私の正義。
この炎を絶やしてはいけない。
そのために私は此処にいる。
Lの正義を守る。誰ののためでもなく自分の正義のために。
だから私は・・・もちろん、Lの正義に似ている彼らを放って置けるわけがない。
__Lを助け、目の前の命も救う。
__Lの正義のためには、Lでさえ必要とあらば欺こう。
それが私のやり方。
__でも、・・・いざとあらば私は・・・
私はキラのように、悪人のように、命を切り捨てることになるだろう。正義のための悪・・・いや、ただの悪人と言われても仕方がない。Lの正義の中でも、私は悪人と言われるだろう。世界に残酷だといわれても、報いは全てが終わった後いくらでも受けよう。
私には何も、無い。失くすのがこの身一つなら安いものだ。
「もう迷わない」
・・・と、方針を固めたは良いけど、と私はまたページをめくった。。
いまこの現状。私のとれる行動はかなり限られていた。
まずは行動範囲。竜崎の監視・保護下において私はこのホテルにとどまることを余儀なくされる。それに、スイーツの調達や買い出しといった時には外出できるが、許可制の発信機付きだ。移動には車を使うことが義務付けられているし、行動は間違いなく把握される。
「散歩・・・とかどうかな。あぁでもそっか発信機で分かっちゃうよなぁ」
例外的な外出は目立つし、その前後に何かが起きるのは避けなければいけない。人目に付かないならまだしも、発信機で監視されているとあらばなおさら目立ってはいけない。
現時点で私ができそうなことと言えば、
*捜査本部での発言(ただし本部と合流後、かつ私も参加できるかは不定)
*竜崎に対しての発言
*単独行動時のリュークが訪れてきたとき(起きうるかは不明)
以上の三つに絞られる。
そして、「いつ夜神月を追い詰めるべきか」も考えておこうと思った。
普通に考えれば、早ければ早いほうがいい。無駄な犠牲も、犯罪者の裁きもそれだけ減ることになる。私も、竜崎のように考えれば一刻も早くでも逮捕するべきだと思う。たとえば、運よくリュークが訪れてきた際、「リンゴはいくつでもあげるから」と監視カメラ探しをさせない、といったことも可能であるかもしれない。
しかし___弥海砂。
彼女の存在がその案を否定した。
そして、レム。
私は初めのページに戻り、リュークのとなりに白い骨のような死神を書きたす。記憶の中では、竜崎をじかに手にかけた死神だ。私は思わず歯を食いしばりながらできる限り彼らのことを思い出した。
弥海砂は自らの両親を殺害した強盗犯に裁きを下したキラに憧れており、夜神月と出会ってからは彼の言葉に従い続ける。死神の眼の持ち主。仮に憧れのキラが居なくなっても、その力が自らにあるとき、彼女はその意思を一度は継ごうとする。
レムは、弥海砂の幸せを第一に願う死神だ。自らの犠牲も厭わない。ということは・・・
1.弥海砂がキラを知り、ノートの所有権を得ている
2.夜神月が逮捕されたと仮定したとき
*1.夜神月とすでに接触を持っていた場合・・・「ミサの幸せ」を害したL陣営に、レムが復讐
*2.接触を持っていない場合・・・キラの意思を継ぐ→すぐにLが気付く→レムが食い止める
以上の可能性に限られる。どちらも、1、2の条件がそろっているときに夜神月が逮捕されたときに起きると予測される。1の条件さえ回避できれば話は変わってくるが、いまの私の記憶の中には1の時期の断定要素は一つもなかった。
分かるのは、うすぼんやりとした「キラが助けてくれた」というミサの声のみ。この記憶だけを頼りにするならば、1は満たされている可能性は否定できない。
つまり、「いますぐ」は*2にあたる。駄目だ。
私が3つの手段を駆使して介入できそうなものとして、妥当なのは*1の場合だろう。
すなわち
二人のノート所有者が接触をもち、捜査本部に足を踏み入れる時。まずは片方のノートを確実に確保し、夜神月の記憶を戻させず、計画を阻止する。もう片方は、レムを説得することで解決する。
これしかない。
かなり先の話のように思える。しかし、私は限られた時間で具体的な手段を考える時間と、発言するだけの完璧な土台を築かなければならない。この時点に達するまでに必ず捜査本部に参加しなければいけないし、夜神月、弥海砂、そして竜崎にも、微塵たりとも怪しまれてはいけない。
チャンスは一回だけ。