序章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆空白
「おはようございます」
唐突に聞こえた声に、私は寝ぼけた目を開けた。見渡すまでもなくそれは昨晩眠りについたのと同じベッドで、私自身も同じ服を着ていた。外はすかっとした青空になっていた。
うーんと、背伸びをして向きを変えると、そこには青空と同じような色のジーンズが・・
「・・わぁぁぁぁぁっ!!!!えっえっL!?」
あわてて崩れた髪や顔を布団で隠すが、Lはもう遅いといわんばかりににやりと笑った。
「隠すのはそっちですか?」
「へ?」
「はだけてます」
私は再三悲鳴を上げた。
その突飛で「ありえない!」と叫びたくなるような行動に、立場上私は抗議することもなく、ただ「ついてきてください」という彼の後ろを多少むすっとしてついて行くしかなかった。
シャワーや着替えをする時間をくれたのは非常にありがたかったけど、と思った。私はクローゼットに用意されていた別の服に袖を通していた。用意されていた服は全て、監視されているためか、ポケット類のない簡素なワンピースばかりだった。初めはなんとなく「着なれない感じ」のするそれらの服装に戸惑ったが、ほかに何もないのでまぁいいか、とそれを着ることにしたのだった。
それはともあれ、何日軟禁されるのかと覚悟していた矢先、たったの一晩でまた呼び出された。
昨晩私が尋問のようなことをされた部屋_応接室のような場所_に再び通された。以前来た時と違うのは、朝食の時間だからか、テーブルに所狭しと様々なデザート類がおかれていたことだった。部屋を開けるなりメープルやシナモンの香りがした。私は一瞬圧倒されたが、それらはとてもおいしそうだった。
「・・・砂糖は見るのも嫌なんじゃなかったんですか」
「あれは違います。・・・私は塩よりは砂糖、派です。」
「なるほど。気が合いそうですね。」
昨日の敵意は何処に行ったのか、そんな他愛ない会話をできたことに私は驚いた。Lはこんもりと山になったドーナツをひとつ手に取り、私にひとつのファイルを渡してきた。
「今開示できる、はいほくののひょうはへっかです」
ドーナツをほおばりながら言うので、おそらく「最速の調査結果です」と言ったのだろう。私はその発音には触れず、その表紙を開いてみた。
「んん・・英語だ・・・。」
「英語は苦手ですか。なるほど。」
そう何かに納得したように言うと、Lは次のページを開くように指示した。私はその通りにする。
「そちらには同じ内容が日本語で書かれています。」
確かに日本語だった。これなら読める、と私は上から順に目を通した。
「指紋と・・血液と・・えっとDNAと・・。・・・あれこれって」
「ほうです。該当者ナシです。」
Lがまた新しい一個をほおばって言った。その目はなぜだか遠いところを見ている。
・・・該当者ナシ?・・・あっでもそうか・・こういうデータって前科者とか外国人じゃないと通常登録されてないんだったっけ。
「つまり私は犯罪者とかじゃないってことですね!よかったです!ありがとうございます!」
「はいっ」と、自分なりに納得してファイルをLに差し出すが、彼はそれを受け取らない。
なぜだか彼はその動きをとめてこちらをじっと見た。
「いえ、そうではなくて」
「・・・?」
「「あなた」という人物に該当する者は記録の上ではこの世界中どこにもいなかった、という意味ですよ。」
その言葉に私の頭は暫しストップする。
首をかくん、と傾ける。
・・・
ええと、指紋とかDNAでそもそも戸籍とか調べられるんだっけ。あ、でもLなら秘密裏に全部把握してるのも不思議じゃないのかな・・そんなことを次々と浮かべては消えて考えた。
「補足事項として、記録に残らない人物というのも私のようにいますが、あなたの様子ではそこに当てはまるようにも思えません。
紛争地域などの難民という可能性もゼロでしょう。
念のため日本国内の失踪届や夜逃げ業者、中学・高校・大学等の卒業写真データも参照しましたが、あなたはいませんでした。」
甘い香りのせいだろうか、その内容のせいだろうか、わたしはくらくらと何かにあてられていた。Lはチョコドーナッツをぺろっとなめ、一個まるまる口にほうりこんでで言った。
「あなはあ、だれなんへひょうね」
発音のままならないLの声を聞いて、私は改めて自分の耳を疑った。「あなたは、だれなんでしょうね」と。そう言われた。こうも現実とともに投げかけてくる質問に答えられるわけがなかった。私は、記憶がないどころか、どこの記録にも残っていないというのだろうか。だれの記憶にも残っていないとでも言うのだろうか。もしかして、私のことを知っている人物も「此処」にはどこにもいないのではないか。
_私は、「違うところ」から来た・・・?
_「此処」じゃないって、「何処」・・・?
_わたしの、いたばしょ
「わたしの・・いた場所・・」
その考えにたどりついたときに、私は無意識に呟いていた。
冷汗も、遠くなる外気の音も、ブラックアウトも、あぁ・・また初めての体験だなぁ・・・とぼんやり思った。
かくん、と、膝の力が抜けた。倒れる。
・・・
「落ち着いて。」
ふと、浮遊感を感じた瞬間に、私は後ろから誰かに支えられた。温かい体温を感じる。俯いていて見ることはなかったが、それはLの声だった。いつのまにか後ろに回って、支えてくれていた。
「座って。・・・深呼吸です。」
まともに前の見えていなかった私は、Lの声を遠く聞きながら、彼につかまりっきりでひとつのソファに座らされた。
肩に手をおかれ、何度か私は背中をさすられたような気がした。そうやって乱れた呼吸を繰り返すのち、次第に視界が開けてきた。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・あ、・・・L・・・?」
目をしばしばとさせはっきりと前がみえるようになると、真向かいにLが座っていた。
ちょこん、と向かいの椅子に三角になって座っていた。
「おちついたらこれを一口」
唐突に延ばされたその腕には、ひとかけのチョコレートが乗っていた。私はのチョコとLの顔を見比べると、それを手にとって口に入れた。