第一章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆隣り合わせ
「長い間停車していたようですが、なにか問題でもありましたか。」
ケーキを切り分けて竜崎のもとに持って行った時のことだった。
さっそく先ほどの空白の時間について竜崎から鋭い指摘があった。
「いえ・・・なんでもないんです。ちょっとデパートに忘れ物しちゃったんですけど、発信機いれたままカバンを車に置き忘れちゃったんですよ」
えへへ・・といってごまかせないかな、と思った。
「やはり発信機は腕輪にします。外出時のみでいいです。」
「はい・・・」
私の乾いた愛想笑いは特に意味がなかったらしく、再び私は初日と同じような腕輪をワタリさんから受け取るはめになったのだった。まぁ、とくにそれ自体は私の気にするところではなかった。
でも・・・これがあると動きづらくなっちゃうなぁ、と思った。
さっきみたいにカバンを車に置いておけば、すこしの距離なら単独で行動できたりするかなぁ、と思ったけど。・・・例えば、夜神月と話をしたり。具体的な案を浮かべたわけではなかったにしろ、現時点で直接コンタクトをとる方向では動けないようだ。
うーん、まだいくらか猶予こそあれど、これからどう行動したものか・・・。
真剣に考えなきゃいけないのに、なんだか頭がこんがらかる。人の命だってたくさん関わってくるのに・・・うーん。
「とても美味しいです」
ぼうっと立って考えていると、真横の竜崎が言った。
「ありがとうございます」
その声にふと思考から抜け出す。そういえば初仕事だったな、なんて思った。喜んでくれて何よりだ。
竜崎ははやくも一つ食べ終えたのか、切り分けたもうひとつに取り分けナイフを伸ばしていた。
その姿をみていると、なんだか嬉しくなって頬が緩む。
「夕陽さん」
「はい?」
「私の顔にクリームついてますか?」
ん、いきなりクリーム?
私はしゃがみこんでその顔を確認する。
「よいしょと。うーん、ついてないですよ。大丈夫です!」
「いえそうでなく・・あんまり見ているので私の顔になにか付いているのかと」
「あっ・・・・・。」
うわぁ、とかあちゃぁ、と頭の中で誰かが言った。
「すいません、美味しそうにしてくれたのでうれしくて・・つい。」
取り繕っても仕方ないのでそのまま言うと、竜崎はどこか遠いところをみて唇をひっぱるようにした。
「そんなに見てたいならこの部屋にいてください。そこの椅子にでも座ってください。」
「い、いや別にみてたいわけじゃ・・・っ」
あわててムキになって返答すると、竜崎がくっと口角を持ちあげた。
「冗談です。でもここにいてください。」
その表情を保ったまま一言言うと、彼はすぐに操作していたパソコンに向き直った。
私は三秒ほど遅れてから「そういえばどう考えても冗談だよなぁ」などと気付き、それから最後の一言に「ええええっ!」とサイレントに叫んだ。
「あの・・・邪魔じゃないですか?」
「夕陽さんは邪魔にはなりません」
「どうしてですか?」
「なんとなくです。そこに誰か座っているのも悪くないと思いました。」
そこ、といった竜崎は、自分の右端の空いたスペースを指差した。私も目線でそれを追う。
・・・そこに誰か座ってるのもわるくない?ええと、ええと・・・小さめのソファーだし隣・・・だよね。
・・・まぁいいか。
勘ぐりようにも、推し量りようにも、理解が追いつかなかった私は素直にすとん、と竜崎が座るソファーの右端に浅く腰かけた。
居心地・・・悪いわけではないが、何をしていいのか分からず、竜崎の操作するモニターを見た。白い画面に無数のウィンドウが開いていてアルファベットが並ぶ。他の言語もあるようだ。高速でスクロールし続けるものもある。なかには顔写真が現れては消え、を永遠と繰り返すものもある。どれを見ても、私には何が起きているのか分からないものだった。
竜崎はこれぜんぶを目で追えているのだろうか、と気になった私はその横顔に眼を移した。
余計な電気を付けていない部屋。うす暗いその空間では、白いモニターの光に照らされて竜崎の顔はなおさら青白く浮き上がるようだった。半分は前髪で隠れた顔だが、その隈だけは横からでもはっきりと見える。さっきまではあんなにふざけていた風だったのに、まっすぐに閉じられた口はもう声をかけることを許されない雰囲気を持っていた。
まぁこういう態度で何を考えているのか分からない人だったよね・・と私は記憶を頼りに思う。たまに突拍子もないことを言い、たまにきつい一言を言う。でもいつだってまっすぐだし、誰より人が傷つくことを嫌う人だったはず。自他共に「そんな手段適切じゃない」なんて評価でも、わたしにとってはそれは紛うこと無き正義そのものだった。
私の、憧れだった。と、過去の自分に言われたような気がした。