第一章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆死神リューク
「・・・!」
目があって、それはニヤッと、大きく口をあけて笑った。遠くてもその様子が分かった。
動きを止める私をよそに、それはそう遠くないビルの屋上にちょこんと、鳥のように着地した。
そしてくるっと、こちらを振り返る。
その形に、表情に、竜崎のような感覚を・・・正確には「なぜだか知っている」を覚えた。
・・・リューク。死神。しにがみ・・・?
死神は、人を殺す・・・?人を殺すのは・・・死神の・・・
はっとして私は、カバンとケーキを運転手に預けて、すぐ戻るから、とそのビルに向かって走った。
「すみません、ここで待ってください!」
人込みを押しのけ、裏道に入る。するとペンキの禿げた壁が印象的な、ちいさな雑居ビルがあった。
かんかん、とその無機質な外階段をわたしは音を立てて一気に駆け上がった。
「はぁ・・はぁ・・」
あたり一面の灰色のコンクリートの屋上。
私は息を荒げたまま、どこだ、どこだと念じながらあたりを見渡した。このビルのはずだ。さっきも、下から見上げた時、たしかにあの黒い影があった。
「おーう、俺を探しにきたな?」
真後ろから声がして、私はひゃっと声を上げて振り返りながらよろめいた。「うぉぉ、あぶねぇなケケ」と死神が笑った。
大きな口と、不揃いな牙が目の前に浮かんで大きく開いていた。
けれども、私は笑う気分にはなれなかった。
言ってしまおう、と思った。
「・・・っリューク!」
ぐっと顔をあげてその名を叫んだ。
「私はあなたを知ってる。この人間界で何をしたか、もしくは何をするのか」
「ほう・・ケケ。」
「お願いがあるの。・・・ノートを、デスノートを・・・ここに落とさないでほしい。」
まっすぐに見上げて言う。死神のリュークが「驚いたな」とつぶやく。
数秒ののち、彼はいっそう大きな声で笑いだした。
「残念だったな」
大きな眼がぎろりと、楽しそうにこちらを見た。
「ちょっと遅かったな。」
そして再び大きく空に笑った。それはもう、すがすがしいくらいに楽しそうで愉快そうだった。
私は愕然と、「だめだ・・・」と両手に力を入れた。
「そっか・・・なら、もう・・・」
あのひとが拾うのもすぐか。それかもう拾ったのかもしれない。と私はどうしてか知っていることを頼りに考えた。
焦りや憎しみのようなものが喉元に上ってきそうだったのを、わたしはぐっとこらえた。
じゃぁもう、「私が」竜崎を守るしかない。
「食い下がらないんだな?ケケッ。・・・おれもお前がなんなんだか大方予想がつくぜ。だからまぁ、お前が俺のことを見えてても、知ってても不思議じゃない・・・かもなぁケケケ・・・」
その言葉に、私は疑問を覚えた。私が「なんなんだか」予想がつく?
それは、私だって分からないことだ。この死神は、私がなんであるのか知っている?
「まって、今、私がなんなのか知ってるって言った?」
強めの語気で聞き返す。リュークはなにかに気付いたような、閃いたような楽しそうな表情を浮かべる。
「おっと。知らないのか?・・・ならおれも言わないでおくぜ”女”・・・ケケケ・・・」
「・・・」
教えてくれそうにもない。そして、再三繰り返しても教えてくれやしないだろうことが分かった。
沈黙を続けていると、ふとリュークが遠い空のほうを振り返った。
「・・・誰か拾ったみたいだな。」
そう言いながら、リュークの長くて細い背中から、黒い羽が二つバサッと現れた。
おそらく、ノートの拾い主・・・夜神月・・・のもとにいくのだろう。
「ちょっとまって!」
私はいまにも飛び立ちそうなそれに向かっていった。いちおうリュークは振り返ってくれた。
「私は、夕陽って言うの。・・・今度会えたらすきなだけリンゴあげる!だから、私のこと、しばらく誰にも黙ってて。」
言葉を聞いて、リュークはしばし考え事をするかのように、ビルのフェンスの上で身体をよじらせた。
そして先ほどからしているようにケケッとちいさく笑った。
「ほう・・・それが今のお前の名前か。人間界のリンゴがどんな味なのかは興味あるな。・・・それくらいはしてやってもいいか。」
「どうもありがとう。」
「クククク・・・」
笑い声を残し、大きな黒い影が空に飛翔した。私はそれを見届けると、急いでビルの屋上を後にした。
死神のリューク、人を殺すデスノート、そしてそれを拾う_今拾った_夜神月。
竜崎の時と同じように、それが確かであるという実感のもとで「知っている」これらのことがまた増えた。
新たに頭に浮かんだものはどれも恐ろしい未来しか映し出さなかった。そしてそれらがいずれ、そう遠くない時期に竜崎と関わることになっていることも分かっていた。そしてこのままいくとおそらく彼は・・・
_「みなさん、しにがっ」
_「竜崎!」
そのさきのこともひねり出せばいくらでも鮮明に「知っている」という実感があった。しかし、私はそれを考えないようにした。どうしても見ることができなかった。切れ端のように音声だけが頭の中に響いた。
そうだ、見たくないのなら、聞きたくないのなら、私がこれを変えればいい。
知っているすべてを使って、さっきのリュークとの会話のように、少しずつ「知っている彼ら」に関わっていけたら・・・
竜崎を、Lの運命を変えられるかもしれない。
そこまで考えたところで、私ははっとする。
_「Lを助ける」って、こういうこと・・・?!
それは、私にしかできないことだった。
彼の近くにいて、なおかつ彼と関わることになる数人の人物のことを把握している私にしかできないことだった。
どうしてもっとはやく気付かなかったのだろう。
そのためには「私」が知っていること、分かっていること、それらを整理する必要がある。
_帰ったら・・・ちゃんと考えなきゃ。
「・・・でも、私にできるのかな・・・」
思わず口に出してから、頭をわざと振ってその考えをかき消した。
そして、気がついた一つの事実。
これはきっと、大きな武器になる。
「だって、死神、私の名前見えなかったんでしょ?」
私は車の窓から死神の飛んで行った方角に小さく笑って挑発してみせた。
そしてまだ会わない「あのひと」にも・・。
______2003.11.28
______夜神月、デスノートを拾う