第五章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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◆Guardian 第五章
__ヨツバ
10月7日、警察が捜査本部から外れたことで、竜崎のネットワークから新たなメンバーが加わる事となった。詐欺師のアイバー、泥棒のウェディ。
私は竜崎と事前に交渉を済ませていて、アイバーとともにヨツバ潜入にあたることになっていた。おそらく死神の名残か、ある日突然分かるようになった各国の言語、それを披露したうえでひたすら頭を下げた。大分渋られたけれど、アイバーとウェディがやってくることをあらかじめ「視えていた」として頼み込んだら、「あくまで同伴し、前に出ない」条件でどうにか了承してくれたのだった。
「お前が夕陽か、Lから聞いてるよ」
「はい師匠、お手柔らかにお願いします!」
おどけて言うと、アイバーは私に好感を持ってくれたようだった。
「……あぁ嘘がうまそうだ。見込み在りだな。」
「アイバー、彼女は詐欺師には向いてません。」
「はいはい。」
挨拶もそこそこに、これからどう動いていくか、と作戦を練るべきタイミングで、翌日10月8日、松田さんがやらかした。(ヨツバグループに忍び込んだ。)
竜崎にとっては晴天の霹靂。
「……松田の馬鹿……。」
分かっていたけれどこれはどうしても必要な事だった。
松田さんの侵入なくしてはミサのCM出演の話はない。そこからどうにかレムと話をして、火口確保へと繋げなければならない。
松田さん救出作戦は竜崎と月君によっててきぱきと組み立てられた。捜査本部のビルのうち、ミサの住むフロアを「弥海砂のマンション」としてアイドルたちを招き、救急車まで手配し、泥酔による松井マネージャーの死を偽装することとなった。
「竜崎、私はどんな役を?」
あれよあれよと進む準備の中で、私は一応、自分の配役を聞いた。竜崎でえ救急隊員だ。人手は足りないはずだった。
「夕陽はアイバーと顔を出すかもしれませんので、マスクをして帽子をかぶって救急車の後ろに待機してくれれば結構です。」
「さすがにタレントには混ぜないんだな。」
手錠につながった月君が、面白がるように竜崎を見た。
「………夜神君だってミサさんが露出度高い服着ていたら嫌でしょう」
「スペシャル接待という建前、今回は仕方ない。」
ここ最近、月君がミサを心配することが増えた気がした私は、その言葉で思わず茶々を入れたくなってしまった。
「なんだかんだ心配なんだね!」
「………当たり前だろ。」
月君は夜神さんがするように咳ばらいをして窓の外に視線を投げた。竜崎はにやりと口の端を釣り上げていた。
__……これは、それっぽいかも?
__照れてますね。
なんとなく進展の見られる月君の態度に、私と竜崎は目を見合わせた。
翌日、10月9日
作戦は見事に成功し、新聞にはささやかに『松井太郎転落死』と小さな記事が掲載された。
「……ぷっ、あはは!マッツー!あははは……」
「ひどいよミサミサ……」
何故かその記事はミサのツボにはまってしまい、数日間、ミサは松田さんの顔を見るたびに笑い転げるようになってしまった。
10月12日
エラルド=コイル宛にL捜索の依頼が入り、私とアイバーはたびたび打ち合わせを重ねることになった。特に私の役目はない。ただ、いつヨツバと顔を合わせても良いよう、情報を共有するのが日課となった。
また同時期に、竜崎と、夜神さんたちとは捜査方針が一旦、分かれることになる。ヨツバの7名をすぐにでも逮捕し殺人を止めようという夜神さん側、ミサと協力し、一人のキラをあぶりだそうというのが竜崎の方針だった。
手錠に引っ張られた月君と竜崎が、ミサの部屋に押しかけて来たのが10月15日。
私はちょうど、そんな展開になることを予想してミサの部屋に遊びに来ていた。
部屋に入るなり、竜崎は私の姿に目を止め、きょとんと指を咥えた。
「……夕陽、なんか雰囲気違いますね」
「えへへ、これミサの服だよー。かわいいでしょ?夕陽ちゃんに似合うでしょ?」
赤と黒のボーダーに黒いスカート。十字架をあしらったアクセサリーをいくつか身に着けていて、いつもの青いワンピースとはまるで正反対の格好だった。竜崎は指を咥えたままいたずらっぽく笑った。
「……ええ、とても。」
「ところで、」と言いながら、途端にスイッチが入ったように竜崎が急な動きでミサに詰め寄った。
「ミサさん、あなた月くんを愛していますか?」
「あ、はい。でも……ミサはライトを支えてあげたいって思ってる。」
唐突な質問にも、ミサは臆せず答えた。後半は、以前「どうしたらライトに好きになってもらえるかな?」と一緒に話した時の話題だった。
「しかしキラも崇拝している。月君とキラだったらどっちを取りますか?」
続け様に、竜崎はさらに距離を詰める。ミサは一度口を開くが、なぜか私を一瞥し、それから大きく息を吸い込んだ。
「……あーもう!その話はもう夕陽ちゃんとして、とっくに決めてるの!」
「………。」
__そういえば、そうだった……。
竜崎はぽかんとして私を振り返る。私はなんとなく両手をあげてあはは、と笑ってみた。ミサを見ると、自信満々で両手を腰に当て、仁王立ちだった。
「ライトはキラよりもずっと優しくて正義!捕まえるとか捕まえないより、断然ライトの方が好きなんです!そんなライトはいつかキラに狙われちゃうかもしれないから、ミサが守るの!」
「ミサ……」
__なんか、この前より議論、発展してません?……ミサも守護者?
なんとなく自分の決意と同じ終着点にミサの決意が寄っているような気がしながらも、竜崎を見ると、彼としてはそれで十分な返答の様だった。というよりも、「協力を取り付けられるかどうか」という交渉だったのだから、ミサの「守る」宣言は予想以上といったところか。
竜崎は、ミサのなかでの自分の認識が「竜崎」であり「L」ではないことを確認すると、早速作戦を説明しだした。
「アイバーに連絡し、「Lを捜していたら弥海砂がLを知っているかもしれないという線が出た」とエラルド=コイルからあの七人に報告させます。もう松田さんのドジの時、CM等で使ってくれという話は一度してある…必ず食いついてきます。」
その流れでミサをCM起用のための面接に送り込み、「キラを崇拝している」「キラに会うためなら何でもする」等と仄めかす、という流れだった。
「ミサ。これは駄目だ」
一連の説明を聞き終えて、月君が険しい表情をする。「なんで?」と不思議そうに聞き返すミサに、一寸の迷いもなく告げた。
「ミサが危険な目に遭うからに決まってるだろ」
「………。」
……確か、ここは物語ではミサは堂々と喜んで、「ライトの為なら何でもないよ」とかいう場面だったはずだけれど、ミサも黙り込んでしまってどうしたのだろう。
ミサにつられて自分まで言葉を失っていた月君は、数秒経ってから竜崎に向き直った。
「………っ、大体、キラは口封じにミサを殺すかもしれない。それなのに協力させるのは……。」
「いえ。月君、我々が勝てばミサさんは死にません。」
「そうだよ!今のキラを逮捕、さらに竜崎が推理したようにどこか別の場所にあるはずの殺しの道具を確保しちゃえば、もう誰も死なないで済むんだよ。」
私は皆に向かって言った。もう手錠がある以上、とか、ミサが助かる、とかの複雑な話は必要ない。皆助かる、皆死なない。これは簡単な話なのだ。
「ね、ミサ。だってミサは、月君を守るために前に出ていくんでしょ?」
「……そうですね、ミサさんの月君のへの愛は世界一です。正直驚きました。」
あとはミサの同意、と思って確認のように声を掛けると、後ろから竜崎が加勢した。それは正直な気持ちを述べているのか、それともミサの気持ちを盛り上げようと言っているのか。いずれにせよ、私たちの言葉どちらにも感銘を受けたようにミサはうるうると瞳を揺らした。
「あーもー大好きっ!ライトは愛してるけれど、夕陽ちゃん、竜崎さんも本当にミサのこと分かってる!」
「……っ!」
そういえば、ミサが安易に飛び込んでくるタイプだという事を忘れていた。
私達の言葉を聞いたミサは、感銘をうけるだけでなく、両手を広げて私と竜崎を二人まとめて抱きしめた。その場で済めばいいものの、勢いがつきすぎて三人でソファーに倒れこんだ。
もちろん手錠につながった月君も後ろから引かれてバランスを崩した。
「みんな友達!仲よくしよう!」
倒れこんだ四人の中で、いち早く起き上がったミサが気合を入れる。
「……ミサ、気を付けろ。ここで怪我でもしたら…」
「えへ、またライトに心配かけちゃった。ありがとう。」
肩を抑えながら立ち上がった月君にミサが笑いかけると、月君はなんとも顔をちょっと赤くして目を逸らした。……その仕草みたことある!と私は思ったけれど、竜崎を下敷きにしていたのは慌てて退く方が先決だった。
「……また友達が増えました。」
ぼんやりと虚空を見つめる竜崎だった。
私はそれを見て、「この友情が本物で、ずっと続きますように」と願う。
__ミサが竜崎にキスしなくてほっとしたのは内緒だ。
「そしてミサは友達を絶対裏切りません、任せておいて。四人で力を合わせてキラ逮捕!」
主にミサが仕切るような雰囲気の中で、月君も夜神さんの側からこちらに加わるざるを得なくなった。
そうして私たちは、ミサのCM面接の準備を進めることになったのだった。
「……さぁ、そろそろ私も動き出さなきゃ。」
月君も、ミサも。
皆、少しずつ違う運命を歩き出したことを確かに感じつつ、
それでもあっという間に、時間は過ぎていった。
__でも竜崎。
竜崎とはもう少し話したかったな。
手錠のない状態で、二人だけで、
あの観覧車にまた乗れたら、何を言おう。
ただ、一緒にどこかを歩くだけでもいいな。
タイムアップはまだ先だけれど、
きっとこの先はそんな機会ないから。
竜崎、貴方は今でも自分のことを一人だと思っているのですか?
私は少しでも、貴方の力になれたのかな?
__どうやら、幸せを見届けることまでは、できなさそうです。
「……結局、確かめられなかったな。」
ならばやはり、私にできる事は一つしかない。
力になれなくとも、なったと思ってくれなくとも、
最後には隣に居られなくとも、忘れられたっていい。
「ごめんなさい。イギリス、一緒に行けないかもしれない、L。でも……」
その炎が消えることのないように、
未来を知って、物語を変える。
「必ず私が守るよ。」