第五章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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Guardian -第五章-
◆待ち合わせ
8月2日。
昨日、ミサや月君、竜崎と恋愛話で盛り上がった(私以外)ところで、竜崎はミサの青山での行動についていくつか確認をすると、急に何かに気づいた様子だった。
__「夕陽のおかげです。……一人で考えたいので失礼します。」
手錠で繋がった月君を引き連れて思考モードに入ってしまった竜崎は、しかし、その推理を披露する、という事はしなかった。
__“すべて恋だった”
そのキーワードを足掛かりに相当深いところまで考えていたのだろうか、しばらくは口数もいつにも増して少なかった。
そんな無口モードの竜崎がさらりと「新しい拠点に移動します」なんて言うので、捜査本部のメンバーは途端に忙しい一日を過ごすことになった。当の本人は椅子の上から動かなくなってしまったので、私とワタリさんが連絡を取り合う形で様々な引っ越しをすすめていったのだった。周到に用意がされていたとはいえ、なにかと作業量がおおく、寝不足だ。
そんな経緯で、私は今、新たな捜査拠点のヘリポートにいる。
地上23階。地下2階。厳密な数字なんか意味ないほどに、とにかく高い。
捜査員60名まで対応可能なプライベートルーム、最新鋭のシステムと厳密なセキュリティを誇る、竜崎に「私はこの事件、どんな事をしても解決したいということです」と言わしめた新しい活動拠点。私はスイーツの準備がやりやすいように、捜査本部と同じフロアの個室を希望した。竜崎と月君はもちろん一緒に生活することになりそうだし、ミサは豪華にも1フロアまるまる貰ったようだ。
そんな高いビルの屋上、ほとんど空のような高さから、一人で東京の街を見下ろした。
「ここまで来ちゃったか……。」
ここは、何度も夢に見た、あの場所だ。
一面が無機質で灰色のコンクリート、振り返ると堂々とした白線が引かれていて、視界は金網のフェンスで仕切られる。確かにここは、あの大雨の未来、鐘の音の未来、その場所だ。
「でも、ま、こんなに晴れてるから、大丈夫でしょ!」
“はーあ?天気がいいと何が大丈夫なんだ?”
もうすっかり後ろをついて飛ぶようになったリュークが体をひねった。晴れた真っ青な空。日焼けしてしまいそうな太陽、あの悲しい風景とは全然違う。考えたけれど、結局言葉にできなかった私はリュークにへらっと笑った。
「………雨じゃなければ大丈夫ってことだよ!それに、約束もあるし、晴れの方がいい。」
“………お、おうそうか……ん?約束?”
「うん、ちょっと待ち合わせなのです。」
私はおどけると、フェンス沿いに移動しながら街をぐるりと確認した。ひょっとして近くに教会があったりしないかな、なんて思いながら。でも本当は、別の理由があった。
「………あ、来た!」
青い空を背景に、白い雲のような白い影がこちらに近づいてきた。左右に長く翼を広げたシルエット、その姿が見えてからはあっという間で、影の主は私たちの前にすとっと軽やかに着地した。
「いらっしゃい。レム。」
黙ってこちらを見下ろす死神を私は仰ぎ見た。やっぱり目線はずっとずっと高いところにある。細められた黄色い瞳は、微動だにせずこちらを見つめ返した。
“………なんだよ夕陽、約束ってまさかこいつか?レム呼んだのか?”
「うん、そうだよ!ね、レム?」
ぽかんとするリュークを一瞥してから、レムは頷いた。
“ああ……ちょっと会って……暇なら来いと……呼ばれた………。”
“軽っ!”
絶句するリュークは大きく口を開いて、顎が外れそうだった。大きい口でやると奥の方に闇が視えそうでちょっぴり怖い。私はそれにぎょっとしてからレムに向き直った。レムは、ただ静かにしているだけで、決して敵意を向けてきてはいないらしい。道端で会った時もそうだった。レムは案外ぼけっとしているというか、そういうところがあるというか。
「レム、最近どう?」
“だから軽っ!”
“……………人間って生き物は………実に醜い……”
茶々を入れるリュークは置いておいて、レムは私の質問に目を伏せると、時間をたっぷりかけてそんなことを言った。レムはもうヨツバグループの火口……新しいキラのもとにいるはずだ。欲望に忠実に、同じ人間を殺していく人間。
寿命のため、正義の為、出世や欲望の為、愛の為、それらのノートを使う理由。
ノートを使う__いや、はっきり言えば、人を殺す理由。
レムの言葉は、火口とヨツバグループの人間だけに投げかけた感想ではないかもしれない。
人間同士でさえ、互いに、”どうしようもない”と思っている人間という生き物は、キラのように世界を変えようとする者が現れてしまうほどに、本当にどうしようもないのかもしれない。
死神がそう思うのも、何も不思議ではなくて……。
「……そう思うかもしれないね。」
私は「でも、」とレムに笑いかけた。反応が予想外だったのか、レムはぽかんと口を開けた。私は空気を換えるように、くるんと背中を向け、一歩二歩と下の階へと続くドアへ歩きだした。そして背後に向かって、大きく声をあげた。
「でもレム、ミサは大好きでしょ?………だからミサの様子、見に行こう!」
人間が醜いと思う、その気持ちは分かるような気がするけれど、私はなにか言えるわけでもない。何より、今日レムが大人しく来てくれたのは、ミサが気がかりだったからだろう。私についてくればミサに会える。ちゃんと無事かどうか、うまくやっているかを見ることができるから。
“……ああ………”
レムが答えたのを背後に聞き、私は階段を下りていく。レムの好きな食べ物はなんだろう。帰りになにかお土産でも用意しよう、そんなことを考え、月とミサ(と竜崎)がデートをしているミサの自室へ向かった。
“……おい、なにぼーっとしてんだレム、夕陽見失うぞ?”
“………いや……なんでもない……”
上機嫌で先を行くあまり、私は後ろを二人がついてきていない事には気づいていなかった。遅れてついてきた二人を後ろ目に、歩を速める。早くケーキを持っていかなければ、私もWデートなんて名目で招かれていたので遅刻だ。
レムが二人の姿を見たら__キラを捕まえると宣言する二人をみたらどう思うだろう。
「楽しみだな。」
“ケケケッ!なんか分からんが面白!”
“…………。”
リュークの言う通り、ちょっぴり面白い、と思った。どうしてこうなった、と一週間前くらいの自分に尋ねられそうな状況__私は白と黒と二匹の死神を引き連れて、あの三人のもとへ向かっているのだった。