第四章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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弥海砂を第二のキラと断定、拘束、尋問予定。
夜神月の腕時計に着目。
現時点では捜査は強行せず、内密に夜神総一郎に証人役を打診。
夜神月所持のノートには偽のルールを書き込んだ
__もう十分、出揃った。少なくとも、“物”は。
Guardian -第四章-
◆昼夜
腕時計の件については、正直、危ないところだった。ナオミさんが鋭い観察眼を持っていて、「腕時計」という単語を発した時は、冗談じゃなく心臓が止まるかと思った。
「まだそれは触らないで」なんて、常に犯罪者裁きが継続している現状でのうのうと言えるわけがない。未来が多少分かる建前であっても、危険すぎる。万が一、腕時計のトリックが使えないと月君本人が気づき、この先数か月の計画をまるっきり変えてしまったりしたら、と考えると……。いや、その可能性はこの先も、まだ付きまとうのだけれど、いずれにせよ血の気が引くほど恐ろしい。
とにかく、仕掛けられるものは仕掛け終えた。あとは、私の仕事だ。ここから先は、竜崎にも、月君にも、海砂にも、嘘をつかなければならない。
実行はしばらく先になるはずだけれど、それまでに、もう一人だけ、協力を仰がなければいけない。
たった一人だけ__いや、一匹だけ__偽りなく協力してもらうのは___レム。
死神のレムでなければならない。
__そういえば、月君はいまどういう考えなんだろう?
私から提案した、第二のキラへの司法取引の偽ルールは生かされなかったけれど、それを受けて「残念だったな竜崎、こちらはもう死神の目を手に入れたぞふはははは」とか考えているんだろうか。
……そんな訳ないか。たしか物語では月君は海砂の登場に大分、辟易していたはずだ。
あれ以来二人きりでは話す機会がなかった月君から「第二のキラと合流できたから一度話がしたい」なんて誘いがあった。だけれど、もしかして月君は私を利用して、竜崎をおびき寄せたかったのかな、とも勘ぐってしまう。
まぁ、私も私で、月君に「おっけー!」なんて言ったものの、今日ここにきているのは海砂の拘束を前提とした竜崎の作戦の一部だ。
思惑がそれぞれ交錯している。
「竜崎、それなに読んでるの?」
緑が揺れる並木沿いのベンチで、私たちは月君が通るのを待っていた。竜崎は、物語でそうしていたように、上からつまむように器用に小さな文庫本を呼んでいた。横字、英語の本だった。
「”The poisoned chocolates case”です。」
「毒入りチョコレート事件…推理小説?」
毒入りチョコレート。かわいいようで不穏なような。竜崎は題材も甘いものが好きなのかな。
「ええ推理小説です。夕陽、興味ありますか? 」
「うん、ある!」
勢いよく頷くと、竜崎は距離をつめ、指先で本を頭の高さまで掲げながら、私に登場人物紹介らしきページを指し示した。
「一つの事件に対して複数の探偵がそれぞれの推理をしていくストーリーなんです。とくに面白いのはこの人物の推理ですね。」
読んでないから分からないけれど、興味が沸いてページを覗きこんだ。竜崎がおもしろいというような推理。それってどんな推理なのだろう。
「この人物は、探偵の一人ですが、「状況的に自分こそが犯人に違いない。記憶をなくしているだけだ。」と主張するんです。」
「………自分が犯人、記憶喪失。」
思わず、一時停止のように口をぽかんとさせてしまった。
「どうしました?まさか夕陽、自分の記憶喪失に心当たりが…」
「いやいや!実はなんかの事件の犯人でした、とかはないです。」
「そうですか。私ならきっと夕陽の出すチョコに毒が入ってても気づかず食べると思いますよ。」
それは竜崎なりの冗談だった。ふむ、と私も3秒ほど考える。
「竜崎は私に甘いってことですね!」
チョコレートだけに。
「……………………あぁ、そういう事ですか。よく分かりました。面白い。」
……慣れないジョークを言うのはやめようと思った。
とにかく。
驚いたのは、きっとただの偶然なのだけれど、その推理がこの先の月君の言動と全く一緒だったことだった。読んでいるのがこのタイミングで竜崎だから、些細な偶然すらも鋭さに感じてしまう。
その小説に、「どうかこの先の竜崎のヒントになってください」と私は内心願った。
「こういう小説、竜崎は参考にしたりする?」
「それなりにします。」
「へー!推理の方法とか?」
「いえ、ラーク……ユーモアです。」
「……そっち?」
普通に話が弾みだしたところだった。ベンチに両手をつき、竜崎の側へ顔を寄せる私に、何かを言おうとしたように開いた口を、竜崎はそのままゆらりと歪めた。
「……なんだ。外に出るのも怖いんじゃなかったのか。」
それはちょうど私と月君が約束した時間だった。なぜかベンチの背後に月君が立っていた。
「息抜きにたまには講義に出ることにしたんです。月君がキラでない限りは、私がLだと知っている人は他にいませんから危険はありません。」
「…講義に?」
月君が気難しそうに眉間にしわを寄せる。
「二人で一つの本を読んで、公園のつもりでデートしてるようにしか見えないけど?」
「月君だって、よくやってるじゃないですか。今だって、ミス東大の…」
「…っよくやってないし、一緒に講義を受けるときもそれなりに離れて座るよ。」
「……冗談です。恥ずかしがらないでください。」
「別に恥ずかしがってるわけじゃない!」
「なら、むきになる必要もありません。」
「……………で、夕陽さんはどうしたの?流河のお迎え?」
月君は呆れ顔のまま、思い出したかのように私に話を振った。
「た、たまたまだよー。」
そこはかとなく適当な返答になってしまった。月君は大袈裟にため息をすると、両手を広げた。
「……ほらな。」
「本当だよ!」
一見、それは「そんなこと言っても実際はデートなんだろ?」と私がいじるられる場面のようだ。
だけれど水面下はそうでもなくて、本来、会う約束をしていたのは私と月君との二人だけだったので、竜崎がいることは月君にとって予想外だったのだ。
__私を利用して海砂に合わせるために連れてこさせた、とかでなければの話だけれど。
月君は無言で腕を組むと、竜崎を見下ろした。どうせ何かあるんだろう?と言いそうな表情だった。それを受けて、竜崎は開きっぱなしだった本をぱたんと閉じた。
「……実は、月君。報告があってここに来ました。先程、夜神さんに「近日中に私が死んだら月君がキラです」と伝えてきました。念のため、他のLと、間木さんを通してFBIにも伝えてあります。私も死にたくないので、早くお伝えしようかと。」
竜崎はそうそうたる単語のどれをも強調することなく、遠くを見ながら平坦に述べた。
月君をそろりと見ると、ぐっと両手に力を入れていた。……あぁやっぱり竜崎は私をつかって呼び出されたんだな、と察した。
「……っまたそうやって」言いかけた月君の背後から
「ライトーー!」
ゆったりとした時間が流れるキャンパス内で、一人だけ勢いよく走ってくる姿に、モデルの弥海砂と気づかないまでも、数人が振り返っていた。
身体ごと振り返る月君の表情は見えなかった。竜崎は、ゆっくりと視線だけで彼女の姿を確認してから、ちょっとした高所から飛び降りるように勢いよく立ち上がった。ポケットに両手を入れたまま、月君の後に続いた。
そこにいけば海砂がいて、死神のレムもいる。
あの日のレムの視線、それから、死神の目で見られた場合のことを考えると……
数秒、勇気を出す時間が必要だった。
でも、行かない選択肢はない。
「………よし!」
意を決して、私は道すがら購入したエイティーンの入った袋をもって元気に立ち上がった。
「近くで撮影があったから来ちゃった!」
「……駄目じゃないかミサ。目立つだろ。」
小走りで竜崎の隣に立つ。すると、月君の視線を折って海砂が軽やかに私たちの方を振り返った。金色の髪の毛がさらっと宙を舞った。
「この人たち、ライトの友達?」
海砂は純粋な疑問であるかのように、頭の上に「?」を浮かべる。そして首を傾げるかわりに、両手で鞄をもって、重心を片側に預けるようにした。
その様子はモデルがポーズを決めているようだった。派手な格好であるのにもかかわらず、海砂自身は目が大きく童顔で、かわいい、と思わず場違いな感想を抱いてしまった。
「あぁ。…こちら、友達の流河早樹。それと夕陽さん。」
海砂の後ろから月君が紹介してくれた。
「はじめまして。流河早樹です。」
「こ、こんにちは。夕陽です。」
「……りゅう、夕陽……?」
海砂は、戸惑う子供のようにきょとんとした。竜崎の頭上に、聞いたのとは違う名前__アルファベットでの名前が視えているのだろう。私の名前も、普通とは違う視え方をしているようだ。
「あぁ、あの流河早樹と同姓同名なんだ。変わってるだろ?」
首を傾げ、今にもなにか危うい発言をしてしまいそうな様子に、月が強引に引き留めた。
「………。」
竜崎が無言で、にやりと謎めいた笑みを浮かべた。そして丸まった背中をさらに低くして、屈むように海砂に接近する。
月君は、それを見て、「怪しまれたか」と構えている様子だ。
物語を読んだ私は、その焦りを知っている。そしてそれに続く竜崎の発言も………。