第四章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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「だ、第二捜査本部?」
これは私だった。物語の中では聞いたことがない単語だった。
「ええ。こうすることで日本警察とはまた別の視点で物事を見られます。公に動くことはほとんどできませんが、Lのリソースや夕陽の能力、また、南空さんの機動力があります。」
「ま、まって。非公式に独自の視点と言うのはLらしいけれども……夕陽の能力ってなんのこと?」
ナオミさんの言葉に、二人から視線を浴びせられる。
これには私も驚いた。まさか、このような形で自分の能力を生かす建前で動くことになるとは。とはいえ、私が知っているのは物語全体であり、それは誰にも言えない秘密だ。竜崎にさえ、伝えているのは「たまにぼんやり未来が視えるかも?」といった曖昧なものだ。ナオミさんにも、そう伝えるほかないか。
「その……たまに、未来が視えたり、その人のことを知っていたりすることがあるんです。実は、ナオミさんのことも知っていました。なので声を掛けさせていただいたんです。すみません。」
毎回、自分のことを話す際は気を遣う。今回も、ちょっぴりだけナオミさんとの初対面時のことを明かす形でそれらしく話せた。
「……そうだったの。」
大きな目でナオミさんが驚きを現した。
「だ、大丈夫です…!ナオミさんのことは、ただLと昔捜査を一緒にしたことがある人、という事しか知りません。あとその事件名位なもので…。」
余計な想像をさせては申し訳ないと思い、私は早口でまくし立てた。言い終わると、やはりナオミさんには安堵の色が見て取れた。
「そういうことです。まぁそれがなくとも……夕陽にはいてもらわないと困ります。大事なサポート役です。甘いものと夕陽、これはLの生命線です。」
「………。」
「まぁ、そうでしょうね。」
余計な一言だ、と顔が熱くなるのを自覚して俯く私と、とっくに知っていましたと言わんばかりにあしらうナオミさんだった。ワタリさんも先ほどから微笑みを湛えていて、もはや秘密とか付き合ってはいない、みたいな話がただの建前のような空間だった。とにかく、恥ずかしいです。
「さて、そんなに時間もありません簡潔に行きましょう。」
改めて仕切りなおすように、竜崎が両手を膝にあててニヤリと笑みを浮かべた。
「私の考えでは第二のキラは、弥海砂、売れ始めのモデルです。おおっぴらに交際はしていませんが、第二のキラのビデオが送られてきた関西からの上京、両親の事情、そしてキラ崇拝、明言はありませんでしたが夜神月の家族もなにかしら隠している様子、とのことです。家宅捜索と検証を現在進行形で進めていますので、ビデオ側にのこされた証拠と照合が完了し次第、その場で拘束できるようにします。」
一気に流れ込む情報量について行くのに精いっぱいだった。落ち着いて聞けば、それは一応は物語と同じ結論であるのが唯一の救いだった。
「夕陽には、しばらく私と行動を共にし、一緒にキャンパスに出向いてほしい。証拠の照合が完了するまで、いつ私たちの前に現れるか分かりませんから。第二のキラであれば、私の名前を視ようとするでしょう。いつも通り、一緒に行動しつつ牽制していく必要があります。」
「わ、わかった。」
返事をしつつ。日付次第だ、と考えた。必要以上に竜崎が顔を見られるのはそれでも好ましくない。牽制はできるが、単純に海砂の死神の目のバランスはほんとにスレスレなのだ。
「そして南空さん。電話で気になることがある、とおっしゃいましたよね。」
私に手早く指示をすると、竜崎は今度はナオミさんに呼び掛けた。今度は、指示ではないらしい。ナオミさんが何を言うのかまったく知らないのか、竜崎の表情は月君を前にした時のように真剣だった。
ナオミさんは、まさかここで名指されると思わなかったのか、食べようとしていたクッキーを急いでソーサーに置くと、発言をためらうそぶりをみせた。
「……ええ、言いました。でもこれは、夜神月のことです。そして、裏付けも根拠もない、ただの直感なのだけれど。」
「構いません。どんな直感も推理も無駄にはなりません。」
言葉を選ぶように、ナオミさんは大きく息を吐いた。そしてもう一呼吸おいて、「以前、」と話し出した。
「初めて夜神月を前にした際、ブラフを仕掛けました。……どれほどの人物か確かめる目的で、ボロがでたらラッキーくらいに考えていて、そしてその目論見は破れたんですが……」
そこでまた一度、ナオミさんは言葉を区切る。言い淀んでしまうほどに、それは不確かな情報なのだろうか。私も、彼女が何を言い出すのか全く見当がつかない
「続けて。」
促す竜崎に、ナオミさんはコクリと頷いた。
「彼はやけに時間を気にしていました。」
「時間?」
「気づきませんでしたか?……やけに手元の時間を気にしていたなぁ、という妙な印象が残ったんです。とくに、私が彼を追い詰めようと語気を強くすると、居心地悪そうに、早く終わらないかなーとでも言うように。」
__どういうことだろう。
本当に、曖昧な直感以前に、事件とは直接関係なさそうな事柄に聞こえなくもない。無意識の癖で、異常に時計ばかり見てしまうような癖をもつ人はそれなりいるように思えるが…ましてや月君であれば、退屈だなぁ、なんて考えてそうだ。
「なるほど、それは面白い。」
と、竜崎はまた謎めいた名探偵のような笑みを俯きつつ浮かべたのだった。
「南空さん、夕陽も、あの部屋の家具の配置を覚えていますか?」
「いえ、配置はさすがに…」
戸惑うナオミさんに、私も同意と申し訳なさの意味をこめて頭を横に振った。
「南空さんは手元の時間、とおっしゃいましたが」
言葉の途中で、竜崎はスプーンに持ったジャムをそのままぱくっと口に入れた。横目でナオミさんをみると、一瞬だけ顔をしかめていた。
「時計ならば、私の真後ろに、大きな壁時計がありました。あの日、私と月君は正対して座っていました。時刻を気にするなら、手元を見るのは変です。」
「腕時計をしていたからでは…」
そう、軽い口調で考えながら口にしたナオミさんは、はた、と沈黙した。
私も、その発言ではっとする。
___腕時計!
___ここでそのトリックに気づいてしまうのか、と。
「彼が見ていたのは、腕時計。時刻ではなく、腕時計そのものだった“かもしれない”……。」
「可能性はあります。」
「ただ単に、そういう癖かもしれない。」
「その可能性もあります。」
「でももし、あの腕時計がなにか重要な意味を持つもので、自分が追い詰められた際に“無意識に視線を送ってしまっていた”のだとしたら……。」
「何かが隠されているかもしれませんね。」
竜崎はほぼ確信しているように見えた。確かに、頻繁に時刻をチラ見してしまうような、強迫的な癖をもつ人間は多い。しかし、モノとして疑う以上、それ自体を調べなければ否定もできないのだ。
「調べる価値はあります。ただ、方法と時期は慎重に行きましょう。」
私も、同じことを考えていた。竜崎とはきっとその中身こそ違うが、時期…まだ、いま見つかっては駄目だ。
「もしも腕時計が彼の切り札であった場合、怪しんでいることを悟られてはいけません。何か分かっても、最後まで隠し通し、こちらの切り札にしてしまいましょう。それに、私達以外にも証人が必要になる。……今はまだ、第二のキラに集中しましょう。」
竜崎の判断を聞きながら、私の心臓は張り裂けるほどに高鳴っていた。よかった。竜崎も慎重にことを運んでくれるつもりらしい。
腕時計については、月君が監禁を申し出たタイミングで私の口から提案するプランでいたのだが…流石ナオミさんだ。
危うく、計画が崩れてしまいそうだった。でも単純に、かっこいいと思ってしまった。
「ナオミさん、かっこいいです。」
言ってから、あ、ナオミさんはもともとFBIの人だったんだ、と改めて思う。
竜崎はひと段落付いたように紅茶をかき混ぜると、後ろのワタリを振り返った。
「思い出しました。……昔、どうしても見つけることができなかったイースターエッグがあったんです。」
いまでも忘れていない様に、恨めしそうな竜崎の視線を受けても悪びれることなく、ワタリさんは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……それは、ワタリの帽子の中に隠されていました。」
竜崎はワタリさんを咎める視線を諦め、私にくるりと振り返った。
「イースターエッグは装飾の中に隠されています。ですが夕陽、後半はこのように続きます。____最後の一つはウサギが持って行ってしまった。と。」
すると、その言葉を聞いて微笑んでいたワタリさんが携帯電話を取り上げ、英語でぼそぼそとやり取りをした。電話はすぐに切られた。
「竜崎、結果が来ました。化粧品の粉など、すべて弥のものと合致しました。」
ナオミさんが息をのむようにはっと声を漏らし、こちらを見る。竜崎は私たちにそれぞれゆるりと目くばせし、イチゴをひとつ摘まむ。
「この事件、一気に片が付くかもしれません。夕陽、急ですみませんが明日です。一緒に東応大学にいきましょう。」