第四章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
__イースターエッグは装飾の中に隠されているものです、と名探偵は仄めかした。
Guardian -第四章-
◆イースターエッグ
「イースターエッグ?」
「ええ。物の例えです。イースターエッグを探すならば、ウサギのハリボテや画用紙で作った草むら、新しく置かれた花壇の中を探せという意味です。」
「なるほど!」
勢いよく返事すると、謎めいた笑みを浮かべていた探偵は、ほんとに分かっているんですか、と言いたげにこちらを睨んだ。というか、竜崎だった。
「……」
私だって、流石にニュアンスくらいは分かる。ならば当てて見せよう、と口を開いたところで、インターホンが鳴った。
竜崎の脇のパソコンで時刻を見ると、13時ちょうどだった。約束の時間ぴったりだ。
「………いらっしゃいましたね。」
じっとりとした目のまま、竜崎が指を咥える。そのままいつのもようにぴょんと立ち上がるかと思ったら、目の前のビスケットにゆっくりと手を伸ばしたので、私は来訪者を迎えるために席を立った。
ドアを開けると、気温差と気圧差で風がふわっと髪を揺らした。
立っていたのは黒いライダースジャケットとぴっしりとしたズボンを着こんだ、一見ワイルドな女性__約束の人物__南空ナオミだった。
「ぎりぎりになってしまってごめんなさい。昨晩ほとんど寝ていなくて。」
ヘルメットで乱されたのか、それともシャワーで整える暇もなかったのか。広がった黒髪をかき上げながらナオミさんは客室を見回した。
「……随分と豪華なのね。」
「はは……今日はワタリさんもいるので、格が違うというか。」
ナオミさんの視線の先には大きなテーブルがあった。
その様相は豪華なアフタヌーンティーそのものだった。いっそ、お茶会と名を変えてどこかのバラ園などで、もう数人招いても違和感がないくらい、テーブルの上にはスイーツが並べられていた。
今日は、いつもとは別のホテルで待機しているワタリさんのもとで、ナオミさん含めて話をするという事になっていた。
「お疲れ様です。南空さん。」
「あら、竜崎もいたのね。」
たしかに竜崎はその豪華絢爛なテーブルの横で付属品のようにカラフルなお菓子に埋まっていたけれど、ナオミさんを呼んだ本人であった。
あらいたのね、気づかなかったわ。といのは、クールジョークなのだろうか?
「いえ、存在を忘れてただけですけれど。」
けろっとクールに言い放つナオミさんは、やっぱり竜崎を相手にすると容赦がない。
「南空さん。私はLです。きつく当たるべき相手ではありません。心外です。」
「……そうね。すみません。"竜崎"ときくと防衛本能的につい強く当たってしまって。」
「竜崎ときくと?どういうことですか、ナオミさん?」
「夕陽の知識には入れたくないタイプの人間よ。いちごジャムに手のひらを突っ込んで食事と言ったり、砂糖の中にコーヒーを入れたゲル状のものを人に飲ませたり……。」
軽い気持ちで聞き返したつもりが、苦渋の表情で鮮明に思い出しながら話すナオミさんだった。確かに、どういう人間かは知らないけれど、聞いているだけで胸やけがしてくる話だった。
途中からナオミさんの視線が蔑むように竜崎に向けられていることに気づく。
「ですから南空さん、人違いです。竜崎ちがいです。それは私ではありません。」
竜崎もまた、その場にいない誰かに向けて文句ありげに親指をがりっと噛んだ。
「ひどいです。……私はジャムを食べるときにはスプーンくらい使います。床に這いつくばったりもしません。それに、もっとかっこいい……。」
__………。
竜崎まで何を言い出すのだろう。ここにいない、もう一人の竜崎さんとは、一体どのようなお方なので?
「ですが竜崎、彼もまたキラに殺されました。納得いきません。私は怒りを覚えます。」
「……………納得できない………ええ、もちろん。許せません。当然です。」
竜崎にも思うところがあるのか、いや、余計思うことが多いのか、その返答はナオミさんの言葉を繰り返しただけだった。
___彼は犯罪者だったのか。
こうして竜崎とナオミさんが共通の話題にする犯罪者と言えば……。
いや、記憶の中で名前を知っている程度だ。この場では黙っておこう。
「皆さまお揃いですね。紅茶をお注ぎしましょう」
重い沈黙を破るように、暖かい湯気を上げてワタリさんが現れた。奥で、ナオミさんの到着に合わせてお茶の用意をしてくれていたのだ。
お茶の準備という事なら私がやるべきですと申し出たものの、夕陽さんはナオミさんの出迎えをお願いしますね、と優しく引き受けてくれたのだった。
手慣れた様子で陶器のカップが並べられ、熱湯が注がれる。いつもに増して様式ばった丁寧な準備を前に、私たちは自然と席に着いたのだった。竜崎だけが座りっぱなしのまま小さなチョコレートを一つ口に放り込んだ。
「ではさっきの話です。イースターエッグですが……」
「イースターエッグ?」
そういえばそんな話をしていたんだった、と記憶を遡り合点する私の横で、途中参加のナオミさんは当然のごとく聞き返す。普通に考えてもう一度話す他ないが、竜崎は話の腰を折られたように不満そうに唇を引っ張った。
「あの、すみませんナオミさん。話の続きと言っても、まだ導入しか聞いてないんで……」
「あぁそうでした。夕陽、説明できますか?」
__ニヤリと。これは楽しんでいる。
膝を抱えた竜崎の視線があまりに挑戦的だったので、私もたまにはかっこいいところを見せてみようじゃないか、と思った。
「イースターエッグは装飾のなかに隠されている、とさっき、竜崎は言ったんです。そしてその意味はおそらく……」
派手な場所。目立つ場所。そして、イースターがカレンダーに沿ったイベントであるというのなら。それは普通の探し物ではない。装飾と、隠し事が同時期に発生することに意味が……。
「……人のする隠し事には、ほぼ同時期に始めた何か目新しいこと、カモフラージュの何かがあるはず……いつもはないもの、新しく増えたものがあれば、第一にその中を探すべき、と、そういう意味かと。」
言い終わる頃には尻すぼみになっていた自覚があったが、顔を上げると竜崎が満足げに口角を上げていた。
「はい。よくできました。」
「やったー!」
嬉しくなって両手をあげて喜んでいると、
死角から割り込むように唐突に、目の間にずいっとスプーンが差し出された。そのスプーンは竜崎の腕から伸びていて、一口分、いちごのショートケーキが乗っていた。
……これは、そういう意味だよなぁ、なんて思いつつ、竜崎とナオミさんを見る。竜崎はただにやりと黒い大きな目でスプーンを構えるばかりで、ナオミさんは、さっき竜崎がしていたようなじっとりとした目をしていた。
__さっさと食べちゃいなさい。
そう言われているように感じて、私は遠慮がちにぱくっと一口でそのケーキを頂いた。
「…………。」
意外に大きかった一口をもごもごと食べて無言になってしまう。その一方で、順調だといわんばかりに竜崎は上機嫌だった。めずらしく、甘くないサンドウィッチを手に取りながら、ナオミさんの方に向き直った。
「……という訳なんです。南空さん。つまり、おおよそ第二のキラの目途がつきました。」
「……?」
話が飛んで、ナオミさんは首をきょとんと傾げた。
一方で私は__あ、そっか。その話につながるのか__と紅茶を持ち上げながら聞いた。そういえば、数日前から模木さんが月君の交友関係を調査していた。
「………前提が抜けていました。夜神月が最近、複数の女性と交際を始めました。そして同時期に、明らかに以前とは言動の違う第二のキラのビデオが届いています。夕陽が言ったように、これは明らかにカモフラージュです。第二のキラと夜神月の女性関係、ここにはつながりがあると私は考えます。」
「なるほど……。」
ナオミさんのもまた、最近はワタリさんの方でビデオテープの調査をしているところだった。状況がかみ合い得心がいったのか、ナオミさんは前のめりになって竜崎の話に耳を傾けた。
「実はつい先ほど、模木さんからの調査結果が出そろいまして、それで一気に目星がつきました。」
竜崎は楽しそうに口角を引き上げながら、クリームの付いた指をぺろりと舐めた。
「今日は第二捜査本部のメンバーとして皆さんには集まってもらったわけです。」