第二章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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Guardian -断章-
_______空と未来
夕陽
これは、竜崎にもらった名前だ。
どんな意味があるんだろう。なにを考えて、この名前を選んでくれたんだろう。
冬の風は冷たかったけれど、なんとなく思い立ってホテルの屋上のヘリポートに来てみた。
使用許可があって特別に入れる場所で、実際に上るのは初めてだった。高い場所と風が、懐かしい気がした。
ポケットから、四つにたたまれた小さな紙きれを取り出した。強い風に吹かれないよう、注意深く広げる。
「夕陽」と小さく書かれた、大切な、竜崎にもらった宝物だ。
「……もう三か月くらいは経つのかな。」
フェンスの近くに立つと、見上げなくても視界の半分が青く塗りつぶされた。乾ききった快晴の青だ。
__この世界、なんて言い方は大げさかもしれないけれど。
この世界で目が覚めたとき、私は記憶喪失で、ただ視えていたのはLという人物とその死の未来だけだった。
そのあとはひたすら、「Lを助けたい」という願いに突き動かされてきた。なんど心の中で「なぜか」と呟いたことか。
もしかすると、忘れてしまった過去の自分が願ったのかもしれない。
過去を思い出してしまったら、ここまでの自分が消えてしまうような気がしていた。
竜崎と過ごしたり、不器用ながらも未来を変えようとしていた日々は、なんだかとても心地よくて、なにかの間違いのようだった。
正解を与えられてしまったら、すぐに正されて夢が覚めるような、そんな奇跡のように感じていた。
それくらい、昨日までの私は、空っぽで頼りなくて、覚束なかった。
でも昨日、竜崎と観覧車に乗ったとき。
そこで、「キラにだけLの恋人として振舞ってほしい」という作戦を告げられた。
自分の気持ちに気づいてしまった私は、我慢できずに言ってしまった。
__「貴方のことが好きです。好きだから、守らせてください」と。
竜崎のまえで誓ったとき、私はただの夕陽になった。
Lを助けたいという願いは、もう借り物ではなくなった。
この想いは、竜崎と過ごした”私”にしか抱けないものだと自信を持って言える。
「昔の自分がどんな人だったとしても……」
私は夕陽で
Lのスイーツ係で
Lのことが好きで、
Lの守護者であると誓った存在だ。
だから、もう、過去はどうでもよかった。怖くない、という方が近い気もする。
「……本当に、夢みたいだったな。」
「よかったね。でも残念、ここからは夢タイムだよ。」
感傷に浸っていたはずが、急に明るい声が響いた。
「空!?」
振り返ると、自分とうり二つの少女がフェンスの上に座っていた。一度、二度、と夢の中で意味ありげに話しかけてきた少女、空だった。……つまり、ここがもう夢の中ということだった。
目が合った瞬間、彼女は私の顔でけらけらと笑った。翼でもあるかのように空を背景に笑う姿はリュークみたいだ、と思った。
「あっちみてみて。」
楽しそうに指さす先を見ると、ヘリポートのど真ん中で大の字で横たわる私らしき人物が居た。
「……さ、三人目……?」
目の前の空という少女だけでも不思議なのに、もう一人自分がいるとなるとさすがにシュールだった。
「あれは貴方だよ。寝ちゃったんだね。風邪ひくよ?」
「じ、じゃあ早く起きなきゃ。じゃあね!」
空に用もないし、夢ならベッドで見よう。とりあえず横たわる自分のもとへ行けば目は覚めるかな、と思い足を踏み出した時だった。
「ふーん。知りたいんじゃないの?」
お決まりのように、思わせぶりな台詞を投げつけられた。
「知りたい?何を?」
「自分の正体。」
にたりと笑う空に、私は動きをぴたりと止めた。
その話題は、卑怯だ。
「教えてくれるのなら……知りたい。未来のために。Lのために。」
自分を知るためにではなく、Lの守護者として。
どうして私はLやキラ事件のことを知っているのか、どうして死神が見えるのか、知っておきたい。
「未来のために。そしてLのためかぁ。うんうん、良いこと言うね!」
例えるなら、幼稚園児を相手にした先生だろうか。必要以上に頷きながら空はにこにこと笑った。
その姿に、私は疑問を覚える。
「空、君は、まえに自分のことを”願った記憶”だって言ってたよね?それって、過去の私の記憶が、こうして話しかけてきているってこと?」
「……記憶から話しかけているのは確かかな。私は夕陽の頭の中の存在だよ。」
「ということは君は、私?……なんでそんなに他人事なの?」
核心をついた質問のようだった。空は左右に揺れていた体をまっすぐ持ち直した。
「だって、私とあなたは、別だもん。夕陽は、空じゃない。……二人は、どちらかというと、友達だったのです。」
友達、という言葉がなぜか胸に直接沁みるように痛んだ。
俯いているのか、それともただ足元を見ているだけか、空の目はひどく虚ろだった。
言っている内容も理解できないし、自分もあんな表情をする瞬間があるのか、と不思議に思う。
どう見ても、私達の姿は同じだった。
「……友達?……こんなに同じ姿なのに?」
「同じなのは、あなたが空のレプリカだったからだよ。」
「レプリカ……?」
ニセモノとか贋作とか、そういう意味だっただろうか。
言葉の意味が分かっても、彼女の言いたいことが分からない。
「……どういうこと?私がレプリカ?ニセモノ?それに、だとしたら君、空は……」
混乱する私に、空は指を立てて答えた。
「しっ静かに」とでもいうように、悲しく、楽しそうに、笑顔のようななにかの表情を浮かべていた。
「全部知りたい?」
そうしてあっけなく真実が明かされた。
「ある世界に、一匹の死神がいました」