序章
名前変換 Who save his life is...
主人公について記憶喪失からスタートするので、
Lに突然呼ばれる名前です。
平凡な人物
これといった特技はない
Lと同じく甘いものが好き
本名は番外編等で登場する予定です
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人間も死神も、皆嫌いだったけれど、
でも、「あの人を助けたい」と願ったあの少女だけは好きだった。
青空の下で本を開き、祈るように物語のページをめくる彼女の願いを、叶えたいと思った。
彼女の願いは、この世界には無い。
空は高く遠く抜けるもの。世界の境界なんて、見下ろす側からすれば大したものじゃないらしい。
__ただ、落ちる場所を選べばいいだけと、誰かが言っていた。
______だったら私ができることは。
Guardian
◆Prologue:出会い
がん、と頭を打つ感覚に、私は目を覚ました。
鈍い痛みとともに身体をよじると、固いフローリングのような感触が後頭部と左半身にあった。
「うぅ・・いた・・」
声をもらしつつ頭を押さえると、肘が何かに当たった。どうしてか重い瞼を開けると、それは壁であった。私は、床のようなところで、壁際でじかに転がっているようだった。
そこまで認識したところで、自分はなんでここにいるのだろう?と本能的に思った。倒れた?転んだ?え、でも長い間寝てた様な気がする。そうしたらどうして頭をぶつけるようなこと・・しかもフローリングなんかに。フローリングなんかに?
そもそもここは、どこ?学校、家、ほかの・・駅ビルとか・・などととっさに頭に浮かべ、身体を起こして周囲をきょろきょろ見るが、そのどこにも似ている様子がない。そこは_ここは_電気のない、物もほとんどない、小さめの殺風景な部屋だった。うす暗く、壁と床と、モノクロの色彩。
私は薄いワンピースを一枚と裸足で、靴を履いていなかった。靴は、脱げたのだろか足元にばらばらに転がっていた。自分の荷物は他に何一つ無かった。真っ暗な部屋に、そのほぼ中央にノートパソコンのようなものが置いてあるだけだった。自分がいるのと反対側にその画面を向け、部屋を仄かに照らしている。
「どこかでみたこと・・あるような」
その光景にデジャブを感じ、私は立ちあがって、気付いた時にはぺたぺたと足音を立てながらそれに近づいていた。そのノートパソコンのほうに回り込んでその画面を見た。
大きな画面の前に、小さなタイマーのようなものが一つ。両脇にはスピーカーがあって、マイクが一つ。
中心のモニターは白い背景にただ大きく・・・
「これは・・」
その画面に息をのんだ瞬間だった。状況を飲み込むほんの数秒の暇もなく、突然うす暗い部屋に、真っ白な光がさした。だれかが入ってきたのである。
真っ黒なシルエットが私を認識して息を呑んだように見えた。顔は逆光で見えない。
あっ、と言いながらあわててパソコンのもとを離れるが、その人物に腕を組み敷かれてしまった。
「い、いたいっ・・!」
「ここで何をしている?どうやって入った?」
「あっ、わたし・・・何もっ・・していません!」
「・・・どうやってここに?」
「それもっ・・分かりません。気付いたらそこで倒れてただけで・・」
そう言いながら、聞き覚えのある声にだな、と私は頭の隅で感じた。
男の頭が動いた。そこ、といった私の言葉に何かを確認したのかもしれない。そこには散乱した靴がある。
「・・・・・・・・」
前方のパソコンには例のアルファベットが大きく表示されている。
男が私の思い当たる人物であれば、それは男の呼び名だった。足元を確認すると、裸足にジーンズという服装が見えた。間違いない。私はその人物を確信した。私はこの人を知っている。・・・知っているに違いない。押さえられながら、ぐっと振り返る。
「お願いです・・放してください・・」
男の顔はほとんど前髪で隠れていた。私に顔を見られてもその表情はぴくりとも動かず、ただ黙って押さえる腕に力を込めてきた。
私は身体の力を抜き、目線を足元に移してもう一度「お願いします・・」と言った。
「・・・・・・・・・。」
長い沈黙ののち。
彼は私の顔と、パソコンの画面を交互に見て、耳元で「・・・何もしていないのは本当のようですね。武器の携帯もなし。」と言った。
私はそのことを肯定するように、黙って動かないようにした。数秒ののちにやがて力が弱められ、ぱっと両腕が解放される。
はっと息をもらし、よろめきながら振り返ると、男がぐっとその顔をこちらに近づけた。その容貌があらわになる。大きな黒い、クマのある瞳と目があった。予想通りの人物だった。
私は思わず一歩後ろに下がる。
「ですが私は女性だからと手段は選びません。いまから少しでも不審な動きをしたら分かっていますね?」
「・・・」
「いまから貴方の処分を決めます」
平坦で冷静な声と、猫背と、大きな二つの目。だるだるのジーンズに白いロングTシャツ。伸ばした無造作な黒髪。世界の切り札。名探偵のLだった。L・ローライトだった。
___それは、まぎれもなく、私が、守りたいと願った人物だった。
___そっか、わたしは、「来れた」んだ。
___あなたを守るために。
「いいですか。」
私は実際に目の当たりにする良く知った人物に目を丸くしつつ、その言葉にかくかくと頷いた。Lはそれをみてその場から動くなとジェスチャーをし、近くのマイクでどこかに連絡を取り始めた。
「・・警察をよぶの・・・?」
「警察では対処しきれません」
横目で私にぴしゃりと言い放つと、Lは体育座りのような姿勢でパソコンのむこうになにやらぼそぼそと2、3言話した。小さく「ワタリ」と聞こえたような気がした私は、その名前にもかすかに聞きおぼえがあるような気がした。
「これからある人物がやってきます。それまで大人しくしていてください。」
Lはこちらを向いて床の上でじかに体育座りをして、私の行動を監視するようにした。その目は私が一歩後ろに下がった動きをも追ってきた。
仕方がないので私は一挙一動をじろりと観察されながら、ちょうど背後でくぼみになっていた窓際のカーテンの傍に腰掛けた。
カーテンの隙間には光が差し込んでいる。それを見て、真っ暗な部屋の様子のせいだろうか、ふといまは何時頃だろうと気になった。Lに何か言われないか気にかけつつおそるおそるカーテンに手をかけ、手の甲でそっとその隙間を広げてみた。
「・・・きれい」
オレンジ色の光が差し込んだ。夕刻の色だ。
私はそのまぶしさに目を細めつつ、その手前に見える高層ビルを見やった。どことなく見たことがあるようで、なんとなく「知らない」と感じる町並み。そう遠くない場所に、大きな時計の観覧車が見えた。時刻は17:25と表示されていた。
目の前のどれを見ても、都会であることだけは分かる。どれも、夕陽を影に真っ黒いシルエットだった。
この部屋もずいぶん高いフロアに位置しているのだな思った。高いビルのある場所と言えば東京?横浜?とにかくここはどこなのだろう。そういえば、私はどうしてここにいるんだろう。その答えはまだ分からないままだった。
反射したガラス越しに、黒い頭をみた。相変わらず微動だにせずこっちを見ている。
目の前にいるのはLという名探偵。私は彼を、彼の過去や未来を少し知っている。
懐かしささえも感じる。
私は彼を守りたかった。それだけは分かる。でもどうして?
裏を返せば、分からないことのほうが多かった。
この部屋で倒れていた理由。目が覚めたらなぜか知っている人物に組み敷かれた理由。
この瞬間までの記憶がない理由。
__私はだれ、ここは何処。
そして「守りたい」とは・・・?
目の前に映し出されたこの男は、私のことを知ってはいないだろうか。
「夕陽はいいんですが・・眩しいです」
色々と考えをめぐらせぼーっとしていると、背後からLの声がした。その言葉に現実に引き戻される。
「あっごめん・・なさい」
カーテンから手を離すと、部屋が元通りの暗さになった。
「あの、エ」
せめて最後の疑問をひとつ解決しようと声をかけた。私はえる、と言いかけてとっさに言葉を止めた。
「・・・エ?」
案の定、え、という音に反応した彼はこちらをぎろりと睨んだ。私はあわてて次の言葉で取り繕う。
「え、ええと、あの、私のこと、知ってますか?」
彼は、何を言っているんだ?とでも言うような表情を浮かべながら、「知りません」と言った。
「あなたは、いまのところ、不審で不可解で警戒すべきであるのになぜか丸腰の侵入者です」
私を見上げるように平坦に述べられた言葉は、相当な言われようだった。彼は丸い目で、当然ながらいまだに警戒感をこめつつ親指を口元にあてていた。
それは私にとって、はじめて自分を形容した言葉だった。さっきまでのちょっとした考え事でもう私が記憶喪失であることは明白だった。さらに「こっちが知っているのなら、むこうもこっちを知っているかもしれない」などと考えてもいたので、あぁ・・空しいなぁ、どどこか他人事のように思った。
記憶喪失というのは、ひとりになることだ。
なってみて初めて分かる。
突然知らない場所に来て、自分の名前も、もと居た場所もわからず。
途方にくれるべき状況に違いなかった。
だけど、と私は右手をぎゅっと握った。
真っ暗な状況。電気のないこの部屋のように。
でもこの部屋は薄暗い。そう、真っ暗ではない。
部屋の真ん中に設置された大きなモニターが部屋を照らしていた。
ただひとつ「L」と大きく部屋に光をもたらしていた。
私にもただ一つ「分かる」ことがある
それはまぎれもなく目の前にいるLという人物だった。
あのモニターのように、私の記憶を「ひとり」にせず、ひとつの道筋を照らしていた。
なぜ知っているのか、私はだれか、それらはすべて、この人といれば分かるような気がした。
だから、なにがなんでも此処_Lの傍にいよう、と私は決意を固めた。
そして「この人を守りたい」という、自分の心の奥の声を信じて行動することにした。