中編
「ラリイよ。久しいな。」
「はい。我が国の偉大なるお方。フェダス王様。大変にお久しゅうございます。」
ラリイは数年ぶりに、王の間で王と対面していた。
久しぶりに着る、正式な貴族の衣装に、ラリイは少しだけそわそわする。
「ラリイ。お前を久しぶりに呼んだのは、まず聞きたいことがあるからだ。」
「はい。私でお答え出来ることであれば、何なりと。」
ラリイは深く頭を下げたまま、王の言葉を待つ。
「近頃、お前は、不思議な羽を使い、瀕死だった母の命を救ったそうだな?
その羽は、どこで手に入れた?」
「そ、それは・・・」
ラリイは、まさか王に、フェニから貰った羽の存在を知られるとは思わず、
すぐにまずいと思った。
かと言って、素直にフェニから貰ったとしゃべり、フェニの存在を教えれば、
確実にフェニへ迷惑がかかるだろう。
それだけは、絶対に避けなければと覚悟を決める。
「あれは、私が過去に他国に遠征か、何かの戦いに行った際に
拾ったものでございます。」
「ほう?どの辺だ?」
「申し訳ございません。何せ、かなり過去の事。私も、記憶が
曖昧で、どの国のどの辺であったまでは、記憶が定かではありません。」
「うむ・・・それは残念だ。」
王はかなり残念そうにラリイからの答えを聞く。
ラリイは、冷や汗をかきながら、何とか怪しまれないように、上手に嘘をついた。
これなら、自分が手にしたと言う事だから、フェニを気にされることはないだろう。
それに、あの羽の事は、母にしか話していない。
固く口留めもした。フェニと言う親友から貰ったと言う事も。
「お前の長兄である、ライリスの話を聞く限り、お前が持っていた、その不思議な羽は、
あの有名な幻獣のフェニックスの羽ではないかと言うのだ。
それなら、納得がいく。フェニックスの羽には、人間には
信じられないほどの治癒力が宿っていると言う。
伝説には死者さえ黄泉がえらせるとな。」
「そうでございましたか・・・。それは大変申し訳ございませんでした。
私が無知であった為、その様な貴重な物とは知らずに、
王国に献上せずに、私用で使用してしまいました。」
ラリイは、白々しい嘘を付きながら、王に謝罪した。
もし、王がこの事で怒り、自分を処分するなら、そうなっても
良いとラリイは覚悟した。
大事な母を救うことが出来た方がラリイには仕事より重要だから。
しかし、ラリイの覚悟とは逆に、王は怒りを表すことはなく、
むしろ想像していなかった事を言い出す。
「だが、ラリイ。これは何かの縁であろう。お前に、幻獣フェニックス探しを命じる。
羽を手に入れる奇跡があるのなら、お前なら、あのフェニックスを
探すことも出来るやもしれぬ。
急ぎはせぬ。出来る限りで力を尽くせ。良いな?」
「は。」
ラリイは、突然の王の命に、苦しい気持ちで居たが、
その場は素直に承諾をする振りをした。
全く、無茶苦茶な話だ。たまたま、本当にそのフェニックスの羽を、
自分が手に入れたくらいで、あの有名な幻獣フェニックス自体が
見つかったら、苦労しないだろうと。
が、ラリイは知らない。
自分と今暮らしている、同居者が、そのフェニックスであるなど。
心苦しい気持ちで、ラリイはフェニの待つ家に帰る事となった。
「な?!なんで、お母様がここに?!」
ラリイは、フェニしか待ってないと思っていたのに、今日に限って母までが、
家におり、フェニと一緒にいることに驚いた。
でも、すぐにラリイは母に怒り出す。
「どうして、勝手に来たのです!俺が良いと言うまでは、
駄目だと言ったではありませんか!」
「ですが、ラリイ。フェニ様にも言ったのですが、
私は命を助けて頂いたのですよ?
なのに、お礼も言えないなんて、あまりにも、心苦しいではありませんか。」
「それは、お気持ちはわかりますが・・・」
母にそう言われてしまい、ラリイも苦い顔をする。
母の性格の事を考えると、確かに無理な話でもあった。
ラリイとその母のやり取りを見て、フェニックスの方が仲裁に入る。
「もう過ぎた話です。両者とも、落ち着いて下さい。」
「フェニ・・・」
「フェニ様・・・」
仲裁に入るフェニックスをラリイとその母は同じような目で見る。
フェニックスは心の中で苦い笑いするしかなかった。
本当に親子だと、フェニックスは2人を見て確信した。
「フェニ・・・本当にごめん。母が、あんなにも思い詰める程とは思わなくて。
2度とこんな事にならない様にするから。」
「仕方がない。母とは、子の事が心配なものだ。
それに、あの母はやっぱり、ラリイの母だな。
ラリイに似ていると、すぐに分かった。姿も性格もな。」
「え?そ、そうか?」
ラリイが帰宅し、それと入れ替わるように、ラリイの母は、
ラリイに追い出されるように、実家に帰っていった。
渋々にと言った感じではあったが。
ラリイはフェニが怒った様子もなく、本当に安心したと同時、
母の事を許してくれているようで、助かったような気持ちになった。
「全く。城で、ろくでもない仕事を押し付けられたかと思えば、
母が来て、フェニに迷惑かけるなんて。とんだ厄日だ。」
「ん?何か城で新しい仕事でも貰ったのか?」
フェニックスが、珍しく不機嫌にしているラリイに聞く。
「ああ、聞いてくれよ!フェニから貰った、あの羽あるだろう?
どういうわけか、上の偉い人の耳に入ってしまって、
あの羽を勝手にフェニックスの羽だとか言って来てさ!
あれを手に入れる奇跡があるのなら、フェニックスも探し出せるだろうとか、
あり得ない仕事を命じられちゃってさ。慌てる仕事じゃないけど。
けど、流石に、そんな都合のいい話あるわけないのにな?
フェニもそう思うだろ?」
ラリイは王から命じられた事を思い出し、イライラしながら、早口でフェニに話す。
フェニックスは、自分の想像の斜め上を行くような話に、
一瞬、黙る。
それから、しばらく顔を下に向けたまま、プルプル震えていた。
ラリイは、そんな風になってしまった、フェニを心配する。
「ど、どうしたんだ?!フェニ?!具合でも悪いのか?!」
「くぅ・・・・くくくくく・・・」
こみ上げてくる笑いを必死に抑え。何とか数分後にフェニは、
ラリイと再度会話を再開させる。顔が若干まだピクピクしているが。
「フェニ・・・お前、大丈夫か?」
ラリイは、心底心配そうな顔でフェニを見る。
フェニックスは心配かけまいと、笑顔になる。
「ああ、すまない。まさか、ラリイにそんな迷惑が掛かるなんて、
私も想像がつかなかった。」
「いや!迷惑だなんて、とんでもないよ!でも、安心してくれ、
あの羽をフェニから貰ったことは上手く隠したから、
お前に迷惑かからないと思う。
その事を知ってるのも、母だけだから、絶対にバレることもないよ。」
「そうか。ま、何があろうと、私はラリイを信じている。」
「有り難うフェニ。俺はお前に絶対に迷惑かけないから!
あ、で・・・フェニがくれた、あの羽って・・・結局は?」
「ご期待通りに、フェニックスの羽だが?」
「え?・・・マジで???」
ラリイは、フェニの答えに大混乱と言う顔だ。
フェニックスは、抑えていた笑いの感情がとうとう、
我慢できなくなり、大爆笑する。
そんなフェニにラリイは困惑さえする。
「ははははは、いや、悪い。ラリイ。あれは、とある方法で手に入ったもので、
詳しく言うのはラリイでも悪い、控えるが、正真正銘、フェニックスの羽だよ。」
「な、なら、尚更、俺にくれるなんて、悪いじゃないか!!!」
ラリイは慌てふためきながら、フェニに言う。
ラリイは、本当にフェニックスの羽と言うアイテムの存在を、
知らなかったのだ。
だから、フェニから、お守りのような、そんな類の物を貰ったと、
勘違いしていたのだ。
ラリイは今思えば、確かにあの羽は、とても美しいもので、
フェニックスの羽だと言われれば、すぐに納得しただろう。
あの時に母が死にかけていると言う現状がなければ、
もう少しはまともな判断も出来たかもしれない。
慌てているラリイとは対照的に、フェニックスは、
今後のラリイとの会話次第では、そろそろ潮時かも
しれないと、冷静な気持ちで考え始めていた。
「はい。我が国の偉大なるお方。フェダス王様。大変にお久しゅうございます。」
ラリイは数年ぶりに、王の間で王と対面していた。
久しぶりに着る、正式な貴族の衣装に、ラリイは少しだけそわそわする。
「ラリイ。お前を久しぶりに呼んだのは、まず聞きたいことがあるからだ。」
「はい。私でお答え出来ることであれば、何なりと。」
ラリイは深く頭を下げたまま、王の言葉を待つ。
「近頃、お前は、不思議な羽を使い、瀕死だった母の命を救ったそうだな?
その羽は、どこで手に入れた?」
「そ、それは・・・」
ラリイは、まさか王に、フェニから貰った羽の存在を知られるとは思わず、
すぐにまずいと思った。
かと言って、素直にフェニから貰ったとしゃべり、フェニの存在を教えれば、
確実にフェニへ迷惑がかかるだろう。
それだけは、絶対に避けなければと覚悟を決める。
「あれは、私が過去に他国に遠征か、何かの戦いに行った際に
拾ったものでございます。」
「ほう?どの辺だ?」
「申し訳ございません。何せ、かなり過去の事。私も、記憶が
曖昧で、どの国のどの辺であったまでは、記憶が定かではありません。」
「うむ・・・それは残念だ。」
王はかなり残念そうにラリイからの答えを聞く。
ラリイは、冷や汗をかきながら、何とか怪しまれないように、上手に嘘をついた。
これなら、自分が手にしたと言う事だから、フェニを気にされることはないだろう。
それに、あの羽の事は、母にしか話していない。
固く口留めもした。フェニと言う親友から貰ったと言う事も。
「お前の長兄である、ライリスの話を聞く限り、お前が持っていた、その不思議な羽は、
あの有名な幻獣のフェニックスの羽ではないかと言うのだ。
それなら、納得がいく。フェニックスの羽には、人間には
信じられないほどの治癒力が宿っていると言う。
伝説には死者さえ黄泉がえらせるとな。」
「そうでございましたか・・・。それは大変申し訳ございませんでした。
私が無知であった為、その様な貴重な物とは知らずに、
王国に献上せずに、私用で使用してしまいました。」
ラリイは、白々しい嘘を付きながら、王に謝罪した。
もし、王がこの事で怒り、自分を処分するなら、そうなっても
良いとラリイは覚悟した。
大事な母を救うことが出来た方がラリイには仕事より重要だから。
しかし、ラリイの覚悟とは逆に、王は怒りを表すことはなく、
むしろ想像していなかった事を言い出す。
「だが、ラリイ。これは何かの縁であろう。お前に、幻獣フェニックス探しを命じる。
羽を手に入れる奇跡があるのなら、お前なら、あのフェニックスを
探すことも出来るやもしれぬ。
急ぎはせぬ。出来る限りで力を尽くせ。良いな?」
「は。」
ラリイは、突然の王の命に、苦しい気持ちで居たが、
その場は素直に承諾をする振りをした。
全く、無茶苦茶な話だ。たまたま、本当にそのフェニックスの羽を、
自分が手に入れたくらいで、あの有名な幻獣フェニックス自体が
見つかったら、苦労しないだろうと。
が、ラリイは知らない。
自分と今暮らしている、同居者が、そのフェニックスであるなど。
心苦しい気持ちで、ラリイはフェニの待つ家に帰る事となった。
「な?!なんで、お母様がここに?!」
ラリイは、フェニしか待ってないと思っていたのに、今日に限って母までが、
家におり、フェニと一緒にいることに驚いた。
でも、すぐにラリイは母に怒り出す。
「どうして、勝手に来たのです!俺が良いと言うまでは、
駄目だと言ったではありませんか!」
「ですが、ラリイ。フェニ様にも言ったのですが、
私は命を助けて頂いたのですよ?
なのに、お礼も言えないなんて、あまりにも、心苦しいではありませんか。」
「それは、お気持ちはわかりますが・・・」
母にそう言われてしまい、ラリイも苦い顔をする。
母の性格の事を考えると、確かに無理な話でもあった。
ラリイとその母のやり取りを見て、フェニックスの方が仲裁に入る。
「もう過ぎた話です。両者とも、落ち着いて下さい。」
「フェニ・・・」
「フェニ様・・・」
仲裁に入るフェニックスをラリイとその母は同じような目で見る。
フェニックスは心の中で苦い笑いするしかなかった。
本当に親子だと、フェニックスは2人を見て確信した。
「フェニ・・・本当にごめん。母が、あんなにも思い詰める程とは思わなくて。
2度とこんな事にならない様にするから。」
「仕方がない。母とは、子の事が心配なものだ。
それに、あの母はやっぱり、ラリイの母だな。
ラリイに似ていると、すぐに分かった。姿も性格もな。」
「え?そ、そうか?」
ラリイが帰宅し、それと入れ替わるように、ラリイの母は、
ラリイに追い出されるように、実家に帰っていった。
渋々にと言った感じではあったが。
ラリイはフェニが怒った様子もなく、本当に安心したと同時、
母の事を許してくれているようで、助かったような気持ちになった。
「全く。城で、ろくでもない仕事を押し付けられたかと思えば、
母が来て、フェニに迷惑かけるなんて。とんだ厄日だ。」
「ん?何か城で新しい仕事でも貰ったのか?」
フェニックスが、珍しく不機嫌にしているラリイに聞く。
「ああ、聞いてくれよ!フェニから貰った、あの羽あるだろう?
どういうわけか、上の偉い人の耳に入ってしまって、
あの羽を勝手にフェニックスの羽だとか言って来てさ!
あれを手に入れる奇跡があるのなら、フェニックスも探し出せるだろうとか、
あり得ない仕事を命じられちゃってさ。慌てる仕事じゃないけど。
けど、流石に、そんな都合のいい話あるわけないのにな?
フェニもそう思うだろ?」
ラリイは王から命じられた事を思い出し、イライラしながら、早口でフェニに話す。
フェニックスは、自分の想像の斜め上を行くような話に、
一瞬、黙る。
それから、しばらく顔を下に向けたまま、プルプル震えていた。
ラリイは、そんな風になってしまった、フェニを心配する。
「ど、どうしたんだ?!フェニ?!具合でも悪いのか?!」
「くぅ・・・・くくくくく・・・」
こみ上げてくる笑いを必死に抑え。何とか数分後にフェニは、
ラリイと再度会話を再開させる。顔が若干まだピクピクしているが。
「フェニ・・・お前、大丈夫か?」
ラリイは、心底心配そうな顔でフェニを見る。
フェニックスは心配かけまいと、笑顔になる。
「ああ、すまない。まさか、ラリイにそんな迷惑が掛かるなんて、
私も想像がつかなかった。」
「いや!迷惑だなんて、とんでもないよ!でも、安心してくれ、
あの羽をフェニから貰ったことは上手く隠したから、
お前に迷惑かからないと思う。
その事を知ってるのも、母だけだから、絶対にバレることもないよ。」
「そうか。ま、何があろうと、私はラリイを信じている。」
「有り難うフェニ。俺はお前に絶対に迷惑かけないから!
あ、で・・・フェニがくれた、あの羽って・・・結局は?」
「ご期待通りに、フェニックスの羽だが?」
「え?・・・マジで???」
ラリイは、フェニの答えに大混乱と言う顔だ。
フェニックスは、抑えていた笑いの感情がとうとう、
我慢できなくなり、大爆笑する。
そんなフェニにラリイは困惑さえする。
「ははははは、いや、悪い。ラリイ。あれは、とある方法で手に入ったもので、
詳しく言うのはラリイでも悪い、控えるが、正真正銘、フェニックスの羽だよ。」
「な、なら、尚更、俺にくれるなんて、悪いじゃないか!!!」
ラリイは慌てふためきながら、フェニに言う。
ラリイは、本当にフェニックスの羽と言うアイテムの存在を、
知らなかったのだ。
だから、フェニから、お守りのような、そんな類の物を貰ったと、
勘違いしていたのだ。
ラリイは今思えば、確かにあの羽は、とても美しいもので、
フェニックスの羽だと言われれば、すぐに納得しただろう。
あの時に母が死にかけていると言う現状がなければ、
もう少しはまともな判断も出来たかもしれない。
慌てているラリイとは対照的に、フェニックスは、
今後のラリイとの会話次第では、そろそろ潮時かも
しれないと、冷静な気持ちで考え始めていた。