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前編

「フェニーーーーー!!!」

ラリイは、フェニの待つ家に帰って来て、フェニを見るなり、
歓喜の声をあげて、親友の名前を呼び、男同士であるが、フェニに
思いきり抱きついた。

「?!」

いきなりのラリイの熱い抱擁に、フェニックスは戸惑い、顔を真っ赤にした。
まさか、自分が初めての作った人間の友に、こんな事を
いきなりされるとは、フェニックスさえ、予想出来なかった。
戸惑うフェニックスをよそに、ラリイは何度もフェニに感謝する。

「有り難う・・・フェニ、本当に有り難う。お前の言う通り。
お前のくれた、あの羽は奇跡を起こして、俺の大事な母の病気を
治してくれたんだ。フェニ、お前は俺の母の命の恩人だ。
本当に、本当に有り難う・・・」
「そうですか、それは良かったです。でも、あの・・・ラリイ。
嬉しいのはわかるのですが、少し苦しいので、離して貰えませんか?」
「ああ!わ、悪い!!!つい!!!」

ラリイも自分のした事に気づいて、顔を真っ赤にして、フェニに謝る。
フェニは苦笑いしつつも、そんなラリイを憎めずにいた。

「フェニ・・・あんな貴重そうな幻の鳥の羽のアイテムを、俺なんかに、
くれて、本当に良かったのか?とっても、大事なモノだったんじゃ・・・
それに、フェニがくれたあの羽・・・いきなり光ったと思ったら、消えちゃったんだ。
どうしよう、俺、フェニに、謝っても謝り切れないよ・・・」

喜んでいたかと思ったら、ラリイは今度、申し訳なさそうな顔で、
一生懸命にフェニに謝罪する。
どうやら、ラリイは、フェニックスの羽と言うアイテムの存在を
知らないらしい。
フェニは、そんなラリイが可笑しくて笑ってしまう。

「いいんです。無くなって。あの羽のアイテムは1度きりしか
使えないものなのです。
でも、無くなったと言う事は、使えた証。なら、それでいい。」
「フェニ・・・でも、俺、お前に申し訳ないよ。あんなにも、凄いモノ貰って。」
「何で、申し訳ないと思う?ラリイが、最初にあの雨の日に、
私を助けなければ、こんなことは起きなかった。ラリイは何も、
罪悪感を感じることはない。むしろ、誇りに思うべきだ。」
「フェニ・・・お前、本当にいい奴だな。」
「何を言う。それはお前の方だ。」

ラリイとフェニックスはお互いにそう言い合って、笑った。
1匹の幻獣と1人の人間の間には今まで以上の穏やかな空気が流れる。

「フェニ。今すぐじゃなくてもいいんだけどさ。」
「何だ?」
「俺の家族にも会ってくれないかな?父も母も、フェニに、
感謝の言葉を言いたいと思うんだ。」
「それは、必要ない。」

フェニは穏やかな顔では、あったが、ラリイ以外の人間は、
まだ許したわけではなかった。なので、つい昔の様に強い口調で、
否定しまう。

「す、すまない・・・ラリイ。」
「いや、俺こそ、フェニの気持ちも、考えないでごめん。」

ラリイとフェニックスはつい互いに謝る。
ラリイは自分の嬉しい気持ちをつい優先させてしまった事に後悔する。
ちゃんと知っていたはずなのに、フェニはあんまり人間が好きではないことを。

「あはは。さっきの言葉は忘れてくれ。ただ、その、俺以外にも、
俺の家族は全員、フェニに凄く感謝している。それだけは伝えたいんだ。」
「わかった。その気持ちは受け取ろう。」
「うん。有り難う、フェニ。」

ラリイは自分がフェニにどれだけ感謝しているのかを伝え、
それは理解してくれたので、今はそれで満足することにした。
無理強いして、逆に不快にさせたら意味がないのだから。
お互い、少し沈黙してから、今度はフェニが口を開く。

「ラリイ。私もお前に言わなきゃいけないことがある。
私の事を・・・」
「フェニ・・・」
「私は・・・実は・・・」
「あ!いや!いい!!今は言わないでくれ!」

ラリイはフェニックスを話を無理に止める。
ラリイは感で凄く嫌な予感がしたのだ。
今、フェニからその話を聞いたら、もう二度とフェニと一緒には
居られなくなると。

「しかし、ラリイも気になるだろう?私と言う存在が・・・」

フェニックスも、やっと心に決めて話さないと思っていたのに、
まさかラリイから話すのを止められると思わず、困惑する。
困り顔のフェニを見て、ラリイも申し訳ないと思うのだが、
それでもラリイはフェニの話を拒む。

「頼む・・・フェニ。今はまだ、その話はしないで欲しい。
嫌なんだ。なんか、その話を聞いたら、フェニが遠くに行ってしまいそうで。
もう、二度と逢えなくなりそうで。」
「ラリイ・・・」

ラリイの直感にフェニックスは驚かずにいられなかった。
一体、何度ラリイと言う存在にフェニックスは感心しただろう。

「なぁ・・・フェニ・・・」
「ん?何だ?」
「あのさ、フェニが良いならでいいんだけどさ。」
「うん。」
「もう少しだけでいいから、俺の親友として、ここに・・・
居てくれないかな?俺は、まだお前に感謝したいよ。
こんなに感謝しきれないままで、フェニがいなくなったら、
俺・・・後悔すると思うからさ・・・」

ラリイは真面目に真剣にフェニに訴える。
やっと親友になれた、フェニとまだ思い出が作りたかった。
フェニは溜息をつき、ラリイの我が儘を受け入れることにした。
本当に、新しく出来た人間の友は、厄介なものだ。
まるで、自分の心までも見透かされてるようで。

「ラリイは、本当に変わった人間だ。こんな、怪しい奴を、まだ側に
置きたいなんて・・・でも、何故だろう。
私も、今はラリイと同じ気持ちだ。
だから、もう少しだけ、居させて貰ってもいいかな?ラリイ?」
「もちろんだよ!」

ラリイは何よりも嬉しそう顔で、フェニに答える。
フェニックスも、ラリイがこんなにも喜んでくれるのなら、
悪い気分はしなかった。
人間の寿命から比べれば、フェニックスの感覚では、数日程長くなるくらいだ。
それくらいなら、もう少しだけ付き合ってもいいだろう。
フェニックスは自分がラリイと出会い、価値観が変わったことを実感した。
ただ、大嫌いだった人間への価値観が。

「今日は、母の完治祝いに、ぱぁーっと飲もうぜ!
付き合ってくれるだろう?フェニ?」
「ふっ。付き合ってもいいが、酒癖の悪さが出るまでは飲むなよ?
私も、この前、あんなに絡まれるとは思わなかったからな。
あんなのは二度とごめんだ。」

フェニは苦笑いして、ラリイに忠告する。
初めてラリイの酒に付き合った時に、ラリイがあんなにも酒癖が、
悪いと思わずに、苦労させられたことを思い出した。
酔っ払い相手など、フェニックスには、初めての経験であった。
あの時ばかりは、フェニックスも流石にラリイを嫌いになりそうになった。

「ご、ごめん。今日は絶対に迷惑かけないから!だから、付き合ってくれるか?」

ラリイもあの時を思い出したようで、心底、すまなさそうな顔で、
フェニのご機嫌を伺うラリイに、フェニも心の中で笑うしかなかった。
本当に、こういう表情をするラリイはズルい。
結局、許してしまう自分の甘さにも、呆れてしまう。

「わかった。もし、今日も悪酔いしたら、容赦なく、気絶させるからな?」
「お、おう!いいぞ!その時は俺を好きにしてくれ!」

ラリイはフェニの提案を受け入れ、2人は夜、仲良く酒を酌み交わした。
が、今度はまさかのフェニが酔っ払い、ラリイを驚かせることに、
なろうとは、この時、フェニックスさえ、考えつかぬ事だった。
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