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前編

泣いているラリイを、しっかり見つめたフェニックスは、
ラリイの顔を見ながら話を続ける。

「ラリイ。お前には散々世話になった。だからこそ、今、お前の恩に報いたい。」
「フェニ・・・」
「ラリイ。しっかり聞いて欲しい。ここには、ある幻の鳥の羽がある、
これをお前の母の胸にしっかり抑え当て、心から願え。母の回復を。
もし、お前が、私を心から信じてくれたのなら、この羽は奇跡を
起こすだろう。
だが、少しでも、私の話が信じれない場合は、この羽は何も力を持たない。
いきなり、こんな事を言う私を、お前はおかしい奴だと思うだろう。
だが、今は、今だけは、この私を信じて行動して欲しい。」
「フェニ・・・お前、俺の母を助けてくれるのか?
けど、この羽は・・・フェニとっても大事なものじゃないのか?」

ラリイはフェニの話を疑っている様子は無かったが、ただ、
そんな貴重そうな羽を貰っていいのか、戸惑っている感じだった。
フェニックスは、ラリイを安心させるように笑顔になって言う。

「気にする事は何もない。遠慮せずに貰って欲しい。
私はラリイだからこそ、この羽を渡したいんだ。言っただろう?
恩を返したいと。信じて、受け取ってくれるか?」
「フェニ・・・有り難う!俺は誰よりもお前を信じるよ!
早速、母のとこに行ってくる!!!」
「ああ、行け、ラリイ。私はここで待ってる。」
「うん!有り難う!フェニ!絶対にここで待っててくれよ!」

ラリイは、友であるフェニックスを信じることにした。
あのフェニが、この期に及んで嘘をつくとはとても思えない。
こうまで、言ってくれるからには、きっとこの羽には、何か力があるのだろう。
ラリイは友の心強い言葉を頼りにして、自分の実家に急いだ。

ラリイが出て行き、フェニックスは自分が寝かせて貰っていた
ベッドの上に座り、精神を統一させていた。
ラリイに渡した、自分の身体の一部である、あの羽と精神を繋げる。
後はこれでわかる。ラリイが本当に自分を信じているかどうかを。
羽から、ラリイの心を読み取ることが出来るようにしたのだ。
これはフェニックスの賭けでもあった。
もし、ラリイが、やはり汚い人間であったのなら、奇跡など、もちろん起きない。
そうしたら、フェニックスは、今後二度と人間に関わるまいと思った。
あの信じかけたラリイに裏切られたら、立ち直れそうにない。
でも、もし・・・もしも・・・フェニックスは、その淡い希望に
期待したのだ。

「どうして!今更になって顔を出した!恥さらしが!!!」
「そうだ!出て行け!この家の面汚し!」
「ライリス兄様の言う通りだ!この場から消えろ!」

ラリイは、実家に帰るなり、父と兄達から、罵声を浴びた。
だが、そんな彼らを無視して、ラリイは母の部屋に向かう。
フェニから貰った、大事な羽をしっかりと持って。
父達が背後から、まだまだ罵声を浴びせ続ける。

「お止め下さい!旦那様!坊ちゃん方!!
奥様が苦しんでいると言うのに、何てことです!!」

流石のローダが見兼ねて、ラリイを助けて、父達を足止めする。
ラリイはローダにお礼を言って、母の側に駆け寄る。
そして、フェニに言われた通りに、母の胸にあの羽を置き、
しっかりと抑え、心から願った。

(俺はフェニを信じてる。あのフェニがあんなにも、真面目な顔で
言ってくれたんだ。俺はフェニを大事な友の言葉を信じる。
だから、どうか、母を救ってくれ。頼む!!!)

何にも迷いのない、ラリイの熱い言葉が、ラリイの家に居る、
フェニックスの心に響く。
フェニックスは、薄っすらと笑った。嬉しくて、微笑まずには
いられなかったのだ。

「全く、ラリイは愚かですね・・・こんな見ず知らずの存在に、
大事な母の命を願うなんて。ですが、貴方は私を信じてくれた。
今度はそれに私が答える番です。」

フェニックスは、自分の魔力を一気に高めた、それから、人間では聞き取れない言語で語り出す。

『我が古より深き繋がりがある、名もなき生命の精霊よ。
我が深き繋がりにおいて、我が声に答えよ。
お前の無限の生命力を我に貸し与えたもえ。
死せるものに、今一度、生命を息吹を!リ・アレイズ!!!』

フェニックスがそう叫ぶと、遠く離れた、ラリイが母の胸に抑えていた羽が
急に眩しい光を放ち、ラリイとラリイの母を包み込んだ。
突然の出来事に、皆が騒然となる。それから、少しして光は消えた。

「お母様・・・?」

ラリイは心配になって、母を見る。
母は眩しそうな顔をしていたが、すぐに目を開けて、ラリイを見る。

「ラリイ・・・これはどういうことでしょう?
あんなに苦しかったはずなのに・・・私、今、全然何ともないわ。」
「ほ、本当ですか?お母様!!」
「ええ・・・まるであの光が、私の病気を治したみたい。」
「よ、良かったです!お母様!う、うぁああん!」
「あらあら、ラリイったら、子供に戻ったみたいに・・・」

ラリイは大泣きしながら、母に抱きついて泣いた。
母は、それを優しく笑いながら、ラリイを抱き返して、ラリイの
頭を撫でていた。
その光景を見た、父達は、何も言えず、ただ見守っていることしか出来なかった。
だが、どんなことが起きたにせよ、ラリイが母を救ったは、
紛れもない事実だった。
それから、すぐに医者を呼び、母をもう一度見せた所、医者は、
こんな事は奇跡だとしか、言わなかった。
ラリイは、それを聞いて、笑ってしまう。
フェニの言う通り、奇跡が起きてしまったのだから。
ラリイは元気になった母に安心し、母やローダが、居て欲しいと、
頼んでも、自分の家に帰ると言って、母の部屋を出た。

「待て、ラリイ。」

母の部屋を出て、廊下ですぐに父に呼び止められる。

「何ですか?すぐに恥さらしは家から出ますから。安心して下さい。」

ラリイは素っ気なく、そう言いながら、父の横を過ぎた。

「感謝する。あいつを・・・お前達の母を救ったこと・・・」
「え?」

思いがけない父の言葉にラリイは立ち止まる。
久しぶりに罵声ではない、父の言葉をラリイは聞いた。

「許せ。あの時、お前に優しくしていたら、我が一族は、
王家から見放され、他の貴族達に馬鹿にされ、一生、
恥さらしとして生きることになっただろう。お前にだけ責任を
押し付け、辛い思いをさせた、この未熟者な父を許せ。」
「お父様・・・・」
「いつでもいい、帰ってこい。このお前の家に。お前の心の整理が
つくまで、私はあいつと、いつまでもお前を待っている。」

父の言葉は、とても暖かいものだった。
こんな優しい言葉を聞いたのは、子供の頃だっただろうか。
ラリイは、母が前に言った言葉を思い出していた。

「仲直りしたいと思っているの。」と。

ラリイは、静かに泣きながら、父を見て、無言で頷く。
それで、父との会話を終わらせ、ラリイはフェニの待ってる
今の自分の家に、急いで帰った。
このお礼をどうしても、早くフェニに言わなければと思ったのだ。
母の命の恩人である、親友のフェニに。

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