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番外編

今日、ラリイとフェニックスは、ラリイの母の病気の完治祝いに、
仲良く飲むことにしていた。

「フェニは、いきなり強い酒よりも、こういう果実酒から、
飲んだ方がいいと思って、用意しといたよ。」
「そうなのか?」

ラリイは、気を利かせて、フェニが飲みやすそうなお酒を用意していた。
ラリイは最初に自分が作った、柑橘系の果実酒を自分とフェニのコップに注ぎ、
それからフェニと乾杯する。
フェニは、最初、匂いを確認してから、飲む。
柑橘系の爽やかな匂いを感じながら飲む酒は、美味しいと感じた。
酒の苦みなども、果物の甘さで緩和されている。

「うん。美味しい。」
「そうか!なら良かった!まだ、色々あるから、気軽に飲んでくれ。」

ラリイは、フェニにそう言いながら、自分は悪酔いしない様に、
気をつけながら飲んだ。
ラリイとフェニは、わいわいと盛り上がりながら、数時間、
あっという間に飲んでいた。

「ラリイは、どんな女の子が好みなんだ?」
「え?」

フェニックスは、ラリイに意地悪そうな顔で、こんな質問をする。
ラリイは一瞬、戸惑う。よくよくフェニの顔を見れば、フェニの顔は真っ赤であった。

「フェニ・・・大丈夫か?顔が真っ赤だぞ?」
「何を言う。私は至って素面だ。それより、私の質問に答えろ。」

フェニックスはもう何杯目になるかもわからない、果実酒の
入ったコップをラリイに突き付けて聞く。
ラリイは、困惑しながらも、質問に答える。

「そうだなぁ・・・優しくて、明るい子がいい・・・かな?」
「ほう・・・では外見は?」
「外見にこだわりはないかな・・・俺の事が好きで居てくれるなら、
可愛い系でも、美人系でも・・・」
「では・・・こんなのはどうだ?」
「は?」

いつにも増して意地悪そうにフェニックスが笑ったかと思うと、
ラリイの目の前には、急に女の姿になった、フェニックスが現れた。
ラリイは、ビックリしたままで、固まる。
フェニは美青年だ。それが、今度は女になれば、もちろん美女だ。

「前に酔っぱらった時に、彼女がどうこう、うるさかったからな。
そんな可哀想なラリイに、今日は私が女の姿で酒の相手を
しようじゃないか?どうだ?嬉しいか?」

フェニックスは、驚いているラリイを見て、ケラケラと楽しそうに笑う。
ラリイは何が起きたのかさっぱりで、戸惑うばかりだ。

「フェニは・・・魔法でも使えるのか?」

ラリイは魔法の類でフェニが女になったのだろうと、今は考えることにした。
それがラリイの考えれる中で最善の答えだった。

「ふふふ、そうだな。そう思えばいい。さぁ?せっかく、
この私が気前良く、女になってやったんだぞ?酒を注いでやるから、
ラリイのコップを出せ。」

外見は美女になったとしても、中身はいつものフェニであった。
ラリイは、変にドキドキさせながら、フェニにお酒を注いで貰う。
いつも見ている親友のフェニのはずなのに、今日はお酒の力も
あってか、何か邪な事を考えてしまいそうで、ラリイは
必死になって、変な考えをしないようにする。

「ラリイ・・・いつも有難う。」
「え?」
「私に、色々と気を使ってくれて。ラリイのそういう所は、
私には、とても、心地良いんだ。」
「あ、いや、そ、それは、良かったよ・・・」

女になっている所為だろうか。フェニの声も美しい女性の声になっており、
その表情も、女性らしく、穏やかで艶っぽかった。
もし、フェニが最初から「女」であって、そこで出会っていたら、
ラリイはフェニに惚れていたかもしれないと思った。
いや、多分惚れていただろう。
今、こんなにも心臓が苦しいほど、脈を打っているのだから。

「ラリイ・・・」
「え・・・あ、ど、どうしたんだ?!」

フェニはラリイに顔を近づけてくる。
ラリイも健全な男だ。こんなことをされれば、キスをされると、
誤解しても、仕方がなかった・・・が。
フェニは、嬉しそうにラリイの胸の中で寝てしまった。
ラリイは、そんなフェニに唖然としてしまった。

「び、びっくりした・・・」

期待と緊張と残念と、そして最後は、安堵。
確かに、今はフェニは女の姿だが、それはあくまで、魔法の力で、
一時的になっているものだ。
それを、理性が持たずに、親友を襲ってしまったのなら、
ラリイはきっと後悔することになっただろう。
そうならずに済んで、ラリイは何より安堵した。
だが、湧き上がってしまった、欲求はどうにも苦しい。

「っつたく・・・俺の気持ちで遊んで、呑気に寝て・・・
フェニは・・・」

ラリイは、文句を言いつつも、フェニを抱きかかえて、フェニが
いつも寝ているベッドに、そっと寝かせる。
静かに、嬉しそうな顔で寝ているフェニに、ラリイは悪い気持ちはしていない。

「フェニは、俺に、心を許し始めてくれたってことだよな。
こんな事になるってことは・・・」

女の姿になっているフェニの顔を見て、ラリイはまた欲求が、
危ない事になり、急いで、フェニの部屋から出て、家からも飛び出した。
そこらにある、木の棒で素振りをしたり、夜の森を走ったり、
とにかく、欲情を抑えようと必死になる。

「俺には、悪酔いするなとか言っておいて、フェニも酒癖悪いじゃないか!
明日、俺も文句言ってやる!!」

ラリイは、今度は逆にイライラした気持ちになっていき、明日、
フェニに絶対に注意してやろうと思った。
そして、次の朝になって、フェニにその話をしたのだが。

「何を馬鹿なことを言っている?私がそんな事するわけがない。
ラリイの方が酔っ払いすぎて、変な夢を見たのだろう?」

と、冷たく言い放たれて、ラリイの方が唖然とする羽目になった。
ラリイも、一瞬、むっとしたが、でも、あの顔のフェニの思い出を
悪いものにしたくなくて、それ以上は言わないことにした。
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