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番外編

その日は、ラリイは城の仕事の後で、数人の人間の友人の付き合いで、
飲みに付き合わされていた。
最初は断ろうとしたのだが、どうにも友人の中の1人がしつこく誘い、
断ることが出来ず、ラリイも仕方がなく、軽く1杯だけと言って、
付き合う事になった。
外はまだ夕方なので、1杯くらいなら、フェニの夕食には、
間に合うだろうと考えていた。

「ラリイ!聞いてくれよ!彼女がさー!また、あんな事言うんだぜ!」
「んだよーまたこいつの恋愛の愚痴かよ!」
「お前は、いつも俺に彼女の愚痴言うけど、俺じゃ、どうにも出来ないだろう?」

酒を皆で軽く1杯飲んですぐに、友人の1人は、毎度の彼女の愚痴であった。
それに別の友人とラリイが対応するが、毎度の事なので、呆れながら対応する。
どういうわけか、その手の話をラリイに聞いて貰いたがる友人が多いのだ。
こっちは独り身だと言うのに。

「そーいや、ラリイが雨の日に助けた、噂の美人は、結局はどっちなんだ?」
「ぶっ!!!な、なんだ、それ?!」

ラリイは更に別の友人から、こんなことを言われ、思わず酒を
吹き出しそうになる。
その友人が、怪しそうな顔をして、更にラリイに聞く。

「なんだよ?知らないのか?めっちゃ噂されてんぞ?あのラリイが、
雨の中で美人を助けて、それから仲良く暮らしてるって。
で、結局どっちなんだよ?女なんだろ?」

友人一同が、じーっとラリイを見る。ラリイはこの時に悟った。
今日はこの話が聞きたくて、友人達は自分を酒に誘ったのだと。
ラリイは、深い溜息をついて、素直に答える。

「お前らが何を期待してるか、知らないけどな。残念だけど。
あいつは「男」だからな?」
「なんだよー」
「マジかよー」
「ちぇー」

露骨に残念がる友人達に、ラリイは呆れるしかない。
どうして、男と言うのは、そういう噂に弱いのか。
ま、ラリイも自分が逆の立場なら同じことをしないとは言い切れないが。

「ラリイの家でチラッと見たことがある奴が、すげぇー綺麗な人だから、
あれは確実に女だぜ!って言ってたのによー騙されたわー」
「あのなー勝手に人の友人を、女にして、期待したり、残念がったりするな!」

ラリイは友人達に変な噂を立てられていることを知り、怒る。
フェニが他の人にそんな風に見られていたとは知らなかった。

「ならさー今度、紹介しろよな!」
「そうだーそうだ!ラリイの話だけじゃ、信じられないぜ!」
「女なのをわざと隠してるかもしれないしな!」

友人達に今度はそう言われ、ラリイは辟易するしかなかった。
そして、なんだかんだと付き合わされ、ラリイも、
すっかりと酔っぱらってしまった。

「あいつら・・・ひっく・・・好き放題言いやがって・・・
俺だって・・・彼女くらい・・・ひっく・・・欲しいわ・・・」

ラリイは目が据わった状態で何とか、家に帰ってきた。
フェニと食べようと思っていた夕食の時間はとうに過ぎていた。
ラリイが帰ってくると、フェニは心配そうな顔で出迎えた。

「どうしたんだ?今日は何かあったのか?ラリイ?」
「ん・・・ちょっと付き合いで・・・ひっくぅ・・・」
「?」

フェニックスは、今まで見たことがない、ラリイの状態に、キョトンとした顔になる。
酔っ払いを初めて見たのだ。
そんなフェニの顔がラリイは面白くなり、ラリイはフェニに近づいて、
おもむろにフェニの胸の辺りを触る。

「何をしてるんだ?ラリイ?」

フェニックスはラリイに意味不明な行動をされ、困惑する。
ラリイは真剣な顔で、フェニに尋ねる。

「あ・・・いや・・・フェニは・・・ひっく・・・男だよな?」
「は?」
「いやさ・・・ひっ・・・今日、友人達にさ・・・俺に彼女出来たとか・・・
ひっく、うるさく言われてさ・・・それがお前だって言うんだ。」
「何の話だ?」

フェニックスには、ラリイの話の脈略が全くわからなかった。
酔っている所為で余計に会話がわからない。
しかも、酔っぱらっているのもあり、酒臭い。
流石のフェニックスも、今日のラリイの臭いには耐えられそうにない。

「ラリイ!いい加減にしろ!目を覚ませ!!」

今だに自分の身体をぺたぺたと触ってくるラリイに、フェニックスは怒った。
そして、ラリイと距離をとった。フェニックスは基本は雄としているが、
本人が望めば、雌にもなれる。それは自分と深い関わりのある、
名もなき生命の精霊によるものなのだが、どういう原理かは
本人もうまく説明は出来ない。
なので、今は男としているが、やっぱり不必要に触られるのは抵抗がある。
しかも、今日のラリイはどこかおかしい。

「あ・・・悪い・・・ごめん。フェニ・・・」

フェニに怒られ、ラリイは悲しそうな顔をしつつ、フェニに謝罪し、
そのまま椅子に座ったかと思ったら、テーブルに突っ伏して
寝てしまった。

「やれやら、この調子だと、今日の夕食は無しか・・・」

フェニックスはそんなラリイに呆れながら、台所にあった、
パンと果物を食べて、今日の夕食は済ませた。
次の日、二日酔いで苦しむラリイに、しつこく昨日の無礼を
ネチネチ言い、何度もラリイに謝罪させ、やっと許すことになる。
ラリイは誓った。二度とフェニの前では酔うまいと。

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