前編
ぎこちない1匹の幻獣と1人の人間の共同生活が始まり、1週間は過ぎた。
フェニックスは、人間の生活の知識は、少しはあったものの、
どうしても時々、不自然な回答をしたりしてしまうことがあったが、
ラリイは何も気にする様子もなく、フェニックスがわからない事には、
笑顔で丁寧に答えた。
フェニックスが偉そうにしたり、不愛想にしたりしてもだ。
そんなラリイの態度に、大の人間嫌いのフェニックスも、徐々に気を許していた。
フェニックスは、今まで、ラリイの様な人間に会ったことがなかった。
いつも、幻獣である自分を戦争に利用する為に、捕らえようとする悪い人間しか知らなかった。
この頃のエンガイスと言う世界での人間界は、剣、魔法だけでなく、
幻獣も支配下に置いて、戦争するのが当たり前だった。
どの国でも、有名な幻獣を欲しがり、捕まえようと躍起になり、
一部の幻獣は人間達に酷い目に遭わされていた。
戦いに利用するだけして、用が無くなれば、さっさと信頼を裏切り、捨てる。
フェニックスも一部の幻獣が、そうした目に遭っていたのは知っていた。
だから、余計に人間など、信頼もしないし、興味もなく、むしろ大嫌いだったのだ。
ラリイと出会い、助けられるまでは。
「フェニ。今日は一緒に俺の家の近くの森で、薬草摘みに行かないか?」
「薬草を?」
「うん。今日は天気がいいし、家の中で、だた寝ているのつまらないだろうと思ってさ。
それに、フェニの背中の傷も大分良いみたいだし。
気分転換と言うか・・・どうかな?」
ラリイは少しだけ恥ずかしそうにフェニックスに聞いた。
フェニックスの傷は、実はもうこの1週間で完全に完治していたのだが、
あえて傷口を残したままの状態にしていた。
あの背中の傷が癒えるのに、普通の人間で、1週間では早すぎると思ったからだ。
折角、良い隠れ蓑が出来たと思ったのに、怪しまれて追い出されたりするのは
得策ではないとフェニックスは考えた。
それにラリイと言う人物は、自分に何の疑いも、持ってないようだったから、
尚更、都合も良かった。
だがら、しばらくはここに居たいと思っていた。
バハムートが自分を諦めそうになるまで。
「ああ。私で役に立つかは、知らんが。付き合おう。」
「本当か!そうか、良かった!」
フェニックスは無表情で答えたが、ラリイは嬉しそうにした。
何でいつも、ラリイはこんなに自分に好意的なのか、
フェニックスにはさっぱりわからなかった。
「これが、主に回復薬でも使われる薬草で、こっちが毒消し草で、
こっちはこんな色してるけど、食べれる草なんだ。
今度、これでスープ作るからな!体の免疫を高めるんだ。」
ラリイは陽気に、色々な草を取っては、フェニックスに説明する。
フェニックスも、関心を寄せて聞いていた。
フェニックスも草を食べたりすることはあるが、決まったものしか口にしないし、
何より、フェニックスにそもそも薬草などは必要ではなかった。
だから、人間界にある、様々な薬草をラリイから聞いて、少し興味が出て来た。
フェニックスが真面目に黙って聞いていると、ラリイが急に
気まずそうにする。
「あ、悪い。俺ばっかり、こんな喋って。面白くないよな。
こんな話。あはは、迷惑だったら、言ってくれ。
後、もう少しで終わるからさ。」
ラリイはフェニックスが黙って聞いているので、無理に
付き合わせていると思い込んでいるらしい。
フェニックスは、それに気づいて、ラリイに言う。
「いや、楽しく聞いている。もっと教えて欲しいくらいだ。」
「ほ、本当か?でも、無理して聞いてくれなくてもいいんだぞ?」
「無理などしていない。お前の話は嫌いではない。」
フェニックスにそう言われて、ラリイはまた笑顔に戻る。
「そうか。良かったよ。無理矢理、俺の話に付き合せてると
思ったからさ。だって、フェニはいつも無表情だから、
俺みたいな単純な男には、わかりづらくて。あはは。」
ラリイは苦笑いしながら、フェニックスをちらりと見て言った。
フェニックスは、一瞬だけ驚いた顔をしたが、少しだけ微笑み、
ラリイに答えた。
「すまない。私は感情を表すのは得意じゃなくて。誤解させたのなら、許して欲しい。」
「あ、いやいや!そんな!俺が勝手に勘違いしただけだから!
そんな謝らないでくれ!」
フェニックスの謝罪に、今度は慌ててラリイが両手を横に振りながら返事をする。
それを見たフェニックスは、そんなラリイの態度が面白くて、笑う。
「お前は変わった人間だな。」
「そうか?よく、知り合いにはお人よしの馬鹿って言われるけどな。」
笑ったフェニックスに、ラリイも笑って返す。
1匹と1人の間には、少しずつではあったが、信頼が出来つつあった。
この出来事をきっかけにして、フェニックスもラリイとの会話を、
積極的にするようになった。
ラリイ以外との人間と出会った時に、不自然に思われないように
する為の狙いもあったが。
「そろそろ、俺もまた城に行って、仕事して来ないとだなぁ・・・」
ラリイはフェニックスの看病をして、2週間が過ぎたあたりで、
そう呟いた。
「仕事?ラリイは城で働いていたのか?」
その呟きを聞いて、フェニックスが反応する。
ラリイはフェニックスにこう聞かれて答える。
「ああ、まぁ、城勤めと言っても、治療を専門に行う、下っ端の兵士だけどな。
いざって時は戦うけど、それ以外は、基本俺は戦うの苦手だから、
治療させて貰ってるんだ。」
「なるほど、だから、薬草に詳しかったのか?」
「うん。そんなとこかな?後、俺は家柄って言う、ラッキーな立場もあるけど。」
「?」
フェニックスは最後に言ったラリイの言葉は理解出来なかった。
不思議そうにするフェニックスに、ラリイは苦笑いで言う。
「ああ、気にしないでくれ。またいつか、フェニには話すよ。」
「そうか。ならいいが。」
フェニックスはラリイにそう言われてしまったので、深くは聞かないことにした。
ラリイは自分の聞かれたくない話は無理に聞かないでくれて
いるのだから、同じようにするのは当たり前だとフェニックスは
思ったからだ。
「明日から、俺、数日、家を空けることになるけど、フェニは大丈夫か?」
「ああ、傷も、かなり良くなったし、食事もラリイに教わって、
簡単なモノなら作れるし、平気だ。むしろ、そろそろ、
私がこの家を出ていくべきだな。」
フェニックスはラリイに、申し訳なさそう顔で告げた。
ここ2週間、世話になりっぱなしで、何もお礼らしいことはしていなかった。
なのに、ラリイは嫌な顔せずに、フェニックスに相も変わらず、
良くしてくれていた。
フェニックスは、最初はラリイを良い様に利用したら、
さっさと無言で去ってやろうとさえ、始めは考えていたのに。
この生活に、心地良さを感じる自分がいたことに驚いていた。
気づけば、そんなにもラリイと言う人間に興味が出たと
言うことだろうか?
「そんな!フェニが良ければ、まだまだ居てくれていいよ!
むしろ、俺が帰って来るまでは、留守番して欲しいくらいだ。
こんな家なんだけどさ。」
「何を言う。良い家だぞ?ここは。」
「そうか?何もない平凡な家だけど。」
「だから、良いと思う。ここは私には落ち着く。
ラリイの役に立つのなら、留守番することも造作もない。」
「フェニ・・・有り難うな!」
フェニがまだ残ってくれて、留守番を引き受けてくれたことに、
ラリイは安堵する。
ラリイもまた、新しく出来たフェニと言う友人と、もう少し一緒に居たいと思っていたからだ。
フェニックスは、人間の生活の知識は、少しはあったものの、
どうしても時々、不自然な回答をしたりしてしまうことがあったが、
ラリイは何も気にする様子もなく、フェニックスがわからない事には、
笑顔で丁寧に答えた。
フェニックスが偉そうにしたり、不愛想にしたりしてもだ。
そんなラリイの態度に、大の人間嫌いのフェニックスも、徐々に気を許していた。
フェニックスは、今まで、ラリイの様な人間に会ったことがなかった。
いつも、幻獣である自分を戦争に利用する為に、捕らえようとする悪い人間しか知らなかった。
この頃のエンガイスと言う世界での人間界は、剣、魔法だけでなく、
幻獣も支配下に置いて、戦争するのが当たり前だった。
どの国でも、有名な幻獣を欲しがり、捕まえようと躍起になり、
一部の幻獣は人間達に酷い目に遭わされていた。
戦いに利用するだけして、用が無くなれば、さっさと信頼を裏切り、捨てる。
フェニックスも一部の幻獣が、そうした目に遭っていたのは知っていた。
だから、余計に人間など、信頼もしないし、興味もなく、むしろ大嫌いだったのだ。
ラリイと出会い、助けられるまでは。
「フェニ。今日は一緒に俺の家の近くの森で、薬草摘みに行かないか?」
「薬草を?」
「うん。今日は天気がいいし、家の中で、だた寝ているのつまらないだろうと思ってさ。
それに、フェニの背中の傷も大分良いみたいだし。
気分転換と言うか・・・どうかな?」
ラリイは少しだけ恥ずかしそうにフェニックスに聞いた。
フェニックスの傷は、実はもうこの1週間で完全に完治していたのだが、
あえて傷口を残したままの状態にしていた。
あの背中の傷が癒えるのに、普通の人間で、1週間では早すぎると思ったからだ。
折角、良い隠れ蓑が出来たと思ったのに、怪しまれて追い出されたりするのは
得策ではないとフェニックスは考えた。
それにラリイと言う人物は、自分に何の疑いも、持ってないようだったから、
尚更、都合も良かった。
だがら、しばらくはここに居たいと思っていた。
バハムートが自分を諦めそうになるまで。
「ああ。私で役に立つかは、知らんが。付き合おう。」
「本当か!そうか、良かった!」
フェニックスは無表情で答えたが、ラリイは嬉しそうにした。
何でいつも、ラリイはこんなに自分に好意的なのか、
フェニックスにはさっぱりわからなかった。
「これが、主に回復薬でも使われる薬草で、こっちが毒消し草で、
こっちはこんな色してるけど、食べれる草なんだ。
今度、これでスープ作るからな!体の免疫を高めるんだ。」
ラリイは陽気に、色々な草を取っては、フェニックスに説明する。
フェニックスも、関心を寄せて聞いていた。
フェニックスも草を食べたりすることはあるが、決まったものしか口にしないし、
何より、フェニックスにそもそも薬草などは必要ではなかった。
だから、人間界にある、様々な薬草をラリイから聞いて、少し興味が出て来た。
フェニックスが真面目に黙って聞いていると、ラリイが急に
気まずそうにする。
「あ、悪い。俺ばっかり、こんな喋って。面白くないよな。
こんな話。あはは、迷惑だったら、言ってくれ。
後、もう少しで終わるからさ。」
ラリイはフェニックスが黙って聞いているので、無理に
付き合わせていると思い込んでいるらしい。
フェニックスは、それに気づいて、ラリイに言う。
「いや、楽しく聞いている。もっと教えて欲しいくらいだ。」
「ほ、本当か?でも、無理して聞いてくれなくてもいいんだぞ?」
「無理などしていない。お前の話は嫌いではない。」
フェニックスにそう言われて、ラリイはまた笑顔に戻る。
「そうか。良かったよ。無理矢理、俺の話に付き合せてると
思ったからさ。だって、フェニはいつも無表情だから、
俺みたいな単純な男には、わかりづらくて。あはは。」
ラリイは苦笑いしながら、フェニックスをちらりと見て言った。
フェニックスは、一瞬だけ驚いた顔をしたが、少しだけ微笑み、
ラリイに答えた。
「すまない。私は感情を表すのは得意じゃなくて。誤解させたのなら、許して欲しい。」
「あ、いやいや!そんな!俺が勝手に勘違いしただけだから!
そんな謝らないでくれ!」
フェニックスの謝罪に、今度は慌ててラリイが両手を横に振りながら返事をする。
それを見たフェニックスは、そんなラリイの態度が面白くて、笑う。
「お前は変わった人間だな。」
「そうか?よく、知り合いにはお人よしの馬鹿って言われるけどな。」
笑ったフェニックスに、ラリイも笑って返す。
1匹と1人の間には、少しずつではあったが、信頼が出来つつあった。
この出来事をきっかけにして、フェニックスもラリイとの会話を、
積極的にするようになった。
ラリイ以外との人間と出会った時に、不自然に思われないように
する為の狙いもあったが。
「そろそろ、俺もまた城に行って、仕事して来ないとだなぁ・・・」
ラリイはフェニックスの看病をして、2週間が過ぎたあたりで、
そう呟いた。
「仕事?ラリイは城で働いていたのか?」
その呟きを聞いて、フェニックスが反応する。
ラリイはフェニックスにこう聞かれて答える。
「ああ、まぁ、城勤めと言っても、治療を専門に行う、下っ端の兵士だけどな。
いざって時は戦うけど、それ以外は、基本俺は戦うの苦手だから、
治療させて貰ってるんだ。」
「なるほど、だから、薬草に詳しかったのか?」
「うん。そんなとこかな?後、俺は家柄って言う、ラッキーな立場もあるけど。」
「?」
フェニックスは最後に言ったラリイの言葉は理解出来なかった。
不思議そうにするフェニックスに、ラリイは苦笑いで言う。
「ああ、気にしないでくれ。またいつか、フェニには話すよ。」
「そうか。ならいいが。」
フェニックスはラリイにそう言われてしまったので、深くは聞かないことにした。
ラリイは自分の聞かれたくない話は無理に聞かないでくれて
いるのだから、同じようにするのは当たり前だとフェニックスは
思ったからだ。
「明日から、俺、数日、家を空けることになるけど、フェニは大丈夫か?」
「ああ、傷も、かなり良くなったし、食事もラリイに教わって、
簡単なモノなら作れるし、平気だ。むしろ、そろそろ、
私がこの家を出ていくべきだな。」
フェニックスはラリイに、申し訳なさそう顔で告げた。
ここ2週間、世話になりっぱなしで、何もお礼らしいことはしていなかった。
なのに、ラリイは嫌な顔せずに、フェニックスに相も変わらず、
良くしてくれていた。
フェニックスは、最初はラリイを良い様に利用したら、
さっさと無言で去ってやろうとさえ、始めは考えていたのに。
この生活に、心地良さを感じる自分がいたことに驚いていた。
気づけば、そんなにもラリイと言う人間に興味が出たと
言うことだろうか?
「そんな!フェニが良ければ、まだまだ居てくれていいよ!
むしろ、俺が帰って来るまでは、留守番して欲しいくらいだ。
こんな家なんだけどさ。」
「何を言う。良い家だぞ?ここは。」
「そうか?何もない平凡な家だけど。」
「だから、良いと思う。ここは私には落ち着く。
ラリイの役に立つのなら、留守番することも造作もない。」
「フェニ・・・有り難うな!」
フェニがまだ残ってくれて、留守番を引き受けてくれたことに、
ラリイは安堵する。
ラリイもまた、新しく出来たフェニと言う友人と、もう少し一緒に居たいと思っていたからだ。