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番外編

ラリイは悩んでいた。今日の夕食を。
フェニも、大分生活に慣れて、日々の警戒心もなくして、
ラリイにわからないことは気軽に聞いてくるようになった。
最初は食事も、ぎこちなくしている感じがあったが、
今は、打ち解けてる気がする。
フェニの表情が柔らかくなったのは、毎日見てるラリイだからこそ、
分かったものだ。
だから、ラリイも嬉しくなって、つい聞いてしまう。

「フェニ、夕食は何が食べたい?」
「ん?何とは?」

そう、ラリイはフェニにメニュー的なことを聞いてしまう。
だが、フェニはそう聞かれても答えられない。
人間の食べる食事に、名前があることを、この時はまだ
よく知らなかったからだ。
のちにラリイの家にあった、料理本から学んで、気軽に言うようになるが。それはまだ先の話。

「あ、ええっと、そうだなー魚使った奴とか、肉のとか・・・そういう・・・」
「うーん・・・」

ラリイの説明を聞いても、フェニは困惑する。
前にも同じようなことをしてしまったのに。ラリイは後悔する。

「あ、フェニはさ、辛いの苦手か?」
「辛い・・・?試したことがないから、わからない。」
「そうか、なら、試しにちょっと甘めのカレーにしてみるか。」
「カレー?」

フェニは聞いたことがない単語に不思議がる。
ラリイは、そんなフェニに微笑みながらも、家にある材料で、
パパッとカレーを作り、フェニの前に置いた。

「本当は、俺的には明日の方が具材が煮込まれて、
お薦めなんだけど、今日はフェニは初めてだし、
蜂蜜とかも入れてみたから、激辛ってことはないと思うけど、
とりあえず、食べてみてくれ。」
「わ・・・わかった・・・」

何かの煮込み料理なのだろうと言う事はフェニックスにも分かった。
だが、今までに嗅いだことがない匂いで、戸惑う。
香草は嫌いではない。フェニックスにとって、香草は物によって
縁が深いものがある。
だが、ブレンドされたものは、初めてであった。

(わからんが、今までに、ラリイが出したもので、
食べれなかったものはない。信じて食べてみるか。)

フェニックスは意を決して、使えるようになったスプーンで、
カレーと言う食べ物を食べる。

「?!!!!」

フェニックスは、目を丸くして、カレーと言う食べ物を再度見る。
自然界には、まず無い味だ。フェニックスはそう思った。
少なくとも、こんな味のするものを、今まで食べたことがない。
芳醇な香りと、蜂蜜によるほど良い辛さ、野菜の旨味に、
豚肉の肉の臭みも消え、食べやすい。
そして、香辛料が食欲も、いい感じに刺激する。
フェニックスは、カレーと言うメニューに感動すら覚えた。
もちろん、ラリイは他にだって、食事は作ってはいたが、
今日のカレーほど、フェニックスが興味を持ったものはない。
驚く顔から、急に嬉しそうにして、また食べ始めるフェニに、
ラリイは何故か、可愛さを感じてしまった。
まるで、子供の様に無邪気だったから。

「ど、どうだ?美味しいか?」
「美味い!初めて、食べたが、こんなに美味しいものは初めてだ!」
「そ、そうか・・・そんなに気に入ったんなら良かった。」

ラリイ的には嬉しい反面、複雑な気分でもあった。
他の料理だって、それなりに気を使って、気合を入れてきた
つもりだが、この調子だとカレーが一番美味いと言う事になるのだろう。

「うむ・・・フェニが喜んで今食べてるなら、それでいいけど。
俺はちょっと複雑だな・・・」
「うん?何か言ったか?」
「ん?いや、何でもないよ。フェニ、おかわりまだあるぞ?」
「ぜひ、貰おう!」
「あはは。はいはい、いっぱい食べろ!」

けど、ラリイはやっぱり嬉しかった。フェニの好物が1つ、
今日見つかったことが。
それにカレーがこんなに好きなら、アレンジもしやすい。

(今度はきのこカレーにするか?それとも海鮮?
ま、慌てることないか。フェニはまだ居てくれそうだからな。)

ラリイは、カレーを食べ、今までに見たことがないフェニの
喜んでいる顔を見ながら、自分も食事を始めるのだった。

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