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後編

時は幻歴1500年を刻んだ年。一人の赤ん坊が、真紅の炎の中で、産声を上げた。
その赤ん坊を大事そうに抱いたのは、幻獣王に仕える、三大重臣の1体であるフェニックスであった。
フェニックスに抱かれた赤ん坊は、嬉しそうにフェニックスを
顔を見て、キャッキャと無邪気に笑う。

「私がわかるんですね・・・ラリイ。
今日をもって、貴方は私の息子になりました。
前世の貴方も、きっと喜んでくれていることでしょう。
私は嬉しい限りですよ・・・ラリイ。」

フェニックスは、感極まって、思わず力強く、赤ん坊のラリイを、
抱きしめてしまった。
ラリイは、それに驚き、今度は元気よく泣き出してしまう。
フェニックスは慌てて、ラリイをあやし、愛しそうに見守る。
幻歴1500年。
それは、幻獣バハムートが、フェニックスや多くの幻獣達と
異空間に幻獣界を作り、幻獣達の為に幻獣国を作りあげ、
やっと、平和になった年であった。
フェニックスは、それまでラリイの身体を大事に保管し、
長年だった親友の願いを、ようやく叶えることが出来た年でもあった。
転生させるのなら、平和な時代の方が良いに決まっている。
前世のラリイが亡くなってすぐに、フェニックスは、
バハムートの誘いを受け、幻獣界を作ることに賛同した。
が、バハムートに従うかわりに、ある要求をした。

「人間界に関わることは禁止しないで欲しい。」と。

バハムートは、最初は否定的であった。
フェニックスが人間と短い期間暮らしたのは知っていたが、
それだけで人間の評価を変えるのは、危ないだろうと諭しもした。
だが、フェニックスはその要求だけは絶対に譲らなかった。
でなければ、どのみち、フェニックスはラリイと
また暮らせなくなってしまうと言うのもあったのだ。
転生させるとは言え、今度、生まれ変わるラリイは、半分は幻獣で、
半分は人間なのだから。
人間界を拒否することは、新しい自分の息子への拒否にもなってしまう。
それだけはフェニックスは避けなければならなかった。
結局、バハムートはフェニックスのその要求は飲んだ。
それから、フェニックスを仲間に加えた、バハムート勢の勢いは
凄まじいものだった。
戦いにしろ、話し合いにしろ、フェニックスの活躍は、目まぐるしく、
バハムートの支えにして、最高のパートナーになったのは言うまでもない。
知略においても、フェニックスはいい活躍をした。
幻獣界の誕生は、バハムートが思っているよりも早く達成出来た。
そして、人間の真似事に近くなってしまったが、幻獣国を
作ろうと言い出したのはフェニックスである。
幻獣界をただ作っただけでは、治まりがつかないだろうと言ったのだ。
絶対的な支配者がいるからこそ、無用な戦いはなくなる。
フェニックスは人間界で学んだ悪い部分を反面教師にして、
幻獣界では、そうした同族同士の争いはしないようにしたかったのだ。
バハムートも、人間界で同族同士が戦わされていたことには
胸を痛めていたので、フェニックスの意見をすぐに聞いた。
バハムート勢の説得に人間界に居た、多く幻獣達も賛同する。
しかし、中には人間界留まる物好きもいた。
フェニックスの様に、人間や他種族に好意を持つ幻獣も
いなくはなかったのだ。
古い時代から鳥人族を守る、グリフィンや、海の守護者にして、
人魚族の長もしているビスマルクなどは、多かれ少なかれ、
人間との関りがあったので、人間に対しては友好的であった。
そうして、様々なことがあって、今日に至る。

「あうあう!きゃああうう!きゃあう♪」

幻獣人として生まれ変わったラリイは、親であるフェニックスに、
何かを話しかけるように、太陽のような笑顔で微笑む。
フェニックスの顔も、そのラリイの笑顔で破顔になる。
人間が大の大嫌いだった、あの頃の冷たいフェニックスはもういない。
もちろん、人間のすべてを愛してるとは言わない。
だが、フェニックスはあの時のラリイのおかげで知ることが出来たのだ。
人間の中にも、愛しいと思える存在はいるのだと。
フェニックスと同じように人間に友好的な幻獣達には、
同じようなものを感じたものが居たのだろう。
お互いに蔑み、憎み、嫌うのは簡単だ。
存在を認め合い、無駄に争わなければいいだけことを、
人間だけでなく、幻獣からも出来たらいいなと、フェニックスは、
いつからか考えるようになっていた。
あの頃のラリイが聞いたら、どんな返事をくれるだろうか?

「フェニは変わったな!」

きっと、そんな風に言うのではないだろうか・・・。
あの陽だまり様な、暖かい心地よい笑顔で。
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