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後編

ラリイ達は、自宅に無事戻ってきていた。
幸い、ウロヴォロの屋敷から、追手が来てる様子もなかった。
ラリイ達は大した騒ぎにもならずに、脱出に成功した。

「良かった・・・本当に・・・」

ラリイは、また感極まって、フェニを抱きしめていた。
無事に親友を取り戻せて、ラリイはやっと生きた心地になった。
もし、あのまま、フェニがあんなウロヴォロなんかに、いい様に
利用されていたらと思うと、虫唾が走る。
ラリイはそう考えると、今度は少し、フェニに対して、
イライラした気分になった。

「全く!フェニは馬鹿だ!大馬鹿だ!こんな俺の為に、あんな
ウロヴォロの策にハマるなんて!俺がそれで助かったって、
俺は喜ばないって、絶対にわかったくせに!!!」

ラリイは泣きながら怒って、抱きしめたフェニに言う。
フェニックスも、苦笑いしつつ、反省していた。
遅かれ早かれ、この親友は絶対に自分を助けに来るだろうと、
予測出来ていたのに・・・どんな危険な目に遭おうとも。
フェニックスはラリイから身体を離し、ラリイの顔をしっかり見ながら、答える。

「ラリイ・・・すまない。でも、私はラリイを大罪人にさせたくなかったんだ。」
「大罪人?ウロヴォロがそう言ったのか?」
「ああ。お前に私を逃した罪を着せて、大罪人にして、処刑させると・・・」
「そんな事言って・・・フェニを脅したのか・・・あいつ・・・」

ラリイは奥歯をきつく噛みしめ、ウロヴォロに憎しみを募らせた。
だが、冷静に考えて、あのウロヴォロにそんな権限はないだろう
とラリイは思った。
もう今はフェニックスはあの男の手にはない。
王の方にも、ウロヴォロは連絡出来なかっただろう。
それに大騒ぎにならずにフェニックスを救い出せたのだから、
余程の証拠がない限りは、ラリイがそんなことをしたとは
誰も思わない気がする。
今のラリイは戦いが苦手で、度胸もない、落ちぶれた男として有名なのだから。

「にしても、フェニ・・・大丈夫か?あの男に酷い事されなかったか?」
「ああ、大丈夫だよ。ラリイがあんなに早くに助けに来てくれたからな。」
「そうか・・・でも、一応、魔力が回復する薬草で作った、
丸薬あるから、すぐに飲んでくれ!持ってくるから!」
「あ、ラリイ。」
「うん?どうした?」

フェニックスは最後の我が儘のつもりで、あるお願いもする。

「ラリイが最初に作ってくれたカレーも食べたい・・・」

ラリイは、フェニのその言葉に爆笑する。
こんな状態で、最後までカレーを食べたがるフェニに、
ラリイは一気に緊張感が解けてしまう。そんなフェニにラリイは笑顔で告げる。

「なんか、昨日、フェニがカレー食べたがる気がしてたから、
作り置きしておいた。それも温めてくるな?」
「ふっ。流石ラリイだな。」

フェニックスも、ラリイの勘につい笑顔になる。
フェニックスとラリイは手短に一緒に食事を済ませ、
いつでも行動出来るようにして、家に居た。

「フェニ・・・あ、今更だけど、フェニックス様って呼んだ方が
いいかな?」

ラリイは、本当に今更ながらに、フェニに確認をする。
フェニックスは呆れたようにして、ラリイを見る。

「そんな呼び方をラリイにはして欲しくない。ラリイと私は親友なのだろう?
なら、今のままでいい。」
「そっか。そうだよな。俺とお前は親友だもんな!」

ラリイは心から嬉しそうに言う。フェニとは親友だと。
心の中で再度、確認する。

「それにしても、フェニは今後、どーするんだ?こうなってしまったら、
フェニは、どこかに帰るのか?」
「そうだな・・・人間界ではない、別の異空間に帰る。」
「そ、そんな場所があるのか?」
「うん。そこは人間は出入り出来ない。我々の様な存在でないと。」
「そうか、なら、安全だな。もうフェニが捕まるとこなんて、
俺は二度と見たくないよ。」
「ラリイ・・・。だけど、私はいいが、ラリイは・・・。」
「心配することはないよ。あのウロヴォロは、いくら実力が
あるって言っても、ただの召喚士。はっきり言えば、身分的には
俺には勝てないし、俺には強い味方もいる。」
「?」

ラリイの言葉にフェニックスは首を傾げる。
身分的に勝てないとは?強い味方とは?
フェニックスには知らないことだった。
ラリイは少し申し訳なさそうな顔をして、フェニに言う。

「フェニ、今まで言わないで、ごめん。あのエナって子は、実はこの国の姫、
エスカティーナ姫様だったんだ。
それで俺は、その姫様を護衛する精鋭騎士であり、相談役って
言うのが本当の仕事なんだ。」
「そうか・・・なんか、実はそんな気がしていたよ。ラリイが
ただの兵士なわけがないってな。」
「そっか。まぁ、フェニは、変なところでいつも鋭いもんな。」
「そうか?ラリイが、お人よし過ぎて鈍感なのでは?」

フェニックスはラリイに、いつもの様に少し意地悪っぽく言う。
最初の頃のぎこちない会話の雰囲気はどこにもない。
お互いが冗談など気軽に言える仲に、しっかりなっている。

「こんな時でも、フェニは酷い冗談言うなぁ。あはは。
けどさ、あのウロヴォロは、人望はない気がするんだ。
あいつ、性格絶対に悪そうだしさ。そこを上手く利用すれば、
今回のこの騒ぎも、どうにか出来そうな気するんだ。」
「うむ。確かにあの男は性格悪かった。それは私も思った。」
「だろ?なら、どうにかなるさ!
だから・・・フェニ・・・安心して・・・帰っていいよ。」

ラリイは、最後の言葉を何とか言い、大粒の涙を流しながらも、
フェニに微笑んでいた。
大事で大好きな親友と、別れなければならない時が来たのだと、
ラリイも感じていた。
フェニックスは、そんなラリイに今度は自分から抱きしめた。

「有り難う・・・私の初めての人の友・・・いや親友。
私はこの日々を絶対に忘れない。ラリイと言う存在を・・・。」
「フェニ・・・俺も忘れないよ。お前の事・・・」

フェニックスとラリイは互いの存在を、最後にしっかりと確認し合う。
そして、フェニックスはラリイと別れた。
すぐにその場から飛び立たずに、フェニックスはラリイの家から、
遠く離れた場所で、元の姿に戻り、人目をなるべく避けて飛び立った。異空間に。
その後、ラリイの考えていた通り、ウロヴォロは、王にラリイが
フェニックスを逃した、一緒に暮らしていたのがフェニックスで
あったなどを報告したが、王は取り合いはしなかった。
それどころか、エナに、フェニはラリイにとって大事な友人なのに、
なんてことを言うのだと、怒ってくれたほどだ。
おかげで、ラリイは大罪人になるどころか、ウロヴォロは欲に
目がくらんでおかしくなったと、ウロヴォロの方が不利な結果で終わった。
ラリイはもういない親友に、心の中で告げた。
ほら?大丈夫だっただろう?と。

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