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中編

「どこに行こうと?まだ私の話は終わっておりませんよ?」
「こんな、ふざけた話はもう結構だ。俺の大事な親友を
つかまえて、幻獣だなんだって、馬鹿にするのもいい加減にしろ。」

ラリイは、ウロヴォロを睨みながら、そう言った。
何故か、同時に悔しい気持ちにもなる。
フェニ自身の事は、フェニから直接聞きたかった。
こんな、ウロヴォロなどと言う人間からではなく。
だが、ウロヴォロも引き下がりはしない。
自分の未来が、野望が掛かっているのだから。

「ラリイ様。私は馬鹿になどしておりません。真面目に話しております。
ラリイ様の今後の行動次第で、今のこのフェロニアを救えるのですよ?
あのフェニックスを私と一緒に捕らえ、使役出来れば、貴方も英雄になれましょう!
この国を救ったと者として!貴方の過去の失態だって、すぐに取り返せる!
何が不満でしょうか?」

ラリイはウロヴォロの話を聞いて、更に気分が悪くなった。
自分の過去の事まで知っていたのかと。
ラリイは、ますますウロヴォロと言う人間が信じられなくなった。
それに、今更、ラリイはまた、栄光や名誉に興味などない。
その為に大事な親友を差し出すくらいなら、今度こそ、
処刑された方が良いとさえ思った。

「お前が、俺に何を期待して、こんな話をし出したのかは、わからない。
だが、俺はもうお前の話に付き合う気はない。俺は帰る。」

ラリイは、ウロヴォロに背を向けて、今度こそ、立ち去ろうとした、その時。

「そうはいきませんよ。貴方には、フェニックスを呼び出す、
呼び餌になって頂きます。」

そう聞こえたと思った同時に、ラリイは意識を失った。
ラリイは油断してしまっていた。
ウロヴォロから、突然、魔法で攻撃されたのだ。

「本当に馬鹿な男ですね。たかが、幻獣の為に、自分の地位を、
捨てるなんて。
所詮は、貴族のお坊ちゃまには、何もわからないか。この事の重大さが。」

ウロヴォロは、ラリイを愚かで哀れな存在でも見るかに様に見下していた。
内心では、馬鹿にしていたのだ。幻獣と一緒に暮らしていたラリイを。

「さて、さっさと逃げられる前に、この男を使って、呼び出せるか試してみるか。
一緒に暮らしてたほどだ。きっと助けには来るはずだ。」

ウロヴォロは、自分の計画が上手く進むように、慎重に行動し始めた。
ラリイは、ウロヴォロの使い魔のラビット族に両手、両足を
縛られ、隠し部屋に閉じ込められてしまった。

「ラリイ・・・大丈夫だろうか・・・」

フェニックスは、帰りが遅いラリイを心配しているところだった。
城に泊まるなどの話は聞いていなかったので、今日中には、帰ってくるだろうと
思っていたが、ラリイは夜中になっても、帰ってこない。
戦争が本当に間近に迫っているのなら、ラリイに急用が出来て、
帰ってこれないとして、おかしくはないのだが、それでも、
フェニックスは、嫌な予感がしてならなかった。
そして、それは的中してしまう。

「ラリイは私が預かっている。返して欲しければ、我が屋敷に来い。この蝶が案内をする。」

あのフェニックス達の後をつけ、監視していた、黒い蝶は、
フェニックスの前に現れると、ウロヴォロの言葉を伝えた。
やはり監視されていたのかと、フェニックスは苦い顔をした。

「わかった。お前の指示に従おう。だが、ラリイにもし何か危害を加えたら、私はお前を絶対に許さない。」

フェニックスは、久しぶりに隠していた、幻獣としての本性を
現して、ウロヴォロの使い魔の黒い蝶を睨んだ。
それを使い魔を通して、水晶で見ていたウロヴォロが、
一瞬だけたじろいだ。思った以上の剣幕だったからだ。

「ふはは。まさか、こうも順調にいくとはな。あのラリイと言う男は、
思ったよりも凄い奴なのかもしれないな。
あのフェニックスに、ここまで気に入られているとはな。」

ウロヴォロは、興奮した顔で、フェニックスが自分の屋敷に
来るのを待ちわびた。
フェニックスの方は、黒い蝶の案内で、呼び出された屋敷に辿り着く。
ラリイの無事が確認出来るまではフェニックスは大人しくしようとしていた。
ラリイを救出したら、その後ですぐに逃げればいいと考えていた。
すると、屋敷の出入り口が自然と開き、フェニックスに入ってこいと
言わんばかりになる。

「ちぃ、完全に私を馬鹿にしてますね。どんな顔をした者なのか、
逆に興味が出てきましたが。」

憎しみすら感じた気持ちで、フェニックスはウロヴォロの屋敷に
入り、ウロヴォロの部屋に誘導される。
そこで、フェニックスもウロヴォロと対峙した。

「これは、これは、かの有名な幻獣フェニックス様に逢えるとは。
光栄でございます。私は召喚士ウロヴォロと申します。」

ウロヴォロは、嫌味のある笑顔でフェニックスに挨拶をする。
フェニックスはうんざりした顔で、ウロヴォロを見ていた。

「くだらない茶番は結構です。ラリイはどこですか?」
「酷いですねぇ・・・フェニックス様。私の挨拶はどうでもいいと?」
「ええ。何の価値もない。今一度問う。ラリイはどこですか?」

フェニックスは有無も言わさない態度で、冷ややかな視線で、
ウロヴォロにラリイの事を聞いた。
ウロヴォロは、やれやれと言った態度で、フェニックスに答える。

「今は、拘束して、ある隠し部屋で大人しくして頂いてます。
フェニックス様を説得する為、一緒に協力して貰おうと
思ったのですが、断られてしまって。非常に残念です。」

ウロヴォロはそう言いながら、水晶でラリイがいる部屋の映像をフェニックスに見せた。
ラリイは、まだ気絶しているのか、動かない。

「ラリイを解放しなさい。」
「タダでと言うわけにはいきませんな。」
「どうしろと?」
「もう、すでにおわかりのはず。この国のお噂はお耳に入ってるはずです。」
「この国の幻獣となって、戦に参加しろと言うことか?」
「その通りでございます。」
「もし、断ったら?」
「その時は、このラリイと言う男に全部の責任を負って貰うだけです。
フェニックスを逃した大罪人として。」
「くっ・・・そう出るか・・・」

フェニックスは一番なって欲しくなかった流れになり、眉を顰めた。
ラリイだけには、こうした迷惑はかけたくなかったのに。
フェニックスは、もう折れるしかない。
ラリイを、この国の大罪人にさせるわけにはいかなかった。
ラリイを助けたら、すぐに逃げればいいと思っていた考えは
泡になってしまった。このウロヴォロは姑息な男だった。

「わかった。お前の要望を聞こう。だから、ラリイを解放しろ。
そして、二度とラリイに関わるな。」
「理解が早くて助かります。フェニックス様。では、まずこれを
着けて頂けますか?」
「そ、それは・・・」

ウロヴォロは、フェニックスにある物を見せる。
それは、あの服従の輪だった。
流石のフェニックスも、まさかウロヴォロが持っていると
までは考えていなかった。

「さ?どうされたのですか?これを着けて下さい。」
「そこまでして、私を使役したいわけか・・・」
「もちろんです。フェニックス様はそれだけ偉大な存在。
だからこそ、私の魔力だけでは無理がある。
だが、これがあれば、安心できる。」

ウロヴォロは、憎らしいほどの笑顔でフェニックスに
服従の輪を着けるように要求する。そして、今一度言う。

「いいのですか?ラリイが大罪人となり、処刑されても?」

フェニックスはそれを聞き、覚悟を決め、自ら自分の首に、
服従の輪をつけた。
フェニックスは自分の意志でラリイを救う為に、人間に
飼われることにしたのだ。
ウロヴォロは、自分の願いが叶ったことに喜び、甲高い声で、
大笑いをした。
念願だった、有名な幻獣を手に入れて。

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