中編
あの買い物に行った日以来、フェニックスは嫌な視線をずっと感じていた。
近場でラリイ以外の人の気配は感じないのに。
それでも、誰かにじっと監視されているような、嫌な視線を。
フェニックスは思った。召喚士に目をつけられてしまったのだろうと。
(とうとう、ラリイとは別れるべき時かもしれない。
私がここに居続ければ、ラリイは城から不利な立場に立たされるだろう。
私を引き渡せと。だが、ラリイは優しい性格だから、きっと拒む
だろうな・・・私を親友などと言う男だから。)
フェニックスは、ラリイに迷惑だけはかけたくなかった。
ラリイを通じて、楽しい日々を過ごせた事に、心から感謝していた。
だから、最後は綺麗に去ろうと、そう考えた。
フェニックスが、別れを決心していた頃、ラリイは城の廊下で、
あのウロヴォロに呼び止められていた。
ラリイは姫に呼び出されて、城に来ていたところだった。
「ラリイ様、お初にお目にかかります。召喚士のウロヴォロです。」
ウロヴォロは恭しく、お辞儀をしてラリイに挨拶をする。
もう、とっくにラリイの事など調べ尽くして知っているにも関わらず、
全くの初対面の振りをして。
「ああ、これは召喚士様。こちらこそ、初めまして。改めて、
オウヌナ家の当主オルドスの息子で3男のラリイです。以後お見知りおきを。」
ラリイも礼儀を尽くして、ウロヴォロの挨拶に答えた。
が、ラリイは、何故かウルヴォロの雰囲気に嫌なものを感じた。
何か馬鹿にされているような気分になる。
だが、そこはラリイは気にしてないように見せつつ、
今は姫に呼ばれているのでと、素直に話しをして、ウルヴォロから、早々に離れた。
「なんか、フェニが町に行きたくないのって言い出したの・・・
あいつの所為な気がする・・・何でだろう?」
ラリイは自分が感じた疑問に不思議に思いながらも、姫の元に急ぐ。
「ラリイ・・・来てくれたのですね。」
姫であるエナは、ラリイに会うと不安そうな顔を少しだけ明るくさせて、
ラリイの側に寄る。ラリイはそんなエナを心配する。
「どうされたのですか?まさか、あの噂が本当になりそうなのですか?」
「ええ、私も最初はまさかと思ったのですが。アルヴァト王子からの手紙で、
サドルティスが宣戦布告をしてきたと・・・
どうしましょう・・・ラリイ。私、どうしたら・・・?」
「王は何と?」
「本格的に戦うとなれば、我が国も一緒になって戦うと。
ただ、我が国には、そんな強い力などありません。
戦いを手伝うと言っても微々たるものでしょう。それこそ、
我が国にも有名な幻獣がいない限りは・・・」
「幻獣・・・フェニックスですか?」
「ええ、父は必死に探し出そうとしてるみたいですが。」
ラリイは、エナの話を聞いて、この国の状態が、かなり深刻になったのを知った。
噂が本当になってしまったのだ。
ラリイは気を引き締め、エナに言う。
「エナ様。今は不安な気持ちが強いでしょうが、お気を確かに
お持ち下さい。いざとなれば、このラリイ。命を懸けて姫様を
必ずお守りします。私の命は、姫様に救われたもの。
過去のあの時、姫様が王に慈悲を請うて下さらなければ、
私は処刑されててもおかしくなかった身。姫様、どうか今は、
無用に心配し、お心を痛めませぬよう願います。」
ラリイは、エナの手を取り、真剣な眼差しで伝えた。
そこには、普段の優しい童顔のラリイではなく、
凛々しい、男らしい顔つきをしたラリイがいた。
エナも、流石に少し照れた様子で、ラリイを直視出来ず、目を閉じていた。
「有り難うございます。ラリイ。貴方の言葉を信じて、
私も今は、無用に心配するのは止めます。また何かあったら、
相談に乗ってくれますね?」
「はい。もちろんです。」
ラリイはエナの手をゆっくりと離して、承諾したと態度で
示すように深々と頭を下げて見せる。
エナはそんなラリイに微笑む。
普段は優しく、穏やかなのに、大事なとこでは、ちゃんと
男らしくなるラリイに、エナも実は好意を持っていた。
幼馴染なのもあるが、身分さえどうにかなったのなら、エナも、
本当はラリイと結婚してさえよいと思っていた。
2人は身分の問題さえなければ、両想いであったのだ。
ラリイは、エナを少しは安心出来たと悟ると、今回はこれで、
エナの元を去ることにした。
今はエナと話し込むよりも、他に何か出来ることはないかと思ったからだ。
そこへ、またウロヴォロがラリイの前に現れる。
「ラリイ様。少しお話があるのですが、宜しいでしょうか?」
ウロヴォロは、ニヤリと嫌な感じがする笑顔で、ラリイに聞いてくる。
ラリイは、最初は断ろうと思ったが、今は現状が現状なだけに、少しでも、
戦いに備えて、お互いに役に立ちそうな話し合いが出来ればと思い、
ウロヴォロと話すことにした。
ウロヴォロは、ラリイを城から連れ出して、自分の屋敷に招き入れた。
自分の部屋に誘導し、そこで、水晶に映るフェニの姿を見せる。
それに驚いているラリイに、ウロヴォロは何故か嬉しそうに告げる。
「ラリイ様。貴方は本当に運がよろしい。あの幻獣フェニックスと暮らされているとは。」
「幻獣・・・フェニックス・・・?」
ラリイは、ウロヴォロが何を言い出したのか、さっぱり理解が
出来なかった。
むしろ自分の家を監視されていた事の方が不愉快であった。
ラリイは少しイラついた感じに返事を続けた。
「何を言っているのか、俺には全く理解出来ないが。
人の家の中を覗くのがお前の趣味なのか?なら、お前と仲良くは
出来そうにないな。」
「ラリイ様、そう言わないで下さい。ラリイ様にはわからないのかもしれませんが、
貴方が今一緒に暮らしている、存在は人間などではない。
今、王が何よりも求めている、あの幻獣フェニックスなのですよ。」
ウロヴォロは、ある本のあるページを開いて、水晶の横に置き、
ラリイに見るように促す。
ラリイは渋々と言った感じで見るが、目を見開くことになる。
ウロヴォロは、してやったりとした顔になって、ラリイに説明をしていく。
「幻獣フェニックスが、仮に人の姿になったらと言う、
図の中に似たような姿があると思いますが、どうですか?
この絵など、全くの瓜二つ。これで少しは私の話を聞いて頂けるのでは?」
「だが、それだけで、あいつが・・・幻獣だなんて・・・」
ラリイは動揺する。
そして、過去を振り返って、フェニとの思い出を思い出す。
確かに、最初の頃のフェニは、人間らしからぬ言動があった。
食器の使い方を知らなかったり、人なら誰でも知っていそうな
食べ物がわからなかったり。他の知識についても、そうだ。
「ラリイ様は、母君を助ける際に、こやつから羽を貰いましたよね?」
「あ・・・ああ。」
「それはフェニックスの羽だったはず。あれは、本当に希少価値の高い物。
1枚の羽で国が買えるとまで言われております。
ですが、ラリイ様は手に入れることが出来た・・・それは、
こやつが、フェニックスなら、造作もない事でございます。
自分の身体の一部なのですから。」
「しかし!だからと言って!」
「なら、確認すればよろしい。こやつが幻獣かどうか。」
動揺し、怒りを感じているラリイに、ウロヴォロは真面目な顔で、ラリイを見ていた。
ラリイは一気に気分が悪くなり、ウロヴォロと話をするのが嫌になった。
そもそも、自分の家を勝手に監視してくるような奴を
信じれる気にはなれない。
ラリイは一刻も早くこの部屋から出て行こうとした。
こんな胸糞が悪い場所には居たくなかった。
近場でラリイ以外の人の気配は感じないのに。
それでも、誰かにじっと監視されているような、嫌な視線を。
フェニックスは思った。召喚士に目をつけられてしまったのだろうと。
(とうとう、ラリイとは別れるべき時かもしれない。
私がここに居続ければ、ラリイは城から不利な立場に立たされるだろう。
私を引き渡せと。だが、ラリイは優しい性格だから、きっと拒む
だろうな・・・私を親友などと言う男だから。)
フェニックスは、ラリイに迷惑だけはかけたくなかった。
ラリイを通じて、楽しい日々を過ごせた事に、心から感謝していた。
だから、最後は綺麗に去ろうと、そう考えた。
フェニックスが、別れを決心していた頃、ラリイは城の廊下で、
あのウロヴォロに呼び止められていた。
ラリイは姫に呼び出されて、城に来ていたところだった。
「ラリイ様、お初にお目にかかります。召喚士のウロヴォロです。」
ウロヴォロは恭しく、お辞儀をしてラリイに挨拶をする。
もう、とっくにラリイの事など調べ尽くして知っているにも関わらず、
全くの初対面の振りをして。
「ああ、これは召喚士様。こちらこそ、初めまして。改めて、
オウヌナ家の当主オルドスの息子で3男のラリイです。以後お見知りおきを。」
ラリイも礼儀を尽くして、ウロヴォロの挨拶に答えた。
が、ラリイは、何故かウルヴォロの雰囲気に嫌なものを感じた。
何か馬鹿にされているような気分になる。
だが、そこはラリイは気にしてないように見せつつ、
今は姫に呼ばれているのでと、素直に話しをして、ウルヴォロから、早々に離れた。
「なんか、フェニが町に行きたくないのって言い出したの・・・
あいつの所為な気がする・・・何でだろう?」
ラリイは自分が感じた疑問に不思議に思いながらも、姫の元に急ぐ。
「ラリイ・・・来てくれたのですね。」
姫であるエナは、ラリイに会うと不安そうな顔を少しだけ明るくさせて、
ラリイの側に寄る。ラリイはそんなエナを心配する。
「どうされたのですか?まさか、あの噂が本当になりそうなのですか?」
「ええ、私も最初はまさかと思ったのですが。アルヴァト王子からの手紙で、
サドルティスが宣戦布告をしてきたと・・・
どうしましょう・・・ラリイ。私、どうしたら・・・?」
「王は何と?」
「本格的に戦うとなれば、我が国も一緒になって戦うと。
ただ、我が国には、そんな強い力などありません。
戦いを手伝うと言っても微々たるものでしょう。それこそ、
我が国にも有名な幻獣がいない限りは・・・」
「幻獣・・・フェニックスですか?」
「ええ、父は必死に探し出そうとしてるみたいですが。」
ラリイは、エナの話を聞いて、この国の状態が、かなり深刻になったのを知った。
噂が本当になってしまったのだ。
ラリイは気を引き締め、エナに言う。
「エナ様。今は不安な気持ちが強いでしょうが、お気を確かに
お持ち下さい。いざとなれば、このラリイ。命を懸けて姫様を
必ずお守りします。私の命は、姫様に救われたもの。
過去のあの時、姫様が王に慈悲を請うて下さらなければ、
私は処刑されててもおかしくなかった身。姫様、どうか今は、
無用に心配し、お心を痛めませぬよう願います。」
ラリイは、エナの手を取り、真剣な眼差しで伝えた。
そこには、普段の優しい童顔のラリイではなく、
凛々しい、男らしい顔つきをしたラリイがいた。
エナも、流石に少し照れた様子で、ラリイを直視出来ず、目を閉じていた。
「有り難うございます。ラリイ。貴方の言葉を信じて、
私も今は、無用に心配するのは止めます。また何かあったら、
相談に乗ってくれますね?」
「はい。もちろんです。」
ラリイはエナの手をゆっくりと離して、承諾したと態度で
示すように深々と頭を下げて見せる。
エナはそんなラリイに微笑む。
普段は優しく、穏やかなのに、大事なとこでは、ちゃんと
男らしくなるラリイに、エナも実は好意を持っていた。
幼馴染なのもあるが、身分さえどうにかなったのなら、エナも、
本当はラリイと結婚してさえよいと思っていた。
2人は身分の問題さえなければ、両想いであったのだ。
ラリイは、エナを少しは安心出来たと悟ると、今回はこれで、
エナの元を去ることにした。
今はエナと話し込むよりも、他に何か出来ることはないかと思ったからだ。
そこへ、またウロヴォロがラリイの前に現れる。
「ラリイ様。少しお話があるのですが、宜しいでしょうか?」
ウロヴォロは、ニヤリと嫌な感じがする笑顔で、ラリイに聞いてくる。
ラリイは、最初は断ろうと思ったが、今は現状が現状なだけに、少しでも、
戦いに備えて、お互いに役に立ちそうな話し合いが出来ればと思い、
ウロヴォロと話すことにした。
ウロヴォロは、ラリイを城から連れ出して、自分の屋敷に招き入れた。
自分の部屋に誘導し、そこで、水晶に映るフェニの姿を見せる。
それに驚いているラリイに、ウロヴォロは何故か嬉しそうに告げる。
「ラリイ様。貴方は本当に運がよろしい。あの幻獣フェニックスと暮らされているとは。」
「幻獣・・・フェニックス・・・?」
ラリイは、ウロヴォロが何を言い出したのか、さっぱり理解が
出来なかった。
むしろ自分の家を監視されていた事の方が不愉快であった。
ラリイは少しイラついた感じに返事を続けた。
「何を言っているのか、俺には全く理解出来ないが。
人の家の中を覗くのがお前の趣味なのか?なら、お前と仲良くは
出来そうにないな。」
「ラリイ様、そう言わないで下さい。ラリイ様にはわからないのかもしれませんが、
貴方が今一緒に暮らしている、存在は人間などではない。
今、王が何よりも求めている、あの幻獣フェニックスなのですよ。」
ウロヴォロは、ある本のあるページを開いて、水晶の横に置き、
ラリイに見るように促す。
ラリイは渋々と言った感じで見るが、目を見開くことになる。
ウロヴォロは、してやったりとした顔になって、ラリイに説明をしていく。
「幻獣フェニックスが、仮に人の姿になったらと言う、
図の中に似たような姿があると思いますが、どうですか?
この絵など、全くの瓜二つ。これで少しは私の話を聞いて頂けるのでは?」
「だが、それだけで、あいつが・・・幻獣だなんて・・・」
ラリイは動揺する。
そして、過去を振り返って、フェニとの思い出を思い出す。
確かに、最初の頃のフェニは、人間らしからぬ言動があった。
食器の使い方を知らなかったり、人なら誰でも知っていそうな
食べ物がわからなかったり。他の知識についても、そうだ。
「ラリイ様は、母君を助ける際に、こやつから羽を貰いましたよね?」
「あ・・・ああ。」
「それはフェニックスの羽だったはず。あれは、本当に希少価値の高い物。
1枚の羽で国が買えるとまで言われております。
ですが、ラリイ様は手に入れることが出来た・・・それは、
こやつが、フェニックスなら、造作もない事でございます。
自分の身体の一部なのですから。」
「しかし!だからと言って!」
「なら、確認すればよろしい。こやつが幻獣かどうか。」
動揺し、怒りを感じているラリイに、ウロヴォロは真面目な顔で、ラリイを見ていた。
ラリイは一気に気分が悪くなり、ウロヴォロと話をするのが嫌になった。
そもそも、自分の家を勝手に監視してくるような奴を
信じれる気にはなれない。
ラリイは一刻も早くこの部屋から出て行こうとした。
こんな胸糞が悪い場所には居たくなかった。