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中編

フェニックスとラリイが、またお互いの絆が深まり、普段の生活に
また戻ろうとしていた頃。
フェロニア国の内情は、悪い方に変わろうとしていた。
大国ロヴァールと敵対関係にあった、サドルティスが戦争を
仕掛けてくるかもしれないと言う悪い噂が出始めたのだ。
サドルティスはロヴァールほど大国ではなかったが、3年前ほどから、
幻獣ラムウを使役し、最近は他国に自国の力を見せつけていた。
ラムウは雷などの天候を操るのが得意な魔人の様な幻獣だ。
兄弟姉妹の契りを交わした幻獣も多く、彼を慕って、
それらの幻獣達も、サドルティスに力を貸していた。
なので、サドルティスは一気に力をつけた感じである。
そのサドルティスが敵国にある、ロヴァールに、いつ戦争を
仕掛けて来ても、おかしくない状況にあった。
それは、ロヴァールとフェロニアの繋がりが深まりそうになっていたから。
両国が婚姻と言う形で繋がる前に、ロヴァールに戦争を
仕掛けようとしているのではないか?と、噂が出たのだ。
だから、フェダス王は、ラリイに命じた。
幻獣フェニックスを探すようにと。
そして、その命令はラリイだけでなく、多くの者にも出されていた。
フェダス王は、自国を守る為にも、少しでも力が欲しがり、
その為に幻獣フェニックスを求めた。
幻獣と戦うには、こちら側も幻獣を使うのが一番いい。
フェロニアにも、実力のある召喚士がいた。
その召喚士の名は、ウルヴォロ。歳は40近い、短い黒髪で陰険そうな男だ。
幻獣を使役出来る者、召喚士。
幻獣の事に誰より詳しく、幻獣を操る術を知る存在。
だが、幻獣達からすれば、決して良いと言えるだけの存在ではない。
中には酷い召喚士もおり、魔力が高い者なら、無理な契約を幻獣に結ばせ、
幻獣の意志を無視して、使役出来る者もいる。
服従の輪と言う、恐ろしい道具さえ、持っている者も。
その服従の輪さえあれば、たとえフェニックスと言えども、
ただでは済まない。その道具はどんな幻獣も服従させられると
言われている、幻獣達にとっては忌み嫌われた物なのだ。
残念ながら、ウルヴォロは、良い召喚士ではなかった。
自分の野望の為にフェニックスを探してやろうと、
陰険そうな顔の青い瞳には、野心の火が宿っていた。
数日後に、フェニックスも、フェニロアに不穏な空気が
漂っていることを感じるようになる。

「うん?どうした?フェニ?」
「あ、いや。何にもないよ。そうだな、ラリイ。
少し疲れてしまったみたいだ。早く帰ろう。」
「わかった!じゃあ、もう帰ろう!」

ラリイはフェニを連れて、今日は雑貨屋に来ているところだった。
カレー粉やら何やらを見せてやろうとラリイは思って、連れてきたのだが、
フェニの方は、最初は喜んで、ラリイの説明を聞いていたが、
途中から顔色が悪くなり、表情も険しく、辺りを警戒しているようにさえ見えた。
ラリイは、フェニが人酔いでもして、疲れたのかと思って、
すぐに家に帰りたがるフェニに賛同した。
フェニックスの方は、近くに召喚士がいるのを感づいて警戒していたのだ。

(ラリイにフードを借りて、姿はなるべく隠しているつもりだが、
あまりにも近くに寄ると、人の姿に化けているのが、
バレてしまうかもしれない。ここは残念だが、今日は早く帰るべきだろう。)

フェニックスは、今日のラリイとの買い物がこんなにも
早く終わってしまうことを残念に思ったが、自分が幻獣とバレて、
騒ぎになるよりはマシだと思い、諦めた。
ラリイとフェニックスは急いで、ラリイの家に帰る。
そこに、ウロヴォロは幻獣の気配を、突然感じて最悪な事に、
ラリイ達に気づく。

「あれは、1人は人間の男だが、あのフードを被った奴は、
人間じゃない気配を感じる。」

ウルヴォロは、使い魔を使って、ラリイ達の後をつけさせた。
黒い蝶ような使い魔は、優雅に飛び、後を追う。
ラリイ達は自分達がウロヴォロに目をつけられてしまったとは
思っていなかった。

「ラリイ。私はしばらく町には行きたくない。」

ラリイの家に着き、フードを脱いだ、フェニックスはすぐに告げる。
いきなり、深刻そうな顔で言う、フェニにラリイは心配そうにする。

「やっぱり、何かあったのか?」
「うん・・・。何かあったと言うよりは、これから、
何か不吉な事が起こりそうな、そんな嫌な予感がする。」
「え?」
「今日、町中に魔術師が多かった。それに、召喚士も居た。」
「マジか?召喚士か・・・まさか、王は本当に、幻獣フェニックスを、
本腰で探す気なのか?」

フェニの言葉を聞いて、ラリイも考える。
ラリイには、急がなくてもいい。みたいに言っていたが、
もしかして、王国では、本当はそんな余裕が無いほどに、
切迫した何かが、最近起きたのか?

「もしかしたら、敵国のサドルティスが、このフェロニアにも戦争を
仕掛けてくるかもしれないって、悪い噂を聞いたけど、それかもしれないな。」
「そうか、なら、納得がいく。その所為かもしれないな。」
「でも、俺は城から、まだそんな攻められそうだなんて、
情報来てないから、警備を強化したくらいだとは思うけどな。」

ラリイはフェニそう言って、少しは気持ちを落ち着かせようとする。
本当に王国に緊迫した状況が起これば、姫から呼び出され、
ラリイの耳にもすぐに情報がいくだろう。
それがまだないのだから、大丈夫だろうと、ラリイは軽く考えていた。
そこにウロヴォロの黒い蝶が、ラリイの家に辿りついて、窓から、
家の中を見る。
黒い蝶から見ている映像は、ウロヴォロスの部屋にある、
水晶に映し出されていた。
ウルヴォロは、水晶からフェニックスの人の姿を見て、驚愕する。

「ま、まさか?!あのフェニックスがこの町に居て、人の振りをして、
人間と暮らしているだと?ククク・・・これはいい。
まさか、こんなにも簡単に見つかるとは、俺は運がいい。」

ウルヴォロは、込み上がる笑いの感情が、我慢出来ずに、低い声で、いやらしく笑い続けた。
ウルヴォロは思っていた。自分には服従の輪がある。
これを上手い具合にフェニックスに取り付けることが出来れば、
自分は召喚士として、更に実力と共に名誉も高まるだろう。
フェロニアにいる限り、高い身分が約束され、一生安泰した暮らしが出来ると。

「実力は期待されていたが、有名な幻獣を使役することは、今まで出来なかった。
だが、今回で、あのフェニックスを使役出来るようになれば、
王もご満足されるだろう。敵国がいくら、ラムウを使おうとも、
こちらは、無限の回復と強い火属性の攻撃が出来るのだからな!」

ウルヴォロは、自分の未来が明るいものだと約束されたと確信して、再度、
自分の部屋の水晶に映し出される、人の姿になっている、
フェニックスを見つめて、また笑い出していた。
必ず手に入れなければ、あのフェニックスを。
ウルヴォロのどす黒い執念は、ラリイ達の方へ向かいつつあった。

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