前編
ある異空間で、2体の幻獣が王の座を争い戦っていた。
バハムートとフェニックス。
バハムートは宙の王者にして、ドラゴンの中では最強クラスの存在。
高い戦闘能力を誇り、プライドも高い。
一方のフェニックスも、不死鳥と言うだけあって、攻撃力では、
バハムートに劣るものの、高い回復力と身軽な動きで、
バハムートの攻撃を避けながら、対峙していた。
フェニックスもプライドが高く、何より自由を奪われる事を嫌い、
バハムートの支配下に置かれることを拒んでいた。
故に、2体は激しく争っていたのだ。
実際のところ、フェニックスとしては、幻獣王の座などには
興味などなかったのだが、自分の自由を守る為には、バハムームと
戦うしかなかったのである。
「いい加減、俺の部下になったら、どうだ?」
「お断りします。私は誰かの支配など受けたくありません。」
「ちぃ、相変わらず、頭の固い奴だ。」
バハムートは、散々、フェニックスを勧誘していた。
一緒に幻獣界を作って治めようと。
が、フェニックスにしたら、まるで興味のない話だった。
やりたければ勝手にすればいいと思っていた。
しかし、バハムートはフェニックスの能力を高く評価して、
どうしても仲間にしたがっていた。
フェニックスからすれば、迷惑でしかない。
「何故、私にこだわるのですか?貴方には、もうそれなりの
部下がいるでしょ?」
「ああ、優秀なのはたくさんいる。でも、お前も必要だ。」
「はぁ。いい迷惑です。巻き込まないで欲しい。」
フェニックスはバハムートと、いい感じの距離を取って、呆れた顔で見る。
バハムートさえ、自分を諦めてくれれば、それで事は収まると言うのに。
「どうしても、俺の仲間にならないのなら、ここで雌雄を決めるしかない。
俺に負けたら、仲間になれ。」
「はぁ・・・仕方がないですね。」
フェニックスとバハムートが構え合う。
が、フェニックスは本気で戦う気はなかった。
力押しの戦いなら、流石に勝ち目はないからだ。
「今回はこのまま逃げた方が良さそうだ。」
フェニックスは心の中でそう思った。無駄な戦いなどしたくない。
相手が自分を諦めるまで、のらりくらりと逃げて、時々、
戦う振りをすればいいといつも考えていた。
けれど、今回はそう上手くいかなかった。
バハムートはいつも以上に、しつこく攻撃を繰り出し、
フェニックスを追いかけ回す。
逃げ切れると思い込んでいたフェニックスに、誤算が生じる
「本当に、今日はしつこいですね・・・」
なかなか逃げ切ることが出来ないフェニックスは、だんだんと焦り出す、
バハムートの攻撃が少しずつ自分にも当たる。
「もう、いい加減に今日で諦めろ。俺も、このまま続けると、力加減が出来ん。」
「嫌です。貴方こそ、私を諦めたらどうですか?」
フェニックスがそうバハムートに告げた時、タイミング悪く、
バハムートの強めの攻撃が、フェニックスの背中に直撃する。
「ぐっ・・・」
フェニックスは呻いて、最後の力を振り絞って、急速に異空間の外に出た。
「このまま・・・人間界に逃げるしか・・・」
フェニックスは、雨が降りしきる人間界に落ちて行った。
バハムートは舌打ちしながら、人間界に消えたフェニックスを、
見て、それ以上の追跡を止めた。
人間界に不必要にいることは、バハムートにとっても不都合だったのだ。
「頼むから。人間には飼われるなよ。」
バハムートはそう言って、仕方がなく異空間に帰って行った。
深手を負ったフェニックスは、何とか地面への激突を避けた。
幸い、自分の周りには人間はいなかった。
フェニックスは、このままの姿ではいけないと判断し、人間の姿に変身した。
「クソ・・・人の姿にはなれたが、これ以上動くのは無理か。」
フェニックスは冷静に今の状況を考える。
冷たい雨が容赦なく、体力も奪っていく。
このまま、ここに居ても、回復が遅くなるだけだ、どうにか、
しなければ・・・
考えはするが、意識が朦朧として来て、上手くいかない。
「もう・・・ダメだ・・・」
フェニックスは雨の中で、とうとう意識を失って倒れ込んだ。
そこへ、数分後に人間の男が通りかかる。
「ひぇー今日はついてないなーこんな時に呼び出すんだからなぁー」
1人の兵士らしい男は、自分の家に急いで帰宅する所だった。
でも、目の前に誰かが倒れているのを発見して、急いで駆け寄る。
「お、おい!大丈夫か?」
兵士らしい男は、倒れている人物を抱き起す。
その人物は女の様に美しく、銀色の綺麗な長髪に耳付近には赤色の髪をした男だった。
兵士らしい男は、一瞬息を飲む。その人物の美しさに。
でも、すぐに我に返って、その人物の肩腕を自分の首に掛けて、
抱き上げて、自宅に急いで連れ帰った。
背中に酷い傷があるのを発見したからだ。
「待ってろよ!すぐに手当てするからな!」
兵士らしい男は、雨の中を一生懸命に走りながら言った。
「んん・・・」
数時間後に、フェニックスは意識を取り戻した。
どうやら、人間の家の中に居て、自分は手当をされたらしいと
言う事まで、理解出来た。
だが、手当した相手が、自分に友好的な存在であるかはわからない。
「出来るなら、騒ぎは起こしたくないが・・・」
フェニックスは静かに呟いた。ほどなくして、フェニックスを
運んだ男が、フェニックスの寝ている部屋に入って来る。
「あ、良かった。意識が戻ったんだな。」
男は屈託のない笑顔でフェニックスに語り掛けた。
フェニックスはこの人間が、今は自分に敵意や悪意が無い事に、
とりあえず安心した。
しかし、素直には喜べない。フェニックスは大の人間嫌いだった。
「お前、何処から来たんだ?あんな雨の中で・・・」
「・・・・・・」
「まぁ・・・そうだよな・・・言いづらいか。」
男は黙っているフェニックスを察してか、質問はしたが、無理に、
聞き出すことを止めた。
代わりに、持ってきた水と皮を剥いて、食べやすく切ったリンゴを、
フェニックスが寝ているベットの横のテーブルに置く。
「俺の名前はラリイって言うんだ。とりあえず、水と食べ物を置いておくな。まだ、動くのは辛いと思うけど、何かあったら、呼んでくれ。」
ラリイと名乗った男は、明るい茶色の短髪で、まだ少年かと思うくらいの童顔な男だった。
フェニックスは、静かにその男、ラリイを見つめた。
「そう言えば、お前の名前は?」
ラリイは、人の良さそうな笑顔で無邪気にフェニックスに聞く。
フェニックスは、少し悩んだが、下手に怪しまれるのも困ると思い。短く答えた。
「フェニ・・・だ。」
「フェニか!じゃあ、フェニ。しばらくは俺の家に居ていいから。
傷が治るまで、こんな家だけどさ、安心していいよ。
家には俺しかいないから、うるさくないと思うし。」
ラリイはフェニックスが不愛想であっても、気にする様子もなく、
また笑顔で語りかけた。
フェニックスは少し、このラリイと言う男に驚いたが、
悪意はなさそうなので、利用させて貰う事にした。
しばらく、この男の家に居れば、バハムートも流石に手は
出して来ないだろう。
バハムートが人間界に来るわけがないのは知っていた。
フェニックスも、本来なら人間界になど来たくはなかった。
こんな深手さえ負わなければ。
人間が大嫌いな自分が、まさか、人間界に来て、その人間に
手当される日が来るなど、思ってもいなかったのだ。
そんな考えをしている、フェニックスをよそに、ラリイは、
嬉しそうな顔でフェニックスを見守っていた。
一時的にでも、同居人が出来たことが、ラリイには、
何故か嬉しかった。不愛想ではあるが。
バハムートとフェニックス。
バハムートは宙の王者にして、ドラゴンの中では最強クラスの存在。
高い戦闘能力を誇り、プライドも高い。
一方のフェニックスも、不死鳥と言うだけあって、攻撃力では、
バハムートに劣るものの、高い回復力と身軽な動きで、
バハムートの攻撃を避けながら、対峙していた。
フェニックスもプライドが高く、何より自由を奪われる事を嫌い、
バハムートの支配下に置かれることを拒んでいた。
故に、2体は激しく争っていたのだ。
実際のところ、フェニックスとしては、幻獣王の座などには
興味などなかったのだが、自分の自由を守る為には、バハムームと
戦うしかなかったのである。
「いい加減、俺の部下になったら、どうだ?」
「お断りします。私は誰かの支配など受けたくありません。」
「ちぃ、相変わらず、頭の固い奴だ。」
バハムートは、散々、フェニックスを勧誘していた。
一緒に幻獣界を作って治めようと。
が、フェニックスにしたら、まるで興味のない話だった。
やりたければ勝手にすればいいと思っていた。
しかし、バハムートはフェニックスの能力を高く評価して、
どうしても仲間にしたがっていた。
フェニックスからすれば、迷惑でしかない。
「何故、私にこだわるのですか?貴方には、もうそれなりの
部下がいるでしょ?」
「ああ、優秀なのはたくさんいる。でも、お前も必要だ。」
「はぁ。いい迷惑です。巻き込まないで欲しい。」
フェニックスはバハムートと、いい感じの距離を取って、呆れた顔で見る。
バハムートさえ、自分を諦めてくれれば、それで事は収まると言うのに。
「どうしても、俺の仲間にならないのなら、ここで雌雄を決めるしかない。
俺に負けたら、仲間になれ。」
「はぁ・・・仕方がないですね。」
フェニックスとバハムートが構え合う。
が、フェニックスは本気で戦う気はなかった。
力押しの戦いなら、流石に勝ち目はないからだ。
「今回はこのまま逃げた方が良さそうだ。」
フェニックスは心の中でそう思った。無駄な戦いなどしたくない。
相手が自分を諦めるまで、のらりくらりと逃げて、時々、
戦う振りをすればいいといつも考えていた。
けれど、今回はそう上手くいかなかった。
バハムートはいつも以上に、しつこく攻撃を繰り出し、
フェニックスを追いかけ回す。
逃げ切れると思い込んでいたフェニックスに、誤算が生じる
「本当に、今日はしつこいですね・・・」
なかなか逃げ切ることが出来ないフェニックスは、だんだんと焦り出す、
バハムートの攻撃が少しずつ自分にも当たる。
「もう、いい加減に今日で諦めろ。俺も、このまま続けると、力加減が出来ん。」
「嫌です。貴方こそ、私を諦めたらどうですか?」
フェニックスがそうバハムートに告げた時、タイミング悪く、
バハムートの強めの攻撃が、フェニックスの背中に直撃する。
「ぐっ・・・」
フェニックスは呻いて、最後の力を振り絞って、急速に異空間の外に出た。
「このまま・・・人間界に逃げるしか・・・」
フェニックスは、雨が降りしきる人間界に落ちて行った。
バハムートは舌打ちしながら、人間界に消えたフェニックスを、
見て、それ以上の追跡を止めた。
人間界に不必要にいることは、バハムートにとっても不都合だったのだ。
「頼むから。人間には飼われるなよ。」
バハムートはそう言って、仕方がなく異空間に帰って行った。
深手を負ったフェニックスは、何とか地面への激突を避けた。
幸い、自分の周りには人間はいなかった。
フェニックスは、このままの姿ではいけないと判断し、人間の姿に変身した。
「クソ・・・人の姿にはなれたが、これ以上動くのは無理か。」
フェニックスは冷静に今の状況を考える。
冷たい雨が容赦なく、体力も奪っていく。
このまま、ここに居ても、回復が遅くなるだけだ、どうにか、
しなければ・・・
考えはするが、意識が朦朧として来て、上手くいかない。
「もう・・・ダメだ・・・」
フェニックスは雨の中で、とうとう意識を失って倒れ込んだ。
そこへ、数分後に人間の男が通りかかる。
「ひぇー今日はついてないなーこんな時に呼び出すんだからなぁー」
1人の兵士らしい男は、自分の家に急いで帰宅する所だった。
でも、目の前に誰かが倒れているのを発見して、急いで駆け寄る。
「お、おい!大丈夫か?」
兵士らしい男は、倒れている人物を抱き起す。
その人物は女の様に美しく、銀色の綺麗な長髪に耳付近には赤色の髪をした男だった。
兵士らしい男は、一瞬息を飲む。その人物の美しさに。
でも、すぐに我に返って、その人物の肩腕を自分の首に掛けて、
抱き上げて、自宅に急いで連れ帰った。
背中に酷い傷があるのを発見したからだ。
「待ってろよ!すぐに手当てするからな!」
兵士らしい男は、雨の中を一生懸命に走りながら言った。
「んん・・・」
数時間後に、フェニックスは意識を取り戻した。
どうやら、人間の家の中に居て、自分は手当をされたらしいと
言う事まで、理解出来た。
だが、手当した相手が、自分に友好的な存在であるかはわからない。
「出来るなら、騒ぎは起こしたくないが・・・」
フェニックスは静かに呟いた。ほどなくして、フェニックスを
運んだ男が、フェニックスの寝ている部屋に入って来る。
「あ、良かった。意識が戻ったんだな。」
男は屈託のない笑顔でフェニックスに語り掛けた。
フェニックスはこの人間が、今は自分に敵意や悪意が無い事に、
とりあえず安心した。
しかし、素直には喜べない。フェニックスは大の人間嫌いだった。
「お前、何処から来たんだ?あんな雨の中で・・・」
「・・・・・・」
「まぁ・・・そうだよな・・・言いづらいか。」
男は黙っているフェニックスを察してか、質問はしたが、無理に、
聞き出すことを止めた。
代わりに、持ってきた水と皮を剥いて、食べやすく切ったリンゴを、
フェニックスが寝ているベットの横のテーブルに置く。
「俺の名前はラリイって言うんだ。とりあえず、水と食べ物を置いておくな。まだ、動くのは辛いと思うけど、何かあったら、呼んでくれ。」
ラリイと名乗った男は、明るい茶色の短髪で、まだ少年かと思うくらいの童顔な男だった。
フェニックスは、静かにその男、ラリイを見つめた。
「そう言えば、お前の名前は?」
ラリイは、人の良さそうな笑顔で無邪気にフェニックスに聞く。
フェニックスは、少し悩んだが、下手に怪しまれるのも困ると思い。短く答えた。
「フェニ・・・だ。」
「フェニか!じゃあ、フェニ。しばらくは俺の家に居ていいから。
傷が治るまで、こんな家だけどさ、安心していいよ。
家には俺しかいないから、うるさくないと思うし。」
ラリイはフェニックスが不愛想であっても、気にする様子もなく、
また笑顔で語りかけた。
フェニックスは少し、このラリイと言う男に驚いたが、
悪意はなさそうなので、利用させて貰う事にした。
しばらく、この男の家に居れば、バハムートも流石に手は
出して来ないだろう。
バハムートが人間界に来るわけがないのは知っていた。
フェニックスも、本来なら人間界になど来たくはなかった。
こんな深手さえ負わなければ。
人間が大嫌いな自分が、まさか、人間界に来て、その人間に
手当される日が来るなど、思ってもいなかったのだ。
そんな考えをしている、フェニックスをよそに、ラリイは、
嬉しそうな顔でフェニックスを見守っていた。
一時的にでも、同居人が出来たことが、ラリイには、
何故か嬉しかった。不愛想ではあるが。
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