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エピローグ

ある日、ラリイはある夢を見ていた。
それは自分が子供の時に、両親と兄と一緒に、どこかの城に訪れた時の夢だった。
その城に居る誰もが、喪服姿で、暗い雰囲気が漂っていた。

「まさか、王も王妃も突然に亡くなるとはな・・・」
「ドラゴス王への恨みが、まだドラゴネスに残っていたと言う事か・・・」
「王子はまだ9歳なのに、今後はどうするのだ?」

大人達がひそひそと噂話をしている。
だが、子供のラリイからすれば、全然話の内容などわからない。

「つまんない・・・」

ラリイはフェニに貰った、いつも大事に抱っこしてる、ウサちゃんと一緒に、広い庭を見つける。
両親も兄も、誰かとしゃべっていて、ラリイの事は気にも留めていない。

「今なら、ちょっと離れても大丈夫かな?」

ラリイは好奇心から、親達から離れて、庭に行く。
色とりどりの美しい花に惹かれ、ラリイは、わくわくしながら、
どんどん庭の奥へと進む。
そこに、1人の男の子を発見する。緑髪の緑の瞳をした子だった。

「同い年の子かな?」

ラリイは、自分にも話し相手が出来るかもしれないと、喜んで、その子に近づいていく。
しかし、近づいてわかった。男の子は、深く悲しんでいたのだ。

「ぐす・・・お父様・・・お母様・・・
ん?だ、誰だ!!!」

泣いている側で誰かが近づくのがわかると、男の子はいきなり怒りだし、ラリイに怒鳴る。
ラリイは、いきなり怒鳴られて、びっくりしたが、すぐに謝る。

「ご、ごめんなさい。お庭が綺麗だったから、見に来たの・・・」
「ふん・・・どこかの国の姫か・・・」

男の子は呆れたようにラリイを見る。
ラリイは、その時、わけがあって、耳を隠す為に帽子のような
被り物をしていた。
だから、男の子はラリイがどこの国の姫かまでは、わからなかった。

「どうして、泣いてたの?何か悲しいことがあったの?」

ラリイは、ただ気になって、その男の子が泣いてる理由を聞いた。
すると、男の子の顔がみるみる真っ赤になって、ラリイを睨む。

「なんで!お前なんかに言わなきゃいけないんだ!!!」

男の子はラリイに叫ぶ。今、一番聞かれたくないことを聞かれたから。
我慢できずに、男の子はラリイに怒りを露わにした。
あまりに強い怒りにラリイは更に驚き、だんだん涙目になる。

「そ、そんなに怒らなくても・・・いいのに・・・ぐすぅ・・・」

ラリイはフェニから貰ったウサちゃんをきつく抱きしめ、男の子を見ながら泣く。
男の子は、泣いてるラリイから、顔を反らして、気まずそうにする。

「お前に・・・突然、両親を・・・大事な人を失う気持ちなんか、
わかるもんか・・・」

男の子は、そう言って、また悲しいの我慢し、辛い顔をする。
ラリイは、理解した。この男の子も、大事な人を失ったのだと。

「そんなことないもん!!!」

男の子の言葉に今度はラリイが反撃する。
すると、今度は男の子の方がラリイにびっくりする。
まさか、言い返されるとは思っていなかったようだ。

「私だって、両親じゃないけど、それと同じか、それ以上に大好きだった、
フェニおばちゃまを・・・最近、亡くしたもん!!
だから、貴方の気持ち、わかるもん!!!」

ラリイの言い分に、男の子の顔は、なんだこいつ?と言った顔になる。
だが、ラリイへの怒りは少し治まったようだ。

「で、でも、お前には両親がいるだろ?俺には・・・誰もいない。
俺は・・・もう1人ぼっちなんだ・・・」

男の子は、自分でそう言って、また悲しくなってきたのか、泣きそうになる。
ラリイはそれを見て、どうにか慰めてあげれないかと考える。
そして、気持ちが我慢できずに、男の子の胸に、フェニから貰った、
命より大事にしてた、ウサちゃんを押し付ける。

「この子、貸してあげる!そしたら、1人じゃないよ!!」
「はぁ?」

ラリイに突然、ぬいぐるみを押し付けられて、男の子は唖然とする。
突き返されそうになるのを、ラリイは必死で押し返す。

「この子は!私にとって、とっても大事な子だけど、でも、今は貴方の側に
あった方がいいと思うの!そのウサちゃん、抱いてみて?
きっと、少しは気持ちが楽になると思うから・・・」

ラリイは必死に男の子に訴える。突拍子もない事を言うラリイに、
男の子は、流石に折れて、言う通りにぬいぐるみを抱っこする。
ぬいぐるみには、ラリイのぬくもりが残っているのか、少しだけ温かった。

「俺は男なのに・・・こんなぬいぐるみなんかで・・・なんかで・・・」

男の子は、そう言って、また泣き出した。
ラリイが、自分を慰めようとしてくれていることに気づいてしまったから。
ラリイは、男の子の側に寄り、男の子の頭を優しく撫でる。

「貴方は1人じゃないよ?私で良かったら、一緒にいるよ?」

ラリイは泣きながらも、笑顔で男の子と向き合う。
少しは自分の気持ちが通じたのが、何より嬉しかったから。

「お前・・・変わってるな・・・」

ラリイの顔を見て、男の子は、少しだけ笑った。
変な奴だけど、悪い奴じゃないんだなと、男の子は理解した。

「ラリイ!何処だ?返事しろ!!」

兄の呼ぶ声に、ラリイは気が付く。
ラリイは慌てて、兄の元に帰ろうとする。

「あわわ!お兄様のとこに行かなくちゃ!」
「え?こいつ、どーするんだ?!」

男の子はぬいぐるみをラリイに返そうとするが、2人の距離は、
もう大分離れてしまっていた。

「その子は、貴方に貸してあげる!
今度、また遊びに来た時に、返してね!またね!」

ラリイは明るい笑顔で男の子にそう告げて、走って消えた。

「なんだ、あいつ・・・変な子だな・・・」

男の子は、呆れつつも、ラリイを最後まで見送った。
あんなに悲しかった気持ちは、今は少し和らいでいた。

「勝手に押し付けて来たくせに・・・でも、今度会えたら、
お礼だけはしておくか・・・」

男の子はラリイから預かったぬいぐるみを見る。
すると、大柄の男が声を掛ける。

「ネイル!こんなとこにいたのか!全く、ダメだろうが。
ネフィリート様が心配してたぞ!さぁ、戻ろう?」
「ベアードか・・・わかった。」
「ん?どうしたんだ、そのぬいぐるみは?」
「あ、これか?変な子に押し付けられた。」
「は?なんだそれ?」

ネイルの返答にベアードは困惑する。けど、ベアードは気づく。

「あれは、お忍びで葬儀に来ているフェニキア王のご令嬢のラリイ姫が
持っていたぬいぐるみか?なら、変な物ではないから、大丈夫だろうが、
今はまだネイルには教えてやれないな。」

ベアードは心の中でそう思った。それから、長年にわたり、何度もネイルに、
ラリイの事を尋ねられたが答えることは出来なかった。
ラリイの存在はその時知ることが出来なかったのは、フェニキアとの関係が
まだ良くなかったからなのと、ネフィリートが伏せていたからだ。
そして、2人が再開するのは、当分先の事になる。
お互い、成長して、全く忘れてしまった、あの時まで。
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