第一二章「和解」
朝を迎えても、ネイルが意識を戻すことはなかった。
色々な者達が、入れ替わりでネイルを交代で順番に見守る。
今はとりあえず病気で寝ていると言う事にしているが、
これが数日続くようなら、大騒ぎになってしまうだろう。
ラリイ達は、長期戦にならないことを願うしかなかった。
王の不在は、国の平和を一番揺るがす事態になってしまうからだ。
「ネイル・・・負けないで・・・ずっと側にいるから・・・」
ラリイは、誰よりもネイルの側にいて、ネイルの手を握って、
ひたすら呼びかけていた。
ネイルの枕元には、あのうさぎのぬいぐるみもいる。
他の者が休んだ方が良いとラリイに言っても、聞かなかった。
「私は大丈夫です。どうしても疲れたら、ちゃんと休みますから、
心配しないで下さい。」
ラリイは心配してくれる者達に笑顔で言葉を返した。
自暴自棄になっているとか、そういう態度ではなかった。
妻だからこそ、側に居たい。
その強い思いを感じるからこそ、誰も何も言えなくなっていたのだ。
ネフィリートも何も言わずに、ラリイの好きにさせた。
「たぶん、霊の力が強まる夜が、勝負時だ。」
ラリイはそう思っていた。夜も深夜に近づけば、きっとドラゴスの霊は再び、自分の前に姿を現すだろうと、ラリイは確信していた。
それまでに、ラリイはネイルの側に居て、ネイルが精神的に負けないように言葉をかけ続けようと思ったのだ。
時にはネイルが好きだと言ってくれた、歌も歌ったりもした。
「ネイル・・・起きたら、ウサちゃんシリーズの話しようね。
まだ、私が持ってないウサちゃんとかネイルの部屋に
あったから、今度お話聞かせてね?」
ラリイはただただ、ネイルが目覚めてくれることを願った。
そして、夜になるまで、必死にネイルに話しかけ続けた。
そんなラリイを他の者達もネイルと一緒に見守り続けていく。
「余を嫌がりながらも、側に居るとは、お前は本当に、
いつも理解に苦しむ女だな・・・フェニ・・・」
ラリイがウトウトしかけた時に、あの声が聞こえた。
どうやら、気づけば夜になっていたようだ。
ラリイがハッとしてネイルを見ると、ネイルは寝たまま、
顔をラリイに向けていた。
しかし、瞳はあの深緑色で、また人を射貫くような視線で、
じっとラリイを見ていた。
「どうか、ネイルを返して下さい。」
「この身体を持ち主のことか?」
「はい。今のドラゴネス国の王であり、私の大事な・・・
誰よりも愛してる夫です。」
「ふん・・・そんな言い方もあのフェニに似ているとは・・・
余が勘違いするのも致し方あるまい。」
ラリイは切実にドラゴスに訴えた。
ドラゴスはつまらなそうな感じでラリイに答える。
それを少し遠くから、ネフィリートとベアードが見守る。
「いいんですか?ネフィリート様?このままで?」
心配するベアードはネフィリートにそう尋ねるが、ネフィリートは
ベアードを制したままであった。
「いや、今は様子を見ようではないか。お父上の霊は、今のところ
荒ぶる様子もなさそうじゃ・・・後はラリイ次第じゃ・・・」
ネフィリートは祈る気持ちで、ラリイとドラゴスのやり取りを見守る。
「余はこのままでも構わないぞ?この身体でも悪くはない。
フェニに似ている其方と、再度ドラゴネス国を治めるのも悪くない・・・」
「それは嫌です。私が愛してるのはネイルだけです。」
「ふん。何ともいけ好かない女だ。あの女の様に・・・」
ラリイのはっきりとした返答にドラゴスは怒りを露わにした。
過去に似たようなことをフェニにも言われたのだろう。
そんな感じがラリイにはした。
「でも、ドラゴス王には感謝しています。」
「何?余に感謝だと・・・?」
「はい。ドラゴス王が居て下さったから、私は愛するネイルに
逢えたんです・・・それは、その事は、心から感謝しております。」
「・・・・・」
ドラゴスは怒りを沈め、黙った。そして、ラリイを見ることを
止め、天井の方を見る。
少しの沈黙の後にドラゴスが口を開く。
「何とも羨ましい奴よ・・・ネイル・・・余の子孫か・・・」
ドラゴスはふっと笑い、目を閉じた。
「ならば、見せてみるがいい。お前達の有様を・・・
それで、このドラゴネス国が衰退した時は、余はお前達を
呪いに再び現れるであろうがな。」
「そうはなりません。だって、貴方の子孫が今後も治めるのですから。」
ラリイは優しい顔でネイルの中にいる、ドラゴスにはっきりと告げた。
ドラゴスは少し笑い、呆れながら言う。
「これはまた・・・恐ろしい女よ。
フェニよりもな・・・あの女よりも、嫌な女だ・・・」
そう言うと、ドラゴスは黙った。
ラリイは、何故かすぐにネイルの側に寄った。
そうしなければと、思ったのだ。
「ネイル・・・起きて・・・この子も待ってるよ?」
ラリイは、フェニから貰った、うさぎのぬいぐるみをネイルの胸に置き、
寝ているネイルにキスをそっとした。
もう、ネイルの中にドラゴスはいないと、ラリイは感じていた。
キスが終わり、ラリイがネイルから顔を離すと、ネイルは再び目を開けた。
「ラ・・・リイ・・・?」
目を開けた、ネイルの瞳は、あのいつもの優しい緑の瞳だった。
そして、すぐに意識を戻したネイルはラリイを抱きしめた。
「ラリイ!大丈夫か?!あの男に何もされてないか?!」
「ネイル・・・大丈夫だよ。もう終わったよ・・・」
「ラリイ・・・ありがとう・・・お前の声はずっと聞こえてたよ・・・」
2人はお互いの無事に安堵し、しばらく抱き合った。
それを遠くから見ていたネフィリートもベアードも、同じように安堵し、2人の様子を温かく見守っていた。
こうして、ラリイ達はなんとかドラゴスを成仏させ、
無事にネイルを救ったのだった。
色々な者達が、入れ替わりでネイルを交代で順番に見守る。
今はとりあえず病気で寝ていると言う事にしているが、
これが数日続くようなら、大騒ぎになってしまうだろう。
ラリイ達は、長期戦にならないことを願うしかなかった。
王の不在は、国の平和を一番揺るがす事態になってしまうからだ。
「ネイル・・・負けないで・・・ずっと側にいるから・・・」
ラリイは、誰よりもネイルの側にいて、ネイルの手を握って、
ひたすら呼びかけていた。
ネイルの枕元には、あのうさぎのぬいぐるみもいる。
他の者が休んだ方が良いとラリイに言っても、聞かなかった。
「私は大丈夫です。どうしても疲れたら、ちゃんと休みますから、
心配しないで下さい。」
ラリイは心配してくれる者達に笑顔で言葉を返した。
自暴自棄になっているとか、そういう態度ではなかった。
妻だからこそ、側に居たい。
その強い思いを感じるからこそ、誰も何も言えなくなっていたのだ。
ネフィリートも何も言わずに、ラリイの好きにさせた。
「たぶん、霊の力が強まる夜が、勝負時だ。」
ラリイはそう思っていた。夜も深夜に近づけば、きっとドラゴスの霊は再び、自分の前に姿を現すだろうと、ラリイは確信していた。
それまでに、ラリイはネイルの側に居て、ネイルが精神的に負けないように言葉をかけ続けようと思ったのだ。
時にはネイルが好きだと言ってくれた、歌も歌ったりもした。
「ネイル・・・起きたら、ウサちゃんシリーズの話しようね。
まだ、私が持ってないウサちゃんとかネイルの部屋に
あったから、今度お話聞かせてね?」
ラリイはただただ、ネイルが目覚めてくれることを願った。
そして、夜になるまで、必死にネイルに話しかけ続けた。
そんなラリイを他の者達もネイルと一緒に見守り続けていく。
「余を嫌がりながらも、側に居るとは、お前は本当に、
いつも理解に苦しむ女だな・・・フェニ・・・」
ラリイがウトウトしかけた時に、あの声が聞こえた。
どうやら、気づけば夜になっていたようだ。
ラリイがハッとしてネイルを見ると、ネイルは寝たまま、
顔をラリイに向けていた。
しかし、瞳はあの深緑色で、また人を射貫くような視線で、
じっとラリイを見ていた。
「どうか、ネイルを返して下さい。」
「この身体を持ち主のことか?」
「はい。今のドラゴネス国の王であり、私の大事な・・・
誰よりも愛してる夫です。」
「ふん・・・そんな言い方もあのフェニに似ているとは・・・
余が勘違いするのも致し方あるまい。」
ラリイは切実にドラゴスに訴えた。
ドラゴスはつまらなそうな感じでラリイに答える。
それを少し遠くから、ネフィリートとベアードが見守る。
「いいんですか?ネフィリート様?このままで?」
心配するベアードはネフィリートにそう尋ねるが、ネフィリートは
ベアードを制したままであった。
「いや、今は様子を見ようではないか。お父上の霊は、今のところ
荒ぶる様子もなさそうじゃ・・・後はラリイ次第じゃ・・・」
ネフィリートは祈る気持ちで、ラリイとドラゴスのやり取りを見守る。
「余はこのままでも構わないぞ?この身体でも悪くはない。
フェニに似ている其方と、再度ドラゴネス国を治めるのも悪くない・・・」
「それは嫌です。私が愛してるのはネイルだけです。」
「ふん。何ともいけ好かない女だ。あの女の様に・・・」
ラリイのはっきりとした返答にドラゴスは怒りを露わにした。
過去に似たようなことをフェニにも言われたのだろう。
そんな感じがラリイにはした。
「でも、ドラゴス王には感謝しています。」
「何?余に感謝だと・・・?」
「はい。ドラゴス王が居て下さったから、私は愛するネイルに
逢えたんです・・・それは、その事は、心から感謝しております。」
「・・・・・」
ドラゴスは怒りを沈め、黙った。そして、ラリイを見ることを
止め、天井の方を見る。
少しの沈黙の後にドラゴスが口を開く。
「何とも羨ましい奴よ・・・ネイル・・・余の子孫か・・・」
ドラゴスはふっと笑い、目を閉じた。
「ならば、見せてみるがいい。お前達の有様を・・・
それで、このドラゴネス国が衰退した時は、余はお前達を
呪いに再び現れるであろうがな。」
「そうはなりません。だって、貴方の子孫が今後も治めるのですから。」
ラリイは優しい顔でネイルの中にいる、ドラゴスにはっきりと告げた。
ドラゴスは少し笑い、呆れながら言う。
「これはまた・・・恐ろしい女よ。
フェニよりもな・・・あの女よりも、嫌な女だ・・・」
そう言うと、ドラゴスは黙った。
ラリイは、何故かすぐにネイルの側に寄った。
そうしなければと、思ったのだ。
「ネイル・・・起きて・・・この子も待ってるよ?」
ラリイは、フェニから貰った、うさぎのぬいぐるみをネイルの胸に置き、
寝ているネイルにキスをそっとした。
もう、ネイルの中にドラゴスはいないと、ラリイは感じていた。
キスが終わり、ラリイがネイルから顔を離すと、ネイルは再び目を開けた。
「ラ・・・リイ・・・?」
目を開けた、ネイルの瞳は、あのいつもの優しい緑の瞳だった。
そして、すぐに意識を戻したネイルはラリイを抱きしめた。
「ラリイ!大丈夫か?!あの男に何もされてないか?!」
「ネイル・・・大丈夫だよ。もう終わったよ・・・」
「ラリイ・・・ありがとう・・・お前の声はずっと聞こえてたよ・・・」
2人はお互いの無事に安堵し、しばらく抱き合った。
それを遠くから見ていたネフィリートもベアードも、同じように安堵し、2人の様子を温かく見守っていた。
こうして、ラリイ達はなんとかドラゴスを成仏させ、
無事にネイルを救ったのだった。