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第一二章「和解」

「いい?ラリイちゃん?さっき教えた通りだからね?」
「う、うん!」

ラリイは夜、お風呂もちゃんと済ませて、ミミにある物を渡され、
再度ある事を確認されてから、ネイルの寝室に向かった。
ネイルはすでにベッドに寝ていて、ぐったりしていた。
今日の仕事もよっぽど大変だったのだろう。

「ネイル・・・あのね?」
「うん?どうした?」

ラリイが部屋に入って来たのを確認し、話しかけてくるラリイに
ネイルは優しい声で反応する。

「今日ね・・・ネイルにお耳のマッサージしてもいい?」
「ん?俺の耳?」
「うん。メイドのミミちゃんがね、日頃の仕事で疲れてるネイルに、
何かマッサージしてあげたらって言われて、今日はお耳の
マッサージ習ってみたの。」
「へぇー・・・」
「だから、どうかな?ダメ?」
「いや、ラリイがしてくれるなら、お願いしたい。」
「本当!じゃー早速、膝枕するね♪」

ラリイはベットの端に座り、ネイルは嬉しそうにラリイの膝枕に
頭を沈めた。顔は外側に向けて。
ラリイはまず最初に優しくネイルの頭を撫でる。

「今日はこれだけで眠くなりそうだ・・・」

ネイルは気持ちいいのか、眠そうな声で言う。

「いつも俺がラリイを撫でる方が多いけど、たまには逆もいいな・・・
なんか安心する。ラリイが深く俺を愛してくれてる感じがする・・・」
「うふふ、ネイルってば・・・甘えん坊さんになってる。」

ラリイはネイルが甘えてくれてるのが嬉しかった。
今日は疲れもあるからなんだろう。余計に素直になってると、
ラリイは感じていた。

「じゃあ、今度はミミちゃん秘伝のお耳マッサージ用の
クリームで優しくマッサージするね♪」
「うん。頼む。」
「これは誰にでも使える安心なクリームだから!竜人族で
男性のネイルにも大丈夫だから、安心してね♪」
「ふっ、わかった。ラリイだから何も心配してない。」

ラリイの言葉にネイルはクスっと笑った。
そんな説明まで、メイドに習ったのかと思うと、どうしても
おかしかったからだ。

「じゃ、少しずつクリームを塗り込んでいくね?
何か違和感とかあったら、すぐに教えてね?」
「わかった。」

ラリイはネイルを不安にさせないように、出来るだけ口頭で伝えてから行動に移した。

「んん・・・」

一瞬だけ冷っとしたクリームが耳に塗られ、ネイルは少し声を出しかけた。
だか、その後でラリイの温かい手が優しく耳を触り、クリームを広げ、すぐに気持ちの良さが勝り出した。
ラリイは丁寧に丁寧にネイルの耳にクリームを塗り込み、時に耳のツボ刺激してるのか、時々何とも言えない動きにネイルは、良い意味でゾクゾクさせられていた。
ラリイは癒しのつもりでマッサージをしてくれているのだろうが、
ネイルからすれば、欲情を掻き立てられていた。

「ネイル?どう?気持ち良い?」

ラリイは自分が習ったマッサージがネイルに合っているかどうかが、
心配で、不安そうな声でネイルに尋ねる。

「すげぇー気持ちいいよ、ラリイ。」
「本当!良かった!じゃーもう少ししたら反対側ね♪」

ネイルに気持ちいいと言われ、ラリイは一安心した。
これから、耳だけじゃなくて、色々なマッサージも
今度ミミに習おうとラリイは思った。

「なんかいいな・・・こういうの・・・
ハーブもいい香りだし、何よりラリイが俺に尽くしてくれてるって
感じが・・・最高に気分いい・・・」
「もう・・・ネイルってば・・・」

ネイルの感想にラリイは恥ずかしがる。
けど、そこまで喜んでくれているのなら、ラリイは
恥ずかしさよりも、嬉しい気持ちの方が大きかった。

「じゃーネイル、今度は反対側向いて?」
「はいはい・・・」

ネイルはラリイの言われた通りにごろりと反対側に向く。
ラリイはさっきと同じように、また丁寧にネイルの耳をマッサージした。
ネイルも段々、欲情した気持ちよりも、マッサージの気持ち良さで、
眠気に負けていった。

「ネイル・・・?終わったよ?」
「スース―・・・」

ラリイがマッサージを終えた頃にはネイルは、ぐっすりと
寝てしまったようだ。

「うふふ、そんなに良かったのかな?
嬉しいな・・・ネイルがこんなに穏やかな顔して寝てる♪」

やはり、相当疲れていたのか、ネイルは深い眠りについてしまったようだった。
ラリイは、何とかネイルを起こさないように動いて、ネイルをベッドにちゃんと寝かせた。

「ふわぁああ。私も眠くなっちゃった・・・ネイルの横で
寝ようかな?」

ラリイがそう欠伸をしながら言った時に、ネイルが突然目を開いた。
その顔は、険しい顔つきで、辺りを警戒してるかの様だった。
そして、ラリイの存在に気づくと、ニヤリと不敵に笑った。

「まさか、余の寝室にあのフェニがいるとはな。やはり、改心して
余に抱かれに来たのか?」
「え?ネ・・・ネイル?」

突然、わけのわからないことを言い出すネイルにラリイは困惑した。
どうやら、からかっているとか、そんな雰囲気ではない。
それにネイルの声とは思えないけど、低い声で、瞳もいつもの
優しい緑の瞳ではなく、冷酷を帯びたような深緑の瞳だった。
ラリイは何か凄く嫌なものを感じ、眠気も一気に覚めて、
ネイルから距離を取ろうとした。

「どうした?何故逃げる?余の女になりに来たのだろう?」
「ち、違います!それに貴方は誰?!」
「はっ!何を馬鹿なことを。余が誰だと?このドラゴネス国の王、
ドラゴスを知らぬと言うのか?酷い冗談を言うものだ。」

ネイルは別人にでもなったかのように、高笑いをし、ラリイを
また鋭く射貫くような目で見る。

「やはり、お前は面白い女よ。弟の女にしとくなど、勿体無い。
さ!こっちに来い!余のモノにしてやる!」
「嫌!止めて!!!」

まるで何かに操られたかのようなネイルは、ラリイを強引に引っ張り、ベッドに押し倒した。
嫌がるラリイに無理矢理キスをし、身体を弄る。

「ヤダヤダ!止めて!ネイル!しっかりして!!!」

ラリイは大泣きしながら、ネイルを拒絶した。
これではまるで、ネイルじゃない誰かに今にも犯されそうに
なっているではないか。
ラリイはこのままで、無理矢理にされてしまうと思い、仕方がなく、ネイルに目くらましの光の魔法を唱える。

「ぐは!ぐぐぐ・・・」

突然の眩しい光に目をやられた、自分をドラゴスと名乗ったネイルは
堪らずラリイを手放す。そして苦しそうに顔を手で覆い呻いている。
ラリイは今がチャンスだと、急いで部屋から脱出し、ミミ達に助けを呼んだ。
騒ぎに気づいた、ベアードやカミーラ達とも合流したラリイ達は、
再びネイルの寝室に行くと、部屋の真ん中でぐったりと倒れているネイルを発見した。

「おい!ネイル!どうした?しっかりしろ!!!」

ベアードがすぐに駆け寄り、ネイルを抱きかかえ、意識を確認する。
ネイルの顔は真っ青で、まるで死人のように深い眠りについていた。

「ネイル!しっかりして!いや!!!」

ラリイもすぐにネイルの側に駆け寄り、大泣きしてネイルの胸に顔を沈める。
いったい何が起きたのか、その場にいる全員、
誰もわけがわからなかった。
ただ、皆のネイルを心配する声とラリイの悲痛な泣き声だけが、
ネイルの寝室に木霊していた。

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