第一二章「和解」
「叔父上、おはようございます。」
「おはようございます。」
ネイルとラリイは、2人揃って、ネビィルの元に行き、頭を下げて、朝の挨拶をする。
2人の顔はすっきりとしており、ネイルには何か決意めいたものが伺え、しっかりとした顔つきになり、
ラリイの方も幼さが少しなくなったようにも見える。
そんな2人を見て、ネビィルは昨日の夜にちゃんと和解し、
再度夫婦としての絆を深めたのだろうと察した。
「うん。2人ともおはよう。ところでネイル。」
「はい。」
「私はもう今日の朝食が終わり次第に自分の城に帰る。」
「え?」
ネビィルのいきなりの帰城の宣言に、ネイルは驚く。
「もう、お帰りになるんですか?」
ラリイは少しおどおどはしていたが、自分からネビィルに聞いた。
「うむ。私の城の家臣達がうるさくてな。
いい加減に帰って来て欲しいと泣きつかれたのでな。
それに、私が居ないのをいいことに、息子も好き勝手して
いるようで、困ったものだ。」
「ネルド王子がですか?」
「そうだ。あいつは、お前と違って、我が儘だから困る。」
朝食の紅茶を啜りつつ、ネビィルは苦笑いしながら、ネイル達と会話していた。
「それに、もういい加減、私が居なくても大丈夫だろう。
新婚で浮かれた気分もおさまっただろうしな。」
ネビィルは、ネイルとラリイを交互に見る。
その顔は、最初の頃より、ずっと優しい顔だった。
ラリイは思った、ネイルと似ていて、この人も本当は不器用で
優しい方なんじゃないだろうかと。
「次に逢う時は、お前達の子供の顔を見る時だな。」
正門の所で、ネイル達は叔父を見送りに来ていた時に、
ネビィルから、からかい半分でそう言われていた。
ネイルもラリイも顔を真っ赤にしていた。
「気が早いですよ。叔父上。」
「何、わからんぞ。お前は兄上似だからな。それから・・・」
ネビィルはラリイの方に顔を向けた。その顔は、とても優しい笑顔だった。
「ラリイ王妃。今後も不甲斐ない、私の甥のネイルを頼む。」
「はい!」
ラリイもとびっきりの笑顔で返事をした。
その顔を見て、ネビィルは安心して、自分の城に帰って行った。
この2人なら大丈夫だろうと確信して。
それと入れ替わるようにして、今度はラリイの国に居た、
ラリイの幼少の頃からの世話になっていたメイド達が
無事にドラゴネス国に着いて、城に到着していた。
「ラリイ様!お久しぶりです!」
「ミミちゃん!逢いたかったよぉ!」
「ラリイ様!私達もです!」
「リリちゃんも、レラちゃんも!来てくれて有難う!」
ラリイは久しぶりに心からの笑顔で、大好きなメイド達に
囲まれ、幸せそうだった。
今後はまたずっと一緒に居れれるのが嬉しいのだろう。
ひっきりなしに耳をパタパタさせている姿に、ネイルも
微笑まずにはいられなかった。
「こんなことなら、もっと早くに呼ぶべきだったな。」
「ええ、そうですね。」
ネイルの言葉に、カミーラも賛同する。他国に嫁ぐ際に、自分の馴染みの
メイドも連れてくることは何も珍しい事ではなかったのだ。
ただ、ドラゴネス国は昔の事件もあって、鳥人を必要以上に
迎えるのがタブーな雰囲気があったから、最初は出来ない感じが
あったが、今はラリイは王妃でもあるのだし、ネイルのこれまでの
行動によって、大分ドラゴネス国では、鳥人へのイメージが変わったのだ。
だから、今回のメイドの受け入れは良い機会だった。
「ネイル。ちょっとメイドの子達と一緒に自分のお部屋に行っていい?」
「ああ、積もる話もたくさんあるだろうから、今日はゆっくりすればいい。」
「ネイル王様。カミーラ様。初めまして、お世話になります。」
ラリイのメイド達は揃って、ネイルとカミーラに挨拶をする。
「うん。今後は妻のラリイの事をよろしく頼む。
俺では支えきれないところを、ちゃんと見てやってくれ。」
「はい!」
「ラリイ王妃の今までの日程なんかは、後でメイド長から説明を
受けられるようにしておきますので、確認して下さい。」
「承知致しました。カミーラ様。」
メイド達は挨拶が済むと、ラリイに引っ張られるようにして、消えて行った。
まるで、友達のような、姉妹のような、仲の良さだ。
「やっと、ラリイにも同性で心強い仲間が出来て良かった。
流石にメディーナに甘えっぱなしにもいかないからな。」
「そうですね。姉もそろそろ結婚を決めろと父に
言われてるようですから。」
「そうだったのか?」
「ええ。だから、あの時も、自分に時間がある内に、
ラリイ王妃を救えて良かったと姉も言ってました。」
「じゃあ、感謝も込めて、メディーナの結婚が決まったら、盛大に王家からもお祝いさせて貰わないとな。」
「そんなことしたら、逆に恨まれますよ。ネイル。」
悪気がないネイルの提案に、カミーラは呆れていた。
姉のあの性格だ。喜ぶわけがない。むしろ嫌味に取るだろう。
「噂と全然違って、ネイル様は凄く優しかったね!」
「うん!ラリイちゃんを見る顔は、あれは恋する男だったもの!」
「こんなにラブラブだったんなら、私達要らなかったんじゃない?」
「もう!皆、好き勝手言って!!」
「あはは」
「うふふ」
今のラリイの自室は姦しかった。外にも笑い声が聞こえてしまいそうな程に。
メイド達は来て、早々にラリイをいつもの様にからかう。
ラリイも怒った振りはするが、昔の日常が戻って来たことが、
心から嬉しかった。
「しかし、本当にここのメイドはラリイちゃんの扱いが雑ね。」
「本当よ!ラリイちゃんの髪の毛のケアとか全然してないし。」
「服さえもラリイちゃんに全然合ってない!」
ラリイのお抱えであるメイド達は、次々に愚痴を言いながらも、
ラリイのケアをどんどんしていく。
「今度、いつも使ってた、シアバターのヘアクリーム買いましょう!
そんなに高いものじゃないし、ネイル王もケチらないわよね?」
「自分の妻が綺麗になるのに反対する王なんかいないわよ!」
「洋服も、しばらくは国あったのをいっぱい持ってきたら、
これに着替えましょう♪」
流石、ラリイの事をわかっているメイド達は、あれよあれよと
言う間にラリイに似合う服や、髪型などにしていく。
「耳のケアさえしないとか、マジで最低ね。」
ミミちゃんとラリイに呼ばれたメイドは、昔から使ってるいつものクリームを取り出して、ラリイの耳の羽にクリームを優しく塗る。
ハーブのいい香りが辺りに広がり、ラリイの心も一緒に解きほぐしていく。
「他種族だからって、こんなに王妃に何もしないとかある?
ラリイちゃん・・・今後は私達がしっかりお世話するからね!」
「うん♪お願いします♪」
ラリイはメイド達に子供の頃からいつもしてる、心から笑顔で
微笑んで見せた。
メイド達も、またラリイと居られるのが嬉しいようだ。
「今度はラリイちゃんの子供の世話もしたいね♪」
「そうよね♪きっと可愛いんだろうなー♪」
「もう!リリちゃんも、レラちゃんも気が早いよぉ!」
「何言ってるの!前々から、言ってたでしょ!ラリイちゃんの
子供にも仕えるのが夢だって!」
「そうそう、それが今後叶うかもしれないんだから、
喜ばずにはいられないわよ♪」
「あう・・・」
ラリイはまさか子供の事で、夫以外にも、メイド達からこんなに、
期待されるとは思わず、苦笑いしてしまった。
けど、ラリイはますます安心していた。
ネイルと、心許せるメイド達がいてくれれば、
ラリイは今後どんな困難でも乗り越えられそうだと思ったから。
「おはようございます。」
ネイルとラリイは、2人揃って、ネビィルの元に行き、頭を下げて、朝の挨拶をする。
2人の顔はすっきりとしており、ネイルには何か決意めいたものが伺え、しっかりとした顔つきになり、
ラリイの方も幼さが少しなくなったようにも見える。
そんな2人を見て、ネビィルは昨日の夜にちゃんと和解し、
再度夫婦としての絆を深めたのだろうと察した。
「うん。2人ともおはよう。ところでネイル。」
「はい。」
「私はもう今日の朝食が終わり次第に自分の城に帰る。」
「え?」
ネビィルのいきなりの帰城の宣言に、ネイルは驚く。
「もう、お帰りになるんですか?」
ラリイは少しおどおどはしていたが、自分からネビィルに聞いた。
「うむ。私の城の家臣達がうるさくてな。
いい加減に帰って来て欲しいと泣きつかれたのでな。
それに、私が居ないのをいいことに、息子も好き勝手して
いるようで、困ったものだ。」
「ネルド王子がですか?」
「そうだ。あいつは、お前と違って、我が儘だから困る。」
朝食の紅茶を啜りつつ、ネビィルは苦笑いしながら、ネイル達と会話していた。
「それに、もういい加減、私が居なくても大丈夫だろう。
新婚で浮かれた気分もおさまっただろうしな。」
ネビィルは、ネイルとラリイを交互に見る。
その顔は、最初の頃より、ずっと優しい顔だった。
ラリイは思った、ネイルと似ていて、この人も本当は不器用で
優しい方なんじゃないだろうかと。
「次に逢う時は、お前達の子供の顔を見る時だな。」
正門の所で、ネイル達は叔父を見送りに来ていた時に、
ネビィルから、からかい半分でそう言われていた。
ネイルもラリイも顔を真っ赤にしていた。
「気が早いですよ。叔父上。」
「何、わからんぞ。お前は兄上似だからな。それから・・・」
ネビィルはラリイの方に顔を向けた。その顔は、とても優しい笑顔だった。
「ラリイ王妃。今後も不甲斐ない、私の甥のネイルを頼む。」
「はい!」
ラリイもとびっきりの笑顔で返事をした。
その顔を見て、ネビィルは安心して、自分の城に帰って行った。
この2人なら大丈夫だろうと確信して。
それと入れ替わるようにして、今度はラリイの国に居た、
ラリイの幼少の頃からの世話になっていたメイド達が
無事にドラゴネス国に着いて、城に到着していた。
「ラリイ様!お久しぶりです!」
「ミミちゃん!逢いたかったよぉ!」
「ラリイ様!私達もです!」
「リリちゃんも、レラちゃんも!来てくれて有難う!」
ラリイは久しぶりに心からの笑顔で、大好きなメイド達に
囲まれ、幸せそうだった。
今後はまたずっと一緒に居れれるのが嬉しいのだろう。
ひっきりなしに耳をパタパタさせている姿に、ネイルも
微笑まずにはいられなかった。
「こんなことなら、もっと早くに呼ぶべきだったな。」
「ええ、そうですね。」
ネイルの言葉に、カミーラも賛同する。他国に嫁ぐ際に、自分の馴染みの
メイドも連れてくることは何も珍しい事ではなかったのだ。
ただ、ドラゴネス国は昔の事件もあって、鳥人を必要以上に
迎えるのがタブーな雰囲気があったから、最初は出来ない感じが
あったが、今はラリイは王妃でもあるのだし、ネイルのこれまでの
行動によって、大分ドラゴネス国では、鳥人へのイメージが変わったのだ。
だから、今回のメイドの受け入れは良い機会だった。
「ネイル。ちょっとメイドの子達と一緒に自分のお部屋に行っていい?」
「ああ、積もる話もたくさんあるだろうから、今日はゆっくりすればいい。」
「ネイル王様。カミーラ様。初めまして、お世話になります。」
ラリイのメイド達は揃って、ネイルとカミーラに挨拶をする。
「うん。今後は妻のラリイの事をよろしく頼む。
俺では支えきれないところを、ちゃんと見てやってくれ。」
「はい!」
「ラリイ王妃の今までの日程なんかは、後でメイド長から説明を
受けられるようにしておきますので、確認して下さい。」
「承知致しました。カミーラ様。」
メイド達は挨拶が済むと、ラリイに引っ張られるようにして、消えて行った。
まるで、友達のような、姉妹のような、仲の良さだ。
「やっと、ラリイにも同性で心強い仲間が出来て良かった。
流石にメディーナに甘えっぱなしにもいかないからな。」
「そうですね。姉もそろそろ結婚を決めろと父に
言われてるようですから。」
「そうだったのか?」
「ええ。だから、あの時も、自分に時間がある内に、
ラリイ王妃を救えて良かったと姉も言ってました。」
「じゃあ、感謝も込めて、メディーナの結婚が決まったら、盛大に王家からもお祝いさせて貰わないとな。」
「そんなことしたら、逆に恨まれますよ。ネイル。」
悪気がないネイルの提案に、カミーラは呆れていた。
姉のあの性格だ。喜ぶわけがない。むしろ嫌味に取るだろう。
「噂と全然違って、ネイル様は凄く優しかったね!」
「うん!ラリイちゃんを見る顔は、あれは恋する男だったもの!」
「こんなにラブラブだったんなら、私達要らなかったんじゃない?」
「もう!皆、好き勝手言って!!」
「あはは」
「うふふ」
今のラリイの自室は姦しかった。外にも笑い声が聞こえてしまいそうな程に。
メイド達は来て、早々にラリイをいつもの様にからかう。
ラリイも怒った振りはするが、昔の日常が戻って来たことが、
心から嬉しかった。
「しかし、本当にここのメイドはラリイちゃんの扱いが雑ね。」
「本当よ!ラリイちゃんの髪の毛のケアとか全然してないし。」
「服さえもラリイちゃんに全然合ってない!」
ラリイのお抱えであるメイド達は、次々に愚痴を言いながらも、
ラリイのケアをどんどんしていく。
「今度、いつも使ってた、シアバターのヘアクリーム買いましょう!
そんなに高いものじゃないし、ネイル王もケチらないわよね?」
「自分の妻が綺麗になるのに反対する王なんかいないわよ!」
「洋服も、しばらくは国あったのをいっぱい持ってきたら、
これに着替えましょう♪」
流石、ラリイの事をわかっているメイド達は、あれよあれよと
言う間にラリイに似合う服や、髪型などにしていく。
「耳のケアさえしないとか、マジで最低ね。」
ミミちゃんとラリイに呼ばれたメイドは、昔から使ってるいつものクリームを取り出して、ラリイの耳の羽にクリームを優しく塗る。
ハーブのいい香りが辺りに広がり、ラリイの心も一緒に解きほぐしていく。
「他種族だからって、こんなに王妃に何もしないとかある?
ラリイちゃん・・・今後は私達がしっかりお世話するからね!」
「うん♪お願いします♪」
ラリイはメイド達に子供の頃からいつもしてる、心から笑顔で
微笑んで見せた。
メイド達も、またラリイと居られるのが嬉しいようだ。
「今度はラリイちゃんの子供の世話もしたいね♪」
「そうよね♪きっと可愛いんだろうなー♪」
「もう!リリちゃんも、レラちゃんも気が早いよぉ!」
「何言ってるの!前々から、言ってたでしょ!ラリイちゃんの
子供にも仕えるのが夢だって!」
「そうそう、それが今後叶うかもしれないんだから、
喜ばずにはいられないわよ♪」
「あう・・・」
ラリイはまさか子供の事で、夫以外にも、メイド達からこんなに、
期待されるとは思わず、苦笑いしてしまった。
けど、ラリイはますます安心していた。
ネイルと、心許せるメイド達がいてくれれば、
ラリイは今後どんな困難でも乗り越えられそうだと思ったから。