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第十一章「家族」

「母上、お久しぶりです。」
「なんじゃ、ネビィルかえ?今更挨拶に来るとか、お前は
相変わらず愛想が悪い子じゃ・・・」

ネイルがラリイに逢いに行ってる間、ネビィルは自分の母で
あるネフィリートに久しぶりに会いに来ていた。
ネフィリートは、いつもの様に不愛想な息子に嫌味を言いつつも、
穏やかな表情で、親子の対面をしていた。

「母上・・・あの娘、ラリイの事を、今回のこの騒動も含めて、
色々とご存知でしたね?」
「まぁーのぉ。わしが一番初めにネイルの嫁に相応しいと
認めたくらいじゃぞ?当たり前じゃ。」
「全く。相変わらずお人が悪い。なら、何で今回は助けて
やらなかったのですか?」

ネビィルはやれやれと言った態度で母に言う。

「まぁ、今回はのぅ、2人に揃ってガツンと言ってくれる存在が
必要だったんじゃよ。」
「なら、それは母上でもいいのでは?」
「嫌じゃよ。ネイルには構わんが、ラリイに嫌われたら、わしの楽しみが減るからのぉ!」
「そ、そんなことで、私を呼び寄せたんですか・・・」

母の意外な答えに、流石のネビィルも辟易した。
噂では、相当にラリイに入れ込んでいるとは聞いていたが、
ここまでとは、ネビィルも想像していなかった。
母が他人にここまで興味の持てる存在だったのだと再認識させられた。

「それに、わしなんかより、ネイルからすれば、お前の言葉の方が
重いじゃろうよ。お前の事を父の様に思っておるじゃろうからのぉ。」
「まぁ、ネイルは私を慕ってはくれているとは思いますが・・・」
「ネイルの気質は、実の父より、お前に似てるしのぉ。」
「愛想の悪さもですか?」
「そんなとこじゃ。」

ネビィルの言葉にネフィリートはその通りと言わんばかりの顔で言う。
ネビィルは母の態度に苦笑いしていた。

「それにわしは女じゃ。ネイルには、男の先輩として、
王としての何たるかを教えてくれる存在が今一度必要だと思ったのじゃ。
まーラリイに対して、あんなに腑抜けになるとは、
わしも想像しておらんかったがのぉ。」
「いや、兄上も最初は義姉上と結婚出来た時は、酷かったですよ?」
「そう、言えばそうじゃったなぁ。やっぱり、親子かえ?」
「ふふ、そうですね。」

ネビィルはネイルと亡き兄を比べて、ネフィリートと笑い合った。
似なくていいところが似るのはどうしようもない。

「しかし、ラリイが悪い子じゃないのは、お前もわかったじゃろう?」
「ええ。娘が世話になったメイドに泣きながら訴えられました。
ラリイ王妃はそんな人じゃないと。
こんな事は私も生まれて初めての経験です。」
「ほう?」
「あの娘は、私の娘の墓をいつも気にかけてくていたと、言われました。そして、娘の世話になっていたメイド達にも、いつも優しかったと。」
「そうじゃ。ラリイは、あの子は、そんな子じゃよ。
本当に、フェニ様に良く似ている。」
「母上が一番世話になったとよく言われる、あのフェニ様ですか?」
「そうじゃ。フェニ様がいなければ、わしは旦那と結婚できず、お前もお前の兄もネイルさえも生まれて来なっただろうよ。」
「その話は、子供の頃に散々聞かされましたね。」
「大事なことじゃからな!2回と言わず、何度でも言うぞ!」
「母上、流石にもう大人になったので十分です。」

ネビィルは丁寧に母に断った。2回どころの話ではない。
下手をすれば、200回、いや1000回くらいは
聞いてるかもしれないのだ。
流石に今更、また耳にタコが出来そうなほど聞きたくもない。

「母上は、あの娘が子供の事で悩んでる事も存じてますよね?」
「ああ、いつかは話してやらなければと思っていた。」
「なら、早く話してやって下さい。そうすれば、今回の
この騒動にも決着がつくでしょう。」
「いや、もうとっくに着いておるよ。ネイルは今頃ラリイと、
また心を通わせてるはずじゃ。老婆の出る幕じゃないじゃろうて。」
「ふぅ・・・全く、結局は母上の我が儘に私やネイルが
巻き込まれた感じですね。」
「何を言う!こんなことが無ければ、母の顔をろくに見に来ぬ、
薄情者の息子の癖に!」
「はい、その通りです。申し訳ありません!母上!」

ネビィルは久しぶりに童心に帰って、母に口答えしつつ、母と楽しく会話をしていた。
これで、ネビィルは今回の事は済んだなと確信していた。
母であるネフィリートが自分をこれ以上引き留めないと言う事は、
自分の今回の役目が終わったとわかったからだ。
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