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第十一章「家族」

ネイルは今日の仕事をしっかり終えて、自分の寝室に戻る所だった。
そこにカミーラの使いの者が現れ、ネイルにある報告をする。

「何だって?!ラリイがカミーラの屋敷で倒れて、
寝込んでるだと?!」

ネイルは慌てて、叔父を探して、その報告をして、ラリイに逢わせて欲しいと願い出た。

「たとえ、駄目だと言われても、今回ばかりは聞く気はないぞ。」

ネイルは心の中で、すでにそう決意していた。だが。

「構わん。行くがいい。久しぶりに逢いたいだろうからな。」

と、あっさり認められて拍子抜けした。
しかし、叔父がそう言うのなら、気が変わらない内にと、ネイルは
急いでカミーラの屋敷に向かった。

「ラリイ!!!何処だ!!!」

カミーラの屋敷に着くなり、ネイルは大声を上げながら、
カミーラの屋敷の玄関を盛大に開けて、手当たり次第に部屋を
開けていく。
カミーラの屋敷に仕える者達がネイルの行動に動揺する。

「ネイル。みっともない真似は止めて下さい。」
「本当に!王様なんだから、恥ずかしい事は辞めなさいよね!」

メディーナ姉弟は階段からネイルを見下ろし、2人で注意する。
ネイルは2人を見つけて、それでも叫んだ。

「ラリイは?!何処にいるんだ?無事なのか?どれだけ酷いんだ?!」

2人に捲し立てるようにネイルはラリイの容体を聞く。
メディーナ達は呆れるように互いの顔を見て、ネイルに言う。

「ラリイちゃんが倒れたのは嘘よ。」
「はぁ?嘘??」
「ええ。そうでもしなければ、ネイルがすぐにラリイ王妃に逢うのは、
かなり難しいと思いましたので、嘘をつきました。」
「な・・・なんだ・・・良かった・・・」

ネイルは安心からか、その場にへたり込んでしまった。
が、直ぐに立ち上がり、ラリイに逢わせてくれと2人に言う。

「ダメよ。あんたには言わなきゃいけないことが、いっぱいあんだから!!!」
「何でだ?!先に一目でもいいから、ラリイに逢わせてくれ!
頼む!!!」
「本当に、あの数日があっても、嫁馬鹿は治りませんね・・・」

姉にダメだと言われているのに、それでも食い下がるネイルに、
流石に今回はカミーラも呆れ果てた。
メディーナは頑として譲らず、ますはラリイに逢う前に、ネイルに話し合いをさせた。

「本当にあんたは大馬鹿者よ!!!」

そうメディーナに言われた時には、ネイルは頬を容赦なく
メディーナに叩かれていた。
容赦なく叩かれた頬の痛みで、ネイルは少しだけ自分を取り戻していた。

「な、何をするんだ・・・メディーナ・・・」

ネイルはいきなり自分の頬を叩かれ、動揺しつつも、抗議した。

「あんた・・・ラリイちゃんがどうして今回こんなことになったか、本当にわからないわけ?」
「それは、俺がラリイの意見を聞きすぎたから・・・」
「違うわよ!!もっと根本的な事にネイルは気づいてないの!」
「根本的な事?何だよそれ?」
「じゃー言うけど、ラリイちゃんが子供の事で悩んでたなんて、
あんた知ってた?」
「え?」

メディーナの言葉にネイルは我を失いそうになった。
ラリイが子供の事で悩んでいた?寝耳に水だった。

「ほら見なさい。何にも知らなかったんでしょ?」
「だ、だって、ラリイは何も俺に・・・」
「言えるわけないでしょ。ラリイちゃん優しいし、責任感は
人一倍、強いんだもの。」
「そんな・・・じゃあ、あの時泣いていたのは、本当は・・・」

ネイルは過去の事を必死で思い出していた。
悪夢を見たから泣いていたと言っていたのは、あれは嘘だったのだ。
本当は子供の事で悩んでいたのに、自分に話すことも出来ずに、
苦しんで泣いていたのだと。

「心当たりあるみたいね。本当に情けないったらありゃしない。」
「でも、なら、何でラリイはあんなに、国の為に一生懸命になって意見を・・・」
「それもね、王妃として必死に認めて貰おうとしてたのよ。
ラリイちゃんを快く思わないメイドや貴族達にね。」
「そんな・・・ラリイはそこまで1人で苦しんで・・・」

ネイルはラリイが1人でそこまで苦しんでいた事を知って、
ショックを隠せなかった。
心がちゃんと通じ合ってると思っていたのに。
ラリイは自分を傷つけまいとして、辛いのを必死に隠して、ひたすら我慢していたのだ。

「一部のメイド達がラリイ王妃を邪険に扱ったようです。
まさか、結婚されてから、こんな目に遭わせてしまうなんて。
私も凄く反省してます。」
「ラリイはメイド達からも、いじめられてたのか?!」
「ええ、特にネイルから、引き離された時に、酷く陰湿に。」
「そんなラリイが何をしたって言うんだ・・・」

ネイルはその報告を聞いて、怒りが沸々と湧いた。

「そのラリイをいじめた一部のメイドが、ラリイに子供の事で不安になるような事を言ったんだな?」
「その様です。それからは、ラリイ王妃なりに行動をしますが、それが裏目に出て、今の有様です。」
「クソ!!!」

ネイルはカミーラの屋敷の客室にある、大きなテーブルを力任せに叩いた。
ネイルは完全に物に八つ当たりしていた。
テーブルに乗っていた花瓶が倒れそうになる。

「全く・・・しょうがないですね。」

カミーラはネイルに呆れつつも、同情はしていた。
メディーナもいい加減、許したのか、ラリイは自分の部屋に
いるとネイルに教えると、ネイルは有難う!と吐き捨てるように
言い、急いでメディーナの部屋に走っていった。

「これで少しは懲りたのかしら?」
「さぁ?どうですかね?」

呆れながら、弟に確認するメディーナに、カミーラも同じように呆れつつ、姉に返事をするしかなかった。

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