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第一章「ドラゴネスでの日々」

「ラリイ様にそんなことさせられません!!!」
「いいえ、やらせて下さい!私もお世話になってますから!」

教会の場所を知ってから、ラリイはドラゴネス城居るのではなく、
この教会にほとんどいた。
1週間近くになるとは言え、ネイルを始め、城での皆の態度は
相変わらず冷たいものだった。
一部のメイド達とは打ち解けた感じはあるものの、
やはり居心地の悪い城に居るよりも、ここで神父様と一緒に
教会の活動をしている方が何より楽しくて、気が楽だった。
なので、今、教会内を掃除しようとしたところで、神父に
猛反対されている所である。
最近は食材も持ち込んで、朝、昼、時には夕食までここで食べる。

「ラリイ様は大事な御身の方です!
もし、こんなところで怪我させたとなれば、私は地獄に落ちたとしても償いきれません!」
「そんな大袈裟すぎますよ!モア神父様は!」

ラリイはモア神父の言葉に不謹慎ながら笑ってしまう。
だが、教会内の掃除も、立派な活動なのだから、しょうがない。
それにラリイは子供の頃から、自国でそうした活動に参加していたから、何も不満に思う事もない。
むしろ、大好きなくらいなのだ、身体を動かすのは。

「ですが・・・」

モア神父は本当に心から心配している。
ラリイは心配する神父に笑顔で答える。

「危なそうな場所はしないでおきますから!
それなら、いいですよね?」
「はい、ぜひそうして下さい。出来る限るのとこでいいですから。」
「はい!」

ラリイは元気よくモア神父に返事をして、早速掃除を始める。
ドラゴネスの貴族達が見たら、ラリイの言動は、
如何に教会の活動とは言え、異端に映るだろう。
貴族達からしたら、下僕がする仕事とそう変わらないように
しか思えないだろうから。
だが、ラリイは気にしないことにした。
彼らにどう思われようとも、他に困ってる人が助かるならそれでいいのだ。
最近、ラリイが教会にいることを知った、ベアードやその部下達が、
余った食料をくれたり、薬品を持ってきてくれたりして、
怪我した兵士や、貧困に苦しむ者が、多く訪れるようになっていた。
ラリイに治療や回復魔法をかけて貰いたがる兵士もいるほどだ。
そして、神父が望んでいた通りに、葬式が行われた際には、
ラリイは鎮魂歌を歌ったりもさせて貰った。
ラリイに歌って貰った遺族達は、感謝して、教会に
かなりの寄付もくれたらしい。
城の外れにあった、教会は、今は結構活気のある場所になっていた。
だが、それを快く思わない者がいる。
ネイルとカミーラである。

「最近、城内で姿が見えないと思ったら、教会に入り浸ってるのか、あの女。」
「みたいですね。ベアードが要らぬ助力をしてるみたいで、深入りするなと警告はしたんですが。」
「あいつは、本当に何がしたいんだ?」
「さぁ?私にもさっぱり。」

ネイルとカミーラは外交に関する書類をお互いに見ながら、
政務室でそんな会話をしていた。

「と、言うか、そろそろ帰って貰ってもいいんじゃないのか?」
「私も、そう思うのですが、離れにいらっしゃる、ネフィリート様が、
まだ帰すなと言ってるようでして。」
「おばあ様がか?」
「はい。」
「ふぅ、ベアードといい、おばあ様といい、あんな鳥女に
何を期待しているんだ。」

ネイルはカミーラの話を聞いて、うんざりする。
廊下で会えば、あの女は確実に挨拶してくる。
こちらは無視するのに、それでも毎回丁寧にしてくるのだ。
何故だかネイルはそれにイライラしていた。
こちらが無視してるのだから、無視すればいいものを。
感じたくもない、罪悪感を感じてしまうではないか。と。

「あんな場所の為に、あいつはなんであんなに頑張れるんだ?
いつかは、自分は居なくなってしまうのに・・・」

ネイルにはラリイのすることが、理解出来なかった。
夫婦になるのなら、今後の事も考えて、ラリイが一生懸命に
教会を立て直そうとするのも、わからなくもない。
だが、ラリイはあくまで客人だ。
誰からも褒められるわけでも、認められるわけでもないのに、
楽しそうに活動している。

「なんか、ムカつく・・・」

ネイルは書類を見つつも、ラリイの事を考えて、少しイライラして、そう呟いた。
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