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第十一章「家族」

ネイルと結婚してから、ラリイも充実した日々を過ごしていた。
カミーラやベアードから、嫁馬鹿と散々言われているネイル。
そう言われても仕方がないほど、ネイルはラリイのする事なす事に
文句をほとんど言わない。大体が賛成するからだ。
確かにラリイも、何か悪い事をするわけでもないのだから、
カミーラもベアードも反対することはないのだが・・・

「ラリイが言うんだから、間違いないだろう。」
「ラリイの好きにすればいい。俺は反対しないよ。」

など、こういう返事しかしないから、カミーラ達に嫁馬鹿
と言われてしまっていたのだ。

「ネイルは王なのに、あんなに王妃の言いなりでいいんですかねぇー
少し心配になります。」
「まぁ、ラリイ王妃は悪い事してるわけでもなし、むしろドラゴネス国に
とっては有益なことが多いから、俺達も文句言えないけどよぉ。」

バカップル夫婦。
2人が言いたいのはまさにそれだった。
新婚とは言え、気が緩みすぎてはいないか?
それが一番のカミーラ達の心配だったのだ。
ラリイはまだマシかもしれないが・・・問題はネイルの方かもしれない。

「今度、ネフィリート様にお説教して貰った方がいいかもしれませんね。
私やベアードの忠告じゃ、聞かないでしょ?」
「だな・・・かと言って、ラリイ王妃からじゃ・・・
あの調子じゃ・・・ラリイ王妃が大変になりそうだからな・・・」
「はぁ・・・」

溜息をつくカミーラとベアードの視線に気づかず、ラリイ達は一生懸命に、ドラゴネス国の事を考え、話し合っていた。
2人は2人なりに、頑張ってはいるつもりだったのだ。

「私も王妃になったんだから、しっかりしなくちゃ・・・」

ラリイは、充実した日々を過ごしてはいたが、日に日に感じる、世継ぎの事。
つまりは、ネイルと自分の子供の事を考えるようになった。
いや、考えるよりも悩み事に近い。

「あんなに愛されてるとは言え、ラリイ王妃様はフェニキア人・・・
将来、どんな子が世継ぎになるのかしら?」
「もしかして、ラリイ王妃様に似た子だったら、鳥人の子になるって
ことでしょ?そしたら、前代未聞よね?」
「でも、お2人の子なんだから、純粋な竜人の子は無理よ。」

ある日、ラリイはメイド達のこうした噂話をするのを聞いてしまった。
それから、こうした話は、メイド達だけでなく、貴族が集まる場所
でも、時々耳にするようになった。
この噂話を聞いてから、ラリイは子供の事を考えるのが
急に怖くなってしまっていた。

「ネイルはあんなに望んでくれているけど・・・でも怖いよ。
もし、ドラゴネス国の次期王に相応しくない子が出来てしまったら?
そんな子供を産んでしまったら・・・ネイルも私に失望するかもしれない。
外見だけで、皆に愛されない子になってしまうなんて、私は耐えきれないよぉ・・・」

ラリイは、考えると怖くなり、泣いてしまう夜もあった。

「どうしたんだ?ラリイ?なんか怖い夢でも見たのか?」

時々、ネイルは泣いてるラリイに気づいて、ラリイを優しく慰める。
ラリイはこの悩み事をネイルに相談することは出来なかった。
だから、時々悪夢を見て泣いてしまったと嘘をついていた。
だが、それも何度もつける嘘ではないだろう。
いつか、ネイルはラリイが、もっと違う事で悩んで泣いていると
気づくだろうとラリイは思っていた。
それまでには、どうにかしないと・・・。
それでラリイはまず、王妃として、相応しくあろうとしていたのだ。
世継ぎの事で否定的な意見を言う、メイド達や貴族達に、少しでも自分を認めて貰おうと。
しかし、それは全てが上手くいくわけにはいなかった。
ラリイの行動が出過ぎたものだと、反感を抱くものが出てきたからだ。
そして、それはある人物の耳にまで届くようになっていた。

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