第一章「ドラゴネスでの日々」
「ここだよね・・・・?」
メイドに描いてもらった地図を頼りに、ラリイは教会を探し出す。
数分もしないうちに見つけたのは良かったのだが、
目の前にあったのは、教会と言うよりは、小屋に近いような
作りの建物だった。
「ドラゴネス国は大国だから、もっと立派な建物なのかなぁー
って思ってたけど・・・」
自分の想像とあまりにも違くて、ラリイは絶句しかけた。
明らかに手入れされていない。
ドラゴネス国では信仰は大事にされていないのだろうか?
「この様な場所に、どちら様でしょうか?」
「はっ!」
ラリイは背後から声を掛けられて、驚く。
そこには教会の神父らしい人物がラリイを不思議そうに見ている。
「ま、まさか?!」
しかし、神父らしい中年の竜人の男はラリイを見るなり、目を開いて、嬉しそうな顔でラリイに言う。
「ああ、なんてことだ!
あの有名なフェニキア国の王女である、ラリイ様に出逢えるなんて!
おお、神よ、感謝いたします。
一度は近くでお会いしたいと願ってた方にお会い出来る機会を
私に恵んで下さり、ありがとうございます。」
と、大袈裟に言われてしまった。
いや、当人からしたら、大袈裟ではなく、本気なのだが。
「あ、あの!そんなに畏まらなくても!!」
神父の態度にラリイの方が困ってしまう。
ラリイは神父に、いつも日課にしている、祈りの儀式をさせて欲しいと頼むと、神父は快く引き受けてくれ、祈りの間に案内してくれた。
「この様な場所にラリイ様をお招きするなど、本当にお恥ずかしい限りですが・・・」
神父はそう言いながら、教会内をラリイに見せる。
外見も手入れされていなければ、内部も何もせずに
朽ちたままな状態になっている。
よく、この神父はここに住んでいるものだと、ラリイは驚く。
「昔は、ネイル様の親の代の王は、まだ信仰が厚かったのですが、ネイル様の代になってから、教会にも見向きもされなくて、王に就かれてからは、一度も祈りに来られたこともありません。」
「そ、そうなんですか?」
「はい、残念なことなのですが・・・」
ラリイが日課の祈りの儀式を済ませてから、神父はラリイを簡素なキッチンに誘い、お茶を出して、教会の現状を教えてくれた。
「信仰心が高い、フェニキアでは、信じられないでしょう?」
「ええ、まぁ・・・」
ラリイは神父の話を、聞きながら、お茶を飲んで、神父に同情した。
ラリイの国、フェニキアでは、ラリイの世界の神の聖地である、
大教会が存在する。
各地にある教会の総本山だ。
創造主である、ナルカディアを神として、エンガイス教とも言われる。
だから、フェニキアは歴史的にも戦争に巻き込まれると言うことが
ほとんどない。
そして、どの国よりも信仰に厚いので知られているのは、それがあるからなのだ。
だから、先ほどの神父の反応は、大袈裟ではなく、本当にラリイと言う存在に憧れを抱いていたのだろう。
教会関係者なら、ラリイの存在を知らない者は居ない。
「フェニキアの歌姫」
ラリイには、実はそういう異名がある。
大教会が、他国に何か支援する際にフェニキアと協力して
行うのだが、その使節団にラリイも時に参加することがある。
そして、聖歌などを歌う際に、ラリイは代表として歌うのだ。
その歌声に救われたと言うものが実は結構いるらしい。
当のラリイは、ただただ、困ってる人の役に立てばと思い、
歌っているだけなのだが、本人が思う以上に評判はかなり良い。
「いつか機会があったら、ラリイ様の歌声を聞けたらなどと、
期待してしまいそうになりますね、あはは。」
「そんな、お恥ずかしいです。」
神父の期待する眼差しに、ラリイは恥ずかしがる。
ドラゴネスには居場所がないと思っていたラリイだが、
今日この教会に来て良かったと思った。
「ぜひ、ご滞在中にはいつでもお越し下さい。」
神父は笑顔でラリイにそう言ってくれた。おかげで明日から、またいつもの日課の祈りの儀式が出来そうで、ラリイも安心する。
こうして、自分で出来ることを探せばいいのだ。
意外にどうにでもなるかもしれないとラリイは前向きに考えた。
メイドに描いてもらった地図を頼りに、ラリイは教会を探し出す。
数分もしないうちに見つけたのは良かったのだが、
目の前にあったのは、教会と言うよりは、小屋に近いような
作りの建物だった。
「ドラゴネス国は大国だから、もっと立派な建物なのかなぁー
って思ってたけど・・・」
自分の想像とあまりにも違くて、ラリイは絶句しかけた。
明らかに手入れされていない。
ドラゴネス国では信仰は大事にされていないのだろうか?
「この様な場所に、どちら様でしょうか?」
「はっ!」
ラリイは背後から声を掛けられて、驚く。
そこには教会の神父らしい人物がラリイを不思議そうに見ている。
「ま、まさか?!」
しかし、神父らしい中年の竜人の男はラリイを見るなり、目を開いて、嬉しそうな顔でラリイに言う。
「ああ、なんてことだ!
あの有名なフェニキア国の王女である、ラリイ様に出逢えるなんて!
おお、神よ、感謝いたします。
一度は近くでお会いしたいと願ってた方にお会い出来る機会を
私に恵んで下さり、ありがとうございます。」
と、大袈裟に言われてしまった。
いや、当人からしたら、大袈裟ではなく、本気なのだが。
「あ、あの!そんなに畏まらなくても!!」
神父の態度にラリイの方が困ってしまう。
ラリイは神父に、いつも日課にしている、祈りの儀式をさせて欲しいと頼むと、神父は快く引き受けてくれ、祈りの間に案内してくれた。
「この様な場所にラリイ様をお招きするなど、本当にお恥ずかしい限りですが・・・」
神父はそう言いながら、教会内をラリイに見せる。
外見も手入れされていなければ、内部も何もせずに
朽ちたままな状態になっている。
よく、この神父はここに住んでいるものだと、ラリイは驚く。
「昔は、ネイル様の親の代の王は、まだ信仰が厚かったのですが、ネイル様の代になってから、教会にも見向きもされなくて、王に就かれてからは、一度も祈りに来られたこともありません。」
「そ、そうなんですか?」
「はい、残念なことなのですが・・・」
ラリイが日課の祈りの儀式を済ませてから、神父はラリイを簡素なキッチンに誘い、お茶を出して、教会の現状を教えてくれた。
「信仰心が高い、フェニキアでは、信じられないでしょう?」
「ええ、まぁ・・・」
ラリイは神父の話を、聞きながら、お茶を飲んで、神父に同情した。
ラリイの国、フェニキアでは、ラリイの世界の神の聖地である、
大教会が存在する。
各地にある教会の総本山だ。
創造主である、ナルカディアを神として、エンガイス教とも言われる。
だから、フェニキアは歴史的にも戦争に巻き込まれると言うことが
ほとんどない。
そして、どの国よりも信仰に厚いので知られているのは、それがあるからなのだ。
だから、先ほどの神父の反応は、大袈裟ではなく、本当にラリイと言う存在に憧れを抱いていたのだろう。
教会関係者なら、ラリイの存在を知らない者は居ない。
「フェニキアの歌姫」
ラリイには、実はそういう異名がある。
大教会が、他国に何か支援する際にフェニキアと協力して
行うのだが、その使節団にラリイも時に参加することがある。
そして、聖歌などを歌う際に、ラリイは代表として歌うのだ。
その歌声に救われたと言うものが実は結構いるらしい。
当のラリイは、ただただ、困ってる人の役に立てばと思い、
歌っているだけなのだが、本人が思う以上に評判はかなり良い。
「いつか機会があったら、ラリイ様の歌声を聞けたらなどと、
期待してしまいそうになりますね、あはは。」
「そんな、お恥ずかしいです。」
神父の期待する眼差しに、ラリイは恥ずかしがる。
ドラゴネスには居場所がないと思っていたラリイだが、
今日この教会に来て良かったと思った。
「ぜひ、ご滞在中にはいつでもお越し下さい。」
神父は笑顔でラリイにそう言ってくれた。おかげで明日から、またいつもの日課の祈りの儀式が出来そうで、ラリイも安心する。
こうして、自分で出来ることを探せばいいのだ。
意外にどうにでもなるかもしれないとラリイは前向きに考えた。