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第十章「大団円」

「昨日は、ラリイと一緒にここに居たって言うのに・・・」

ネイルは庭園来て、ラリイと一緒に座った長椅子に腰を下ろした。

「ああ・・・小鳥の夫婦にからかわれたんだよな・・・
何が妻を守るだ。あんなに偉そうに言った矢先がこれかよ・・・」

ネイルは自暴自棄に1人で笑うしかなかった。
鳥達のさえずりが聞こえてくる。
そう、自分達以外はいつも通りの日常なのだ。

「はぁ、感傷に浸ってる場合じゃないな。行かないと。」

ネイルが立ち上がると、青い小鳥が一匹、ネイルの目に留まる場所でピピ―と鳴く。
それは、ネイル達をからかった夫婦の小鳥の片割れな気がした。

「ん?お前はあの時の?
もしかして、俺に説教しにでも来たのか?」

ネイルはそう苦笑いして、語りかけた。すると。

「ピーピー!!」

雄の方の小鳥なのだろうか、大きな鳴き声で、ネイルに何かを
訴えているような気がした。
まるで自分についてこい来いと・・・言ってるような?

「うん・・・もしかして・・・お前・・・?」

ネイルはどうにも気になり、雄の小鳥の側に寄る、そうすると、
雄の小鳥は飛び立ち、ネイルの頭上をぐるぐる回る。
やはり、ついて来いと言われてるようだ。

「ま、待ってくれ!すぐに馬を用意する!!!」

ネイルは急いで、自分の馬を用意して、ベアード達に何も言わず、
大した準備もしないまま、雄の小鳥について行った。
雄の小鳥は、ピーピーと鳴く、それに答えるように、遠くから、
雄の小鳥よりも高い声がピーと返事を返す。
どうやら、夫婦で連絡を取り合ってるようだった。

「ま、まさか・・・ラリイの居場所がわかるのか?」

ネイルは不安に思いつつも、今は少しでもラリイの手がかりが
掴めればと、淡い期待を胸に、何とか雄の小鳥を見失わないように、
必死について行った。
雄の小鳥は森の間を抜けて、ある屋敷の手前の木に辿り着く。
そこには、雌の小鳥が居て、2匹は寄り添って、鳴く。
ここが目的地だと言わんとするように。

「え?ここに・・・ラリイがいるって言うのか?」

古い寂びれた洋館が目の前にあった。どこぞの貴族の屋敷だろう。
ネイルは慎重に屋敷の周りを確認する。
馬を静かにさせ、屋敷から少し離れた場所に馬を待機させる。

「どうにか・・・忍び込めるか・・・?」

ネイルが屋敷の外で、どうにか入り込めないかと、思案している時に、突然、女の悲鳴が響く。

「ラ、ラリイか?!!」

ネイルは声のする方の向かい、急いで走った。

「や、止めて!来ないで!!!」

ネイルが屋敷に辿り着く少し前に、ラリイの方は、
セルディアスにまた迫られていた。

「いい加減に諦めたらどうだ?ラリイ。誰も助けになんか来ない。
この場所を知る者は私とあの男以外は居ない。
ここはわざと人目のつかない場所に作られた、我が国の秘密の屋敷。
あのドラゴネス国の奴らでも探し出せない程のな。」
「そんな・・・」

ラリイはセルディアスから、絶望的な情報を言われ、また悲しくなった。
このままでは、今日、確実に襲われてしまう・・・なら・・・
ラリイは窓の側に急いで行く。
それを見た、セルディアスは顔をしかめる。

「もう、こんな事止めて・・・お願い・・・
じゃないと私は・・・ここから・・・飛び降ります!!!」
「何を馬鹿な・・・私と結ばれるよりも、死を選ぶと?」
「そうです!!!」
「どうして、そこまで、あの男に肩入れする?
やはり、そういう関係にされたからか?」
「違います!!!ネイルはそんな人じゃない!!!」

ラリイはありったけの声でセルディアスに自分の気持ちを叫んだ。
流石のラリイも、もうセルディアスにはうんざりだった。
誰かをこんなにも嫌いになったことがあっただろうか?
ラリイにとっては、セルディアスは大事な友人の1人のつもりだった。
だが、こんな裏切りをされて、もう友で居たいとは思えなかった。

「ネイル・・・ごめんね・・・
でも、好きでもない人に奪われるくらいなら・・・」

ラリイが覚悟を決め、少し窓から身を乗り出した瞬間だった。

「ラリイ!!!そこに!そこにいるのか?!!」

ラリイは一瞬だけ、耳を疑った。愛しい人の声が聞こえたからだ。

「そんな・・・嘘?」

ラリイは窓から下を覗く、そこには、ネイルが居たのだ。
ネイルもラリイが窓から見えて、しっかり確認していた。

「ラリイ!!!そのまま飛び降りろ!俺が!
絶対に俺が受け止めるから!!!」
「ネイル!!!」

ラリイは何も躊躇わずにネイルの方に身を投げた。
セルディアスが、奪われまいと手を伸ばそうとしたが間に合わない。
一瞬の出来事だった、ラリイの身体が宙に綺麗に舞う。
その刹那に、ラリイの背中から、透明な翼が生えたように見える。
ネイルは両腕を広げて、ラリイを確実に受け止めようと態勢を整える。
ラリイの身体は思ってる以上に軽い衝撃でネイルの腕の中に綺麗に収まった。
ネイルは無事にラリイを取り戻したのだ。

「ラリイ・・・良かった無事で・・・本当に・・・」
「ネイル・・・ネイル・・・逢いたかったよ・・・」

2人はお互いに無事を確認して、抱き合った。

「馬鹿な・・・何故、ここがあいつにわかった?」

セルディアスは窓から2人見て、唖然とするしかなかった。
こんな奇跡的なことが起こるだろうか?
こんなにも早く居場所がバレるなど。
セルディアスは怒りに震えていた。
それを嘲笑うかの様に、2匹の青い小鳥達は囀り、セルディアスの目の前を優雅に飛びすぎると、ラリイ達の元に向かい、大きい声で鳴いた。
その声を聞いた、ネイルは、すぐにラリイを抱きしめたまま、
自分の馬のいる方に向かって、全力で走る。
こんな場所に長居は無用だ。
ラリイも、もうネイルから離れまいと必死にしがみつく。
青い小鳥達の声を聞き、あの子達が助けてくれたのだと、
ラリイはわかった。

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