第十章「大団円」
何も手がかりが見つからないまま、ネイル達は朝を迎えてしまった。
ベアードもカミーラも疲弊していたが、それでも少しも
休むことなく、ラリイの捜索を続けていた。
ラリイの身にそれだけの危険が迫っていることは3人とも
理解していたからだ。
ベアードもカミーラも、ネイルの幸せが今にも壊されそうに
なっていることが我慢出来なかった。
「ラリイ・・・一体どこへ・・・クソ・・・クソ・・・!!!」
ネイルは自分の内から来る怒りに我慢が出来ずに、部屋の壁を何度も殴る。
壁には血が染みついていた。殴っているネイルの手からも、血が出ていた。
その痛々しい光景に、ベアード達は変に声を掛けることが出来なかった。
何の慰めにもならないと、わかっているからだ。
なら、早くラリイを探した方がいいだろうと。
「ネフィリート様のとこには行ったんですよね?」
「ああ、でもおばあ様は今はお話出来ないと断られた。」
「こんな時にタイミングが悪いなぁーネフィリート様もよぉ・・・」
カミーラに祖母の事を聞かれ、ネイルもすぐに相談しに行ったのだが、こんな時に限って、ネフィリートはネイルとの会話を拒んだ、
これにはベアードも、愚痴をこぼすしかなかった。
ネイルも苛立ちは覚えたが、もしかすると、ネフィリートは
今回の件で、ネイルの度量を見ているのかもしれないとも思った。
「将来の妻も守れない男に、国を治める資格なし。おばあ様は厳しい方だ。そう思って、今回は力を貸して下さらないかもしれない。」
自分で解決してみせろと言われてる気がした。
ネフィリートは、いつも大事な場面では、一切姿を現さない。
この前のゴートレス件で、あんなに力を貸してくれたのは、
かなり珍しいことだった。
ラリイがいると言う事に甘えて、ネイルも最近すっかり
甘えていたことに気が付く。
「おばあ様の考えはいつも正しい。国を治める為の経験が
俺にはまだまだ乏しいんだ。だから、あえて突き放される。
自分達の力で解決出来ないのなら、今後などないのだから。」
ネイルはそう思い、政務室から出て、庭園に向かった。
城のすぐ外に何か手がかりがないかと思って。
何か行動していないと、自分の気が狂いそうだった。
「あ・・・朝になってたんだ・・・」
ラリイは部屋隅でうずくまったまま、寝てしまっていたようだった。
部屋には自分以外は居ないことがわかって、とりあえず安心する。
だが、いつまた、あの魔術師のような男や、セルディアスが
来るかはわからない。
ラリイは部屋から、どうにか脱出出来ないか、探索をするが、
窓はあるものの、何もない状態では、飛び降りるには難しい高さだった。
「ここに来て、飛び降り自殺なんて、つまらないことは止めて下さいね?」
「?!」
窓を調べている時に、またあの男の声が突然聞こえた。
ラリイを誘拐した男は見下した声でラリイに注意する。
ラリイは恐怖で体が震えて、その場から動けなくなる。
「まぁ、王女1人で脱出なんて、不可能でしょうけどね。
ただ依頼主の手前、すぐ死なれても困りますし。もしも、逃げようとするなら、
その時は私も貴女に何をするか、わからないですよ?」
「い、嫌・・・来ないで!」
ラリイは悲痛な声で、不気味な男に向かって叫んだ。
男は、呆れた雰囲気を出して、やれやれと小さい声で言った。
「なら、大人しくすることですね。貴女はもう、セルディアス王子
に飼われた、憐れな小鳥なのだから。
今度は新しい主人の為に、健気に鳴くことです。」
「そ、そんなこと・・・」
したくないとはっきり言いたかったが、ラリイは恐怖で言えなかった。
もし、この男を怒らせたら、また何をされるか、わからなかったから。
一時的な感情で軽率な行為はするべきじゃないとラリイは思った。
「では、朝食は置いておきますから。これで。」
男は小さいテーブルに簡素な食事を用意すると、それで消えた。
ラリイは食欲など湧くはずもなく、何も手を付けなかった。
あんな不気味な男の出す料理なんて、不審しかない。
「どうにか・・・ネイルに・・・
ここにいることを知らせなきゃ・・・」
ラリイは窓の景色をずっと見て考えた。
夜は不気味だったこの部屋も朝の光が差し込めば、少しは
マシな部屋に見えた。
「セルディアス王子が現れたってことは、ここのお屋敷は、
たぶんフェンリルス国の所有の屋敷・・・だよね?」
ラリイはラリイなりに考えてはみたものの、攫われただけの
自分ではあまりにも情報量が無さすぎた。
それでも諦めずに、部屋にある、タンスやら、引き出しやらを、
静かに調べる。
「早く・・・セルディアス王子がまた来る前に、
何か・・・何か・・・」
ラリイは焦りたい気持ちを何とか抑えて、自分の出来る限りの事をしていた。
少しでも希望に繋がると信じて。
ベアードもカミーラも疲弊していたが、それでも少しも
休むことなく、ラリイの捜索を続けていた。
ラリイの身にそれだけの危険が迫っていることは3人とも
理解していたからだ。
ベアードもカミーラも、ネイルの幸せが今にも壊されそうに
なっていることが我慢出来なかった。
「ラリイ・・・一体どこへ・・・クソ・・・クソ・・・!!!」
ネイルは自分の内から来る怒りに我慢が出来ずに、部屋の壁を何度も殴る。
壁には血が染みついていた。殴っているネイルの手からも、血が出ていた。
その痛々しい光景に、ベアード達は変に声を掛けることが出来なかった。
何の慰めにもならないと、わかっているからだ。
なら、早くラリイを探した方がいいだろうと。
「ネフィリート様のとこには行ったんですよね?」
「ああ、でもおばあ様は今はお話出来ないと断られた。」
「こんな時にタイミングが悪いなぁーネフィリート様もよぉ・・・」
カミーラに祖母の事を聞かれ、ネイルもすぐに相談しに行ったのだが、こんな時に限って、ネフィリートはネイルとの会話を拒んだ、
これにはベアードも、愚痴をこぼすしかなかった。
ネイルも苛立ちは覚えたが、もしかすると、ネフィリートは
今回の件で、ネイルの度量を見ているのかもしれないとも思った。
「将来の妻も守れない男に、国を治める資格なし。おばあ様は厳しい方だ。そう思って、今回は力を貸して下さらないかもしれない。」
自分で解決してみせろと言われてる気がした。
ネフィリートは、いつも大事な場面では、一切姿を現さない。
この前のゴートレス件で、あんなに力を貸してくれたのは、
かなり珍しいことだった。
ラリイがいると言う事に甘えて、ネイルも最近すっかり
甘えていたことに気が付く。
「おばあ様の考えはいつも正しい。国を治める為の経験が
俺にはまだまだ乏しいんだ。だから、あえて突き放される。
自分達の力で解決出来ないのなら、今後などないのだから。」
ネイルはそう思い、政務室から出て、庭園に向かった。
城のすぐ外に何か手がかりがないかと思って。
何か行動していないと、自分の気が狂いそうだった。
「あ・・・朝になってたんだ・・・」
ラリイは部屋隅でうずくまったまま、寝てしまっていたようだった。
部屋には自分以外は居ないことがわかって、とりあえず安心する。
だが、いつまた、あの魔術師のような男や、セルディアスが
来るかはわからない。
ラリイは部屋から、どうにか脱出出来ないか、探索をするが、
窓はあるものの、何もない状態では、飛び降りるには難しい高さだった。
「ここに来て、飛び降り自殺なんて、つまらないことは止めて下さいね?」
「?!」
窓を調べている時に、またあの男の声が突然聞こえた。
ラリイを誘拐した男は見下した声でラリイに注意する。
ラリイは恐怖で体が震えて、その場から動けなくなる。
「まぁ、王女1人で脱出なんて、不可能でしょうけどね。
ただ依頼主の手前、すぐ死なれても困りますし。もしも、逃げようとするなら、
その時は私も貴女に何をするか、わからないですよ?」
「い、嫌・・・来ないで!」
ラリイは悲痛な声で、不気味な男に向かって叫んだ。
男は、呆れた雰囲気を出して、やれやれと小さい声で言った。
「なら、大人しくすることですね。貴女はもう、セルディアス王子
に飼われた、憐れな小鳥なのだから。
今度は新しい主人の為に、健気に鳴くことです。」
「そ、そんなこと・・・」
したくないとはっきり言いたかったが、ラリイは恐怖で言えなかった。
もし、この男を怒らせたら、また何をされるか、わからなかったから。
一時的な感情で軽率な行為はするべきじゃないとラリイは思った。
「では、朝食は置いておきますから。これで。」
男は小さいテーブルに簡素な食事を用意すると、それで消えた。
ラリイは食欲など湧くはずもなく、何も手を付けなかった。
あんな不気味な男の出す料理なんて、不審しかない。
「どうにか・・・ネイルに・・・
ここにいることを知らせなきゃ・・・」
ラリイは窓の景色をずっと見て考えた。
夜は不気味だったこの部屋も朝の光が差し込めば、少しは
マシな部屋に見えた。
「セルディアス王子が現れたってことは、ここのお屋敷は、
たぶんフェンリルス国の所有の屋敷・・・だよね?」
ラリイはラリイなりに考えてはみたものの、攫われただけの
自分ではあまりにも情報量が無さすぎた。
それでも諦めずに、部屋にある、タンスやら、引き出しやらを、
静かに調べる。
「早く・・・セルディアス王子がまた来る前に、
何か・・・何か・・・」
ラリイは焦りたい気持ちを何とか抑えて、自分の出来る限りの事をしていた。
少しでも希望に繋がると信じて。