第九章「不始末」
「はぁ・・・やってしまった・・・」
ネイルは、自分の寝室でベットに座り、頭を抱えで悩んでいた。
いくら、ラリイからキスされたことに舞い上がってしまったと言え、
あれは、いくら何でもやり過ぎだと、自分でもわかっていた。
しかし、あんなにも愛してやまない存在に、あんな可愛い事を
されれば、ネイルだって、男なのだから、いい加減、我慢の限界だった。
だが、ラリイは上手にネイルから逃げ、ネイルも最後の最後で、
ラリイを傷つけまいと思い、何とか、自分を抑えることが出来た。
「でも、流石に今日は・・・ラリイも怒ってるよな・・・」
あれだけしつこく、寝室に連れて行こうとすれば、
あのラリイでも流石に怒るだろうとネイルは思った。
夜ならまだしも、真昼間からだ。
セルディアスの存在さえなければ、まだネイルもここまで、
露骨な態度には出なかったかもしれない。
お茶会の時に、やっぱり2人は幼馴染みだけあって、
ネイルには付いていけない話題があった。
その時のあの勝ち誇ったような、セルディアスの顔を
思い出すだけで、ネイルは叫びたい気持ちになった。
過去はどうであれ、今のラリイは自分のものだと・・・
「やっぱり、俺は異常なのかな・・・」
ネイルは自分の抑えきれない嫉妬に悩む。
こんなにも自分が嫉妬深い人間だったなんて、それこそラリイと愛し合うまでは、自分でも知らなかったのだ。
王として、今まで感情を殺して生きて来たつもりでいた。
国を守る為に、残酷な王としての噂もわざと流したりもした。
「ベアードやメディーナに素直になれとは言われても、
これじゃ駄目だよな・・・」
ネイルは改めて自分の未熟さに苦悩する。
こんな事では、ラリイと夫婦になれても、国を治めていけるのかと。
「はぁ・・・今日はもうこのまま、ラリイには会わない方がいいか・・・
多分、今は自分の寝室にはいるだろうし・・・」
ネイルはそう思ったが、やっぱり気持ちが落ち着かずに、ベッドから立ち上がり、ラリイに会おうと決心する。
「やっぱり、今日の事は今日中に謝りたい。後は、ラリイにも
1発頬でも叩かれれば、俺も目が覚めるかもしれない。」
ラリイがそれなりに怒っているなら、ネイルを見て、怒って来るだろう。
そしたら、罵声でも何でもネイルは素直に受け止めるつもりだった。
それで少しでも、ラリイが許してくれるなら、ネイルはそれで良かった。
「ラリイ・・・その・・・いるか?」
ラリイの寝室の前に来て、覚悟を決めたネイルは声をかける。
だが、部屋からは人の物音1つせず、気配も感じない。
窓が開いているのか、風の音だけが聞こえてくる。
ネイルは何か胸騒ぎを覚えて、ドアを開けようとするが、
鍵が掛かっていることに気づく。
「ラリイ・・・?ま・・・まさか?!」
ネイルは胸にしまってあった、ラリイの寝室の鍵を出して、鍵を開け、部屋に飛び込む。
そこにはラリイは居なかった。窓だけが無造作に開けられ、
カーテンがパタパタと揺れている。
「ラリイ・・・何処に?」
ネイルは空いてる窓の側に寄り、窓を覗き込んで下を見る。
流石にラリイが窓から下に降りた感じはない。
ネイルは、だんだんと落ち着かない気持ちになり、ベアードやカミーラを呼び、他の部下に教会に行っていないかを確認させた。
「ラリイ王女は教会へは行っていないようです。」
数分して、部下の報告を政務室で聞いたネイルは落胆する。
ベアードもカミーラも、ラリイが突然消えて心配する。
「まさか・・・あのセルディアスが誘拐したのか?」
「ですが、こんな夜にですか?警備の誰の目にも留まらずに?
今日は特に警戒してたんですよ?」
「しかしなぁ・・・あのラリイ王女が自分から消えることは
流石にないだろう?」
「そうなんですよね・・・あの窓の高さから、何も使わないで
出ることも無理でしょうし・・・」
ベアードとカミーラは思いつく限りの事をお互いに言い合い、否定したりする。
不可解すぎる出来事に3人はお手上げ状態だった。
「ん・・・でも、待てよ?」
ネイルは一瞬過ぎった違和感を確認しに、突然、ラリイの寝室に向かう。
ベアードも、カミーラも何も言わずにネイルに続く。
「やっぱり・・・ない。」
「何が無いんだ?ネイル?」
ネイルの言葉にベアードが不思議そうに聞く。
「あいつから貰った、あのぬいぐるみがないんだ。
ラリイ自身が持ち出した可能性も否定は出来ないが・・・
でも、もし誘拐されたのなら、ぬいぐるみがないのはおかしい。」
「確かにそうですね・・・いや、それにラリイ王女自身が自分で
居なくなったのなら、何故ぬいぐるみだけ持っていくんです?
それも、結局はおかしいですよ。」
「だな・・・」
カミーラの指摘にネイルも納得する。
これは、もうセルディアスが何かしらで関わっているのは明白だ。
「でもよ・・・そうだったとしてもよ、結局はそれで
あのいけ好かない王子をどうにかは出来ないだろ?
ぬいぐるみがないだけじゃ・・・」
「そうですね。ベアードの言う通り、証拠がなさすぎます。
ぬいぐるみがないだけでは、一国の王子を誘拐犯扱いは出来ません。
むしろ、ラリイ王女を守れなかったのは自国の所為だろうと、
逆に因縁をつけられるかもしれません。」
「そうだな。あいつの国とは仲が悪いからな。」
ネイルは尚の事、イライラした。
結局、事を騒ぎ立てずに、裏でラリイの捜索は行われた。
ベアードは部下を引き連れ、城下町から、国境付近まで、捜索を行い、カミーラは出来る限りの情報網を使い、ラリイの行方を追おうとした。
ネイルは、今日の自分の行動が相手に隙を与えてしまったのだと、
何よりも後悔し、自分が許せなかった。
居なくなったラリイを探し、3人の長い夜が続いた。
ネイルは、自分の寝室でベットに座り、頭を抱えで悩んでいた。
いくら、ラリイからキスされたことに舞い上がってしまったと言え、
あれは、いくら何でもやり過ぎだと、自分でもわかっていた。
しかし、あんなにも愛してやまない存在に、あんな可愛い事を
されれば、ネイルだって、男なのだから、いい加減、我慢の限界だった。
だが、ラリイは上手にネイルから逃げ、ネイルも最後の最後で、
ラリイを傷つけまいと思い、何とか、自分を抑えることが出来た。
「でも、流石に今日は・・・ラリイも怒ってるよな・・・」
あれだけしつこく、寝室に連れて行こうとすれば、
あのラリイでも流石に怒るだろうとネイルは思った。
夜ならまだしも、真昼間からだ。
セルディアスの存在さえなければ、まだネイルもここまで、
露骨な態度には出なかったかもしれない。
お茶会の時に、やっぱり2人は幼馴染みだけあって、
ネイルには付いていけない話題があった。
その時のあの勝ち誇ったような、セルディアスの顔を
思い出すだけで、ネイルは叫びたい気持ちになった。
過去はどうであれ、今のラリイは自分のものだと・・・
「やっぱり、俺は異常なのかな・・・」
ネイルは自分の抑えきれない嫉妬に悩む。
こんなにも自分が嫉妬深い人間だったなんて、それこそラリイと愛し合うまでは、自分でも知らなかったのだ。
王として、今まで感情を殺して生きて来たつもりでいた。
国を守る為に、残酷な王としての噂もわざと流したりもした。
「ベアードやメディーナに素直になれとは言われても、
これじゃ駄目だよな・・・」
ネイルは改めて自分の未熟さに苦悩する。
こんな事では、ラリイと夫婦になれても、国を治めていけるのかと。
「はぁ・・・今日はもうこのまま、ラリイには会わない方がいいか・・・
多分、今は自分の寝室にはいるだろうし・・・」
ネイルはそう思ったが、やっぱり気持ちが落ち着かずに、ベッドから立ち上がり、ラリイに会おうと決心する。
「やっぱり、今日の事は今日中に謝りたい。後は、ラリイにも
1発頬でも叩かれれば、俺も目が覚めるかもしれない。」
ラリイがそれなりに怒っているなら、ネイルを見て、怒って来るだろう。
そしたら、罵声でも何でもネイルは素直に受け止めるつもりだった。
それで少しでも、ラリイが許してくれるなら、ネイルはそれで良かった。
「ラリイ・・・その・・・いるか?」
ラリイの寝室の前に来て、覚悟を決めたネイルは声をかける。
だが、部屋からは人の物音1つせず、気配も感じない。
窓が開いているのか、風の音だけが聞こえてくる。
ネイルは何か胸騒ぎを覚えて、ドアを開けようとするが、
鍵が掛かっていることに気づく。
「ラリイ・・・?ま・・・まさか?!」
ネイルは胸にしまってあった、ラリイの寝室の鍵を出して、鍵を開け、部屋に飛び込む。
そこにはラリイは居なかった。窓だけが無造作に開けられ、
カーテンがパタパタと揺れている。
「ラリイ・・・何処に?」
ネイルは空いてる窓の側に寄り、窓を覗き込んで下を見る。
流石にラリイが窓から下に降りた感じはない。
ネイルは、だんだんと落ち着かない気持ちになり、ベアードやカミーラを呼び、他の部下に教会に行っていないかを確認させた。
「ラリイ王女は教会へは行っていないようです。」
数分して、部下の報告を政務室で聞いたネイルは落胆する。
ベアードもカミーラも、ラリイが突然消えて心配する。
「まさか・・・あのセルディアスが誘拐したのか?」
「ですが、こんな夜にですか?警備の誰の目にも留まらずに?
今日は特に警戒してたんですよ?」
「しかしなぁ・・・あのラリイ王女が自分から消えることは
流石にないだろう?」
「そうなんですよね・・・あの窓の高さから、何も使わないで
出ることも無理でしょうし・・・」
ベアードとカミーラは思いつく限りの事をお互いに言い合い、否定したりする。
不可解すぎる出来事に3人はお手上げ状態だった。
「ん・・・でも、待てよ?」
ネイルは一瞬過ぎった違和感を確認しに、突然、ラリイの寝室に向かう。
ベアードも、カミーラも何も言わずにネイルに続く。
「やっぱり・・・ない。」
「何が無いんだ?ネイル?」
ネイルの言葉にベアードが不思議そうに聞く。
「あいつから貰った、あのぬいぐるみがないんだ。
ラリイ自身が持ち出した可能性も否定は出来ないが・・・
でも、もし誘拐されたのなら、ぬいぐるみがないのはおかしい。」
「確かにそうですね・・・いや、それにラリイ王女自身が自分で
居なくなったのなら、何故ぬいぐるみだけ持っていくんです?
それも、結局はおかしいですよ。」
「だな・・・」
カミーラの指摘にネイルも納得する。
これは、もうセルディアスが何かしらで関わっているのは明白だ。
「でもよ・・・そうだったとしてもよ、結局はそれで
あのいけ好かない王子をどうにかは出来ないだろ?
ぬいぐるみがないだけじゃ・・・」
「そうですね。ベアードの言う通り、証拠がなさすぎます。
ぬいぐるみがないだけでは、一国の王子を誘拐犯扱いは出来ません。
むしろ、ラリイ王女を守れなかったのは自国の所為だろうと、
逆に因縁をつけられるかもしれません。」
「そうだな。あいつの国とは仲が悪いからな。」
ネイルは尚の事、イライラした。
結局、事を騒ぎ立てずに、裏でラリイの捜索は行われた。
ベアードは部下を引き連れ、城下町から、国境付近まで、捜索を行い、カミーラは出来る限りの情報網を使い、ラリイの行方を追おうとした。
ネイルは、今日の自分の行動が相手に隙を与えてしまったのだと、
何よりも後悔し、自分が許せなかった。
居なくなったラリイを探し、3人の長い夜が続いた。