このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第九章「不始末」

「はぁーもう・・・今日は大変だった・・・」

ラリイはドラゴネスで新しく貰った自分の寝室に居た。
もう結婚するのだからと、借りていた客室ではなく、
ちゃんとした自分の部屋をすでに貰っていたのだ。
だが、普段の夜はネイルの寝室に一緒にいることが多く、
なかなか自分の寝室に来ることはなかった。

「もう!今日の夜はネイルと一緒に居ちゃダメだ・・・
本当に嫉妬深いんだから・・・」

ラリイはそう呟いて、今日の事を振り返る。
やっぱりセルディアスに逢ったのが不味かったのだ。
あの後で、ネイルはラリイからキスされたのが、相当嬉しかったのか、
結婚式も間近なのもあってか、今日は特に、何度も襲われそうになった。
夜なら、まだラリイも気持ちを理解してるつもりだったが、
流石に今日は昼からでも、油断のならない状況だった。
隙あらば、キスされ、ネイルの寝室へ・・・と連行されそうになり、
ラリイは何度もネイルから、逃げなければならなかった。
どうやら、ネイルにそれだけの刺激をラリイは
与えてしまったようだった。

「たぶん、嫉妬から余計に来てるんだろうけど・・・
今日のネイルは、強引すぎるよ・・・
私がキスしちゃったのもいけないんだけど・・・」

ラリイは自分も気持ちが高まってしてしまった行動に
深く反省していた。
あれでは、自分からも誘っているようなものだ。
ネイルに変な誤解をさせてしまっても仕方がなかった。

「今日は大人しくここで寝よう。鍵も掛けたし・・・
流石に大丈夫だよね?」

ラリイは鍵が閉まっているのを確認し、ベッドに戻る。
少し気持ちが落ち着いた所で、何もすることがないラリイは、
セルディアスのプレゼントを再度確認した。
すると箱の底に手紙が入っていたことに気が付く。

「あれ?お手紙だ・・・」

ラリイは箱の底から手紙を取り出し、裏表を確認する。

「ラリイ王女へ・・・セルディアス王子からの手紙だ。」

ラリイはそれを確認すると、ネイルの居ない、今のうちに
読んでしまおうと思った。
これで手紙まであったことが知れたら、また嫉妬させてしまうに
違いなかった。

「セルディアス王子には悪いけど・・・
このぬいぐるみとお手紙は祖国で預かって貰った方がいいかも・・・
ネイルも私の身近にこのプレゼントがあるのは、嫌だよね・・・」

ラリイはそう呟きながらも、手紙を読み始めた。

「結婚おめでとう。プレゼントのぬいぐるみは気に入って貰えると嬉しいです・・・
そのぬいぐるみは月夜が大好きなので、窓辺に置いてあげると
喜ぶそうです・・・?」

手紙の途中、途中で声を出して読んでいたラリイは、
この最後の言葉に首を傾げた。

「へぇ・・・そんな設定のウサちゃんもいるんだ?
じゃあ、今日の夜は丁度、月も出てるから、窓辺に置いてあげよう♪」

ラリイは手紙に書かれた言葉に素直に従い、セルディアスから
貰ったぬいぐるみを窓辺にそっと置いた。

「これでいいのかな?・・・え?」

窓辺にぬいぐるみを置いた瞬間に、ぬいぐるみが、ムクムクと
大きくなり、あっと言う間に黒い服のフードを被った人の姿に変わる。
深くフードを被っている所為か、顔までは確認できない。
ラリイは悲鳴を上げそうになったが、金縛りにあったように
身体を動かせず、声も出せない状況にされていた。

「これでやっと貴女に復讐が出来る。まずは、貴女を
彼の元へお連れしましょうか。」

全身黒い服を纏った魔術師のような男は、ラリイに向かって小瓶を向ける。
小瓶を向けられたラリイは、身体が急に小さくなり、小瓶の中に吸い込まれた。

「い、嫌!だ、出して!ここから出して!!」

小瓶の中に入れられてから、やっと動けるようになったラリイだったが、
今度は余りにも小さくなった為に、どんなに叫んでも、瓶の中を叩いても、
誰にも聞こえない声量だった。
ラリイの入った小瓶は素早く男の懐にしまわれる。

「さて、無事に回収しましたし、手紙は燃やして、行きますか。」

魔術師らしい男は、ラリイの読んでいた手紙を空中でさっと燃やし、
窓を開けて、蝙蝠の姿に変身して、ラリイの寝室から飛び去った。
事件は静かに起きて、静かに終わったのだ。
ドラゴネス国で、ラリイが連れ去られたことを知る者は誰も居なかった。
8/10ページ
スキ