第九章「不始末」
「面談?セルディアス王子が私にですか?」
カミーラの報告を聞いて、ラリイはキョトンとした。
それから、すぐに笑顔になり、返事をする。
「久しぶりに、私も逢ってお話したいです。セルディアス王子とは、
お幼馴染みですし、ネイルとの結婚の報告もしなきゃ♪」
何の警戒もないラリイに、カミーラは心底心配した。
そして、横にいるネイルの嫉妬の炎の凄まじさに
気づいていない、ラリイにも、ある意味感心もする。
「ラリイ・・・そんなに嬉しいのか?」
「ん?どうして?」
低い声でラリイに聞く、ネイルに、ラリイは何も考えずに返事をする。
「だって、久しぶりにお友達に逢えるなら、嬉しいでしょ?
ネイルだって、同じ立場なら嬉しくない?」
「そりゃ・・・」
ラリイの普通の返答にネイルも一瞬口篭もる。
それが同性の友人なら、ネイルだって目くじらを立てることもない。
だが、今回は相手が異性な上に、ラリイとネイルの結婚に
大反対していた存在だ。いや、今だって反対してるかもしれない。
もう結婚も間近な2人の関係に、どうこうされることは無いと
思いつつも、ネイルは何故か、この面談に不安が消えなかった。
「俺も一緒に逢っていいか?」
「うん!全然いいよ!ネイルの事、紹介しなくちゃね♪」
ラリイは何の迷いもなく、ネイルの提案を受け入れる。
それで、ネイルは一瞬だけ、安心して、嫉妬心を抑えた。
カミーラも心の中で胸を撫で下ろした。
このまま、2人が喧嘩にならなければいいがと、
ちょっとだけ不安だったからだ。
「久しぶりだね。ラリイ王女。また一段と綺麗になった。」
「セルディアス王子も元気みたいで良かったです!」
昨日の夜に面談の返事をし、翌日の朝もすぐにフェンリルス国の
第1王子である、セルディアスはラリイに逢いに来た。
待ってましたと言わんばかりの早い行動に、ネイルもカミーラも
ますます疑念を感じる結果となった。
本当に、ただ面談だけが目的なのかと。
「カミーラ・・・警備の方は頼む。」
「わかってます。表面は普段通りを装ってありますが、
いざと言う時の対策はしてあります。」
「うん。頼む。」
今さっきのやり取りを思い出す。
小声で2人は警備の確認をし合う。ベアードにも、国境付近の
警備を頼んであるくらいだ。
もし、仮にラリイの身に何かあっても、万全の態勢を
出来る限り取れるようにした。
そこまでしても、ネイルには何か腑に落ちないものがあった。
「ネイル・・・ネイル?どうしたの?」
「あ、ああ、ごめん。ちょっとな。」
「もう!ネイルもご挨拶して!こちらが、幼馴染みのセルディアス王子だよ。」
ラリイに呼ばれていたことに気づき、ネイルは我に返る、
そして、ラリイに紹介された幼馴染の王子を見て、挨拶をする。
「初めまして、セルディアス王子。ようこそ、ドラゴネス国へ。
王のネイルです。どうぞ、よろしく。」
「これは・・・王直々にありがとうございます。
ラリイ王女からも紹介がありましたが、フェンリルス国の
第1王子のセルディアスです。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」
ネイルとセルディアスは、普通に挨拶をし、握手をする。
しかし、互いの心の中は穏やかではなかった。
セルディアスは、薄い水色の長髪をした、凛々しい若い男で、狼人の国の王子であり、頭には狼の耳、目は狼の特有の黄色の瞳で鋭さがあった。
この場は、ラリイの手前、2人は大人しくしてはいるが、何かあれば、
一触即発の事態になってもおかしくない雰囲気だった。
実は、前々から、ラリイの件がなかったとしても、
ドラゴネス国とフェンリルス国の関係は良くなかったのだ。
裏で、領土問題などで、小競り合いなら、いつもしてる程に。
「今日はこうして面談の許可を頂けて幸いです。
幼馴染みである、ラリイ王女には、どうしても、私が自ら逢って、
お祝いの言葉を贈りたいと思いまして。
お許し頂けた、ネイル王の懐の深さに感謝致しております。」
セルディアスは笑顔でこう言いながら、恭しく頭を下げる。
ネイルからすると、何とも嫌味にしか聞こえない台詞に、
ラリイは素直に喜んでいる。
「そんな・・・セルディアス王子もお忙しいのに、私の為なんかに、無理しなくてもいいのに。」
ラリイは喜びつつも、申し訳なさそうにする。
「そうだ!早速、お茶の準備しなきゃ!2人はゆっくりと
庭園に向かって来てね!私は先に行くね!」
ラリイはパタパタと可愛く走り去った。
城の廊下には、気まずい雰囲気の2人の男が残った。
「ラリイ王女は相変わらずのようですね。」
「そう・・・ですね。」
ラリイの言動にセルディアスは静かに笑った。
ネイルは、それに対して短く返事をした。
無駄な事は極力言うまいと思って。
2人の間には、激しい火花が散っていた。
カミーラの報告を聞いて、ラリイはキョトンとした。
それから、すぐに笑顔になり、返事をする。
「久しぶりに、私も逢ってお話したいです。セルディアス王子とは、
お幼馴染みですし、ネイルとの結婚の報告もしなきゃ♪」
何の警戒もないラリイに、カミーラは心底心配した。
そして、横にいるネイルの嫉妬の炎の凄まじさに
気づいていない、ラリイにも、ある意味感心もする。
「ラリイ・・・そんなに嬉しいのか?」
「ん?どうして?」
低い声でラリイに聞く、ネイルに、ラリイは何も考えずに返事をする。
「だって、久しぶりにお友達に逢えるなら、嬉しいでしょ?
ネイルだって、同じ立場なら嬉しくない?」
「そりゃ・・・」
ラリイの普通の返答にネイルも一瞬口篭もる。
それが同性の友人なら、ネイルだって目くじらを立てることもない。
だが、今回は相手が異性な上に、ラリイとネイルの結婚に
大反対していた存在だ。いや、今だって反対してるかもしれない。
もう結婚も間近な2人の関係に、どうこうされることは無いと
思いつつも、ネイルは何故か、この面談に不安が消えなかった。
「俺も一緒に逢っていいか?」
「うん!全然いいよ!ネイルの事、紹介しなくちゃね♪」
ラリイは何の迷いもなく、ネイルの提案を受け入れる。
それで、ネイルは一瞬だけ、安心して、嫉妬心を抑えた。
カミーラも心の中で胸を撫で下ろした。
このまま、2人が喧嘩にならなければいいがと、
ちょっとだけ不安だったからだ。
「久しぶりだね。ラリイ王女。また一段と綺麗になった。」
「セルディアス王子も元気みたいで良かったです!」
昨日の夜に面談の返事をし、翌日の朝もすぐにフェンリルス国の
第1王子である、セルディアスはラリイに逢いに来た。
待ってましたと言わんばかりの早い行動に、ネイルもカミーラも
ますます疑念を感じる結果となった。
本当に、ただ面談だけが目的なのかと。
「カミーラ・・・警備の方は頼む。」
「わかってます。表面は普段通りを装ってありますが、
いざと言う時の対策はしてあります。」
「うん。頼む。」
今さっきのやり取りを思い出す。
小声で2人は警備の確認をし合う。ベアードにも、国境付近の
警備を頼んであるくらいだ。
もし、仮にラリイの身に何かあっても、万全の態勢を
出来る限り取れるようにした。
そこまでしても、ネイルには何か腑に落ちないものがあった。
「ネイル・・・ネイル?どうしたの?」
「あ、ああ、ごめん。ちょっとな。」
「もう!ネイルもご挨拶して!こちらが、幼馴染みのセルディアス王子だよ。」
ラリイに呼ばれていたことに気づき、ネイルは我に返る、
そして、ラリイに紹介された幼馴染の王子を見て、挨拶をする。
「初めまして、セルディアス王子。ようこそ、ドラゴネス国へ。
王のネイルです。どうぞ、よろしく。」
「これは・・・王直々にありがとうございます。
ラリイ王女からも紹介がありましたが、フェンリルス国の
第1王子のセルディアスです。
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。」
ネイルとセルディアスは、普通に挨拶をし、握手をする。
しかし、互いの心の中は穏やかではなかった。
セルディアスは、薄い水色の長髪をした、凛々しい若い男で、狼人の国の王子であり、頭には狼の耳、目は狼の特有の黄色の瞳で鋭さがあった。
この場は、ラリイの手前、2人は大人しくしてはいるが、何かあれば、
一触即発の事態になってもおかしくない雰囲気だった。
実は、前々から、ラリイの件がなかったとしても、
ドラゴネス国とフェンリルス国の関係は良くなかったのだ。
裏で、領土問題などで、小競り合いなら、いつもしてる程に。
「今日はこうして面談の許可を頂けて幸いです。
幼馴染みである、ラリイ王女には、どうしても、私が自ら逢って、
お祝いの言葉を贈りたいと思いまして。
お許し頂けた、ネイル王の懐の深さに感謝致しております。」
セルディアスは笑顔でこう言いながら、恭しく頭を下げる。
ネイルからすると、何とも嫌味にしか聞こえない台詞に、
ラリイは素直に喜んでいる。
「そんな・・・セルディアス王子もお忙しいのに、私の為なんかに、無理しなくてもいいのに。」
ラリイは喜びつつも、申し訳なさそうにする。
「そうだ!早速、お茶の準備しなきゃ!2人はゆっくりと
庭園に向かって来てね!私は先に行くね!」
ラリイはパタパタと可愛く走り去った。
城の廊下には、気まずい雰囲気の2人の男が残った。
「ラリイ王女は相変わらずのようですね。」
「そう・・・ですね。」
ラリイの言動にセルディアスは静かに笑った。
ネイルは、それに対して短く返事をした。
無駄な事は極力言うまいと思って。
2人の間には、激しい火花が散っていた。