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第九章「不始末」

散歩の途中で、2人は庭園にある長椅子に座る。
そこから見える庭園の景色はとても綺麗なものだった。
長椅子から見える景色を計算されていて、それでこの長椅子は
置かれたものだろう。

「ラリイ、お前の花嫁衣裳だけど、早めにちゃんと言わないと、
おばあ様に勝手に決められちゃうぞ?」
「ええ?本当?」
「ああ、この前も俺に聞かれたから、ラリイにも聞いて下さいよ
って念押したけど、あの調子じゃ、すでに何着か作ってあるぞ?」
「あわわ、どうしよう?!私、まだ何も考えてなかった!」
「おいおい・・・自分の着る服だろ・・・全く・・・」

ネイルはラリイの慌てぶりに、少し苦笑いする。
だが、ラリイのそんなとこもネイルには愛しい。
そんな会話の中、2人の元に、青い小鳥達が寄って来る。

「あ、夫婦の小鳥さん達だ♪」
「へぇ・・・」

ラリイの嬉しそうな声にネイルが感心する。
夫婦の小鳥達はラリイの膝に飛び乗ったかと思うと、次に、
2匹それぞれに、ラリイの頭や肩に移動したりし、
チュンチュンと互いに囁き合う。

「何だって?」

ネイルがその姿を優しく見守っているとラリイが小鳥達の会話を
ネイルに話す。

「この2匹は最近夫婦になったんだって!」
「ほう。それは良かったな。」
「うん!でね、私達も夫婦になるのかと思って、様子を
見に来たんだって!」
「へぇー凄いな。そんなこともわかるのか?」
「うん・・・その・・・私達の雰囲気でわかるみたい・・・」

ラリイは途中でネイルに伝えるのを恥ずかしがる。
ネイルもそれを聞いて、少し顔が赤くなる。
鳥達に伝わるほどまでに、自分達がイチャイチャしているとは
思っていなかった、2人だった。

「あはは、参ったな。そんなにまで、俺達は態度に出てたか・・・」
「そうだね・・・ちょっと恥ずかしいね・・・」

恥ずかしがる2人に夫婦の小鳥達は、今度はネイルの方に飛び移る。
それから、また2匹は囁き合う。
ネイルは慣れない事で一瞬驚いたが、すぐに大人しくした。
すると、雄らしい方の小鳥はネイルの肩に留まる。

「ラリイ・・・何か言ってるか?」

ネイルはラリイにまた小鳥達の会話を確認する。

「うん、えっとね・・・夫になるなら、ちゃんと妻を
守るように・・・だって!」
「そんな事言ってるのか!あはは、これは先輩夫婦に言われれば、
守らないわけにはいかないな!」

ネイルは驚かさないように、肩にいる雄の小鳥の方をそっと見る。

「大丈夫!俺は妻になるラリイを、どんなことがあっても、
必ず守ってみせる。だから、お前も、ちゃんと自分の妻を守れよ!」
「ピーピピピ!」

それを聞いた、雄の小鳥はネイルの言葉に納得したように鳴いて、
また夫婦で寄り添いラリイの肩に移動する。

「次は何だって?」
「ネイルの気持ちはわかったって!」
「そうか・・・なら良かった。」
「ネイル・・・有り難う・・・」

ネイルの言葉に、ラリイは嬉しいながらも、恥ずかしがる。
あんなに迷いもなく、しっかり言われれば、言われた方が
恥ずかしがっても不思議ではない。
夫婦の小鳥達はそんな2人を祝福するかのように、
楽しげに囁き合って、飛んで行った。

「なんか・・・からかわれた感じするな・・・俺達。」
「そうだね・・・ちょっと、遊ばれちゃったかもね・・・」

2人は顔を合わせて、苦笑いし合った。
それから、散歩を終わらせ、ネイルは、また仕事へ、ラリイは
お茶の片付けに向かう。

「フェンリルス国の第1王子から、ラリイ様への面談の話が
来ていますが、どうしましょうか?」

カミーラは部下の報告を聞き、顔をしかめた。

「フェンリルスの・・・第1王子となると、
あのセルディアス王子か・・・」

カミーラはこの報告を聞いて、何か嫌なものを感じた。
確か、噂だが、ドラゴネス国がラリイを嫁にと話を進めていた時に、どこの国よりも反対していた国だった。
フェンリルス国の言い分からすれば、自分の国の方が先に、
ラリイ王女との婚姻が成立していたはずだと主張していたらしい。

「まさか、未だにラリイ王女を取り戻そうとしてるわけじゃないだろうな?」

カミーラはまさかと思いつつも、ただの面談なら拒否することも
出来ずに、渋々ラリイに報告しなければと思った。
ネイルが絶対にいい返事するわけがないと思いつつも。
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