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第九章「不始末」

この話は他言無用で。と、カミーラは話すだけ話したら、
ラリイにお茶のお礼を言い、すぐに去った。
このまま居続けると、ネイルの嫉妬が悪化するのが目に
見えていたのもあったのだろう。
カミーラ的には、この話さえ出来れば良かったのだから、
長居は無用だった。
だが、2人からしたら、カミーラの話が壮大過ぎて、
唖然としたまま、会話が止まっていた。

「なんか・・・凄い話だったね・・・ネイル?」
「あ、ああ。確かにあの話じゃ・・・気軽に話せって言われても、
カミーラにも心の準備が必要だったよな。」

ネイルはそう言いながら、ラリイから貰ったお茶を飲んだ。
お茶はすっかり冷めきっていた。
思っていたよりもカミーラの話は長かったようだ。
2人は何とも居た堪れなくなり、お茶をするよりも、
気分転換に庭園を散歩することにした。
嫉妬していたネイルはすぐにラリイの手を強く握る。
ラリイは恥ずかしがったが、ネイルに押され、
しっかり、手を繋いだままで、2人は散歩を始める。

「ラリイ・・・有り難うな・・・」
「え?」

いきなりお礼を言うネイルに、ラリイはびっくりする。

「カミーラの事、許してくれたんだろ?」
「え?ネイル・・・もしかして見てたの?」

ネイルのその言葉に、ラリイは最初のカミーラとのやり取りを
実はネイルに見られていたのかと思った。
だが、それは違うらしい。

「いや、正確には見てない。でも、さっきの話をした辺りで、
なんとなく・・・な。」
「凄いね・・・ネイル。やっぱりカミーラ様のことわかるんだね。」
「まぁ・・・大事な家臣とは言え、兄弟みたいなもんだからな。
それにあいつの性格上、いきなりあんな話を聞かせるわけがない。
ラリイに今までの自分の行動を謝罪をした上で、俺達が揃った時に、
わざと聞かせたんだろうと思うぞ?
そういう計算する男だからな、カミーラは・・・」
「へぇ・・・」

ネイルの話を聞いて、ラリイはカミーラの凄さを再度知った。
あのタイミングでラリイの前に現れ、謝罪し、ネイルが次に
来ることも、何もかもが計算だったのかと思うと、ラリイは、
一瞬だけカミーラに恐怖を覚えてしまった。
しかし、それだけの事を考えて行える者が今後は味方なのならば、
これほど心強いものないだろう。

「なんとなく、ソワソワしてたから、ラリイに何かするんだろう
とは思ってたけど。案の定、今日だったか。」
「え?そんな事までネイルはわかってたの?」
「ああ。いつもより仕事してても、上の空だったし、ラリイはどこに?
なんて、俺に確認して来たし。バレバレだろ?」
「うーん、そんなもんなの?」

ラリイは2人の絆が、それほどまでに強いとは知らなかったので、少し理解が出来なかった。
ネイルはそんなラリイにくすっと笑う。

「俺には、実の兄弟がいない。だから、両親がかなり心配してくれてな。
だから、ベアードやカミーラを小さい頃から、俺と一緒に居させてくれたんだ。実の兄弟の様にな。」
「優しいご両親だったんだね。」
「まぁな。だから、今日までの俺があるんだ。
あの2人が居なかったら、俺は今頃死んでたかもな!あはは。」
「そんな、悲しい事言わないで!」

ネイルの独白のような言葉に、ラリイは怒った。
冗談のつもりでも、愛してるネイルから、死んでたかもなんて
暗い言葉は聞きたくなかった。
怒ったラリイにネイルは素直にごめんと言った。
ラリイはネイルの手を自分から、ぎゅっと強く握り返した。

「ラリイ・・・俺には新しくお前と言う大事な存在が出来た。
だから、こんな縁起の悪い話はもうしない。許してくれるか?」
「うん!でも、ネイルが辛い時は私も支えになるから・・・
その時は、ちゃんと言ってね?」
「それを言うなら、ラリイもだぞ?」
「うん♪その時は私もちゃんとネイルに言うよ!」

2人は静かに見つめ合い、そして微笑み合った。
完全に世の中で言うところのリア充であり、バカップルであった。

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