第九章「不始末」
午後3時のいつものお茶の時間を少しだけ過ぎ、ラリイは慌てて、
城の方に戻る。
「ネイルとのお茶の用意しなくちゃ!」
パタパタと可愛く走るラリイの前に、城に後少しと言うとこで、
カミーラが姿を現して、ラリイの道を塞ぐ。
ラリイは急に立ち止まり、カミーラと出会ったので、走るのを止める。
「あ・・・あのう?」
なんとも言えない表情で、無言で立ち止まっているカミーラに、
ラリイは少したじろぎ、動揺する。
何か怒らせるような事でもしただろうか?と考えてしまう。
すると、突然、カミーラは膝を折り、ラリイに深々と頭を下げる。
ラリイはカミーラがこの様な行動に出ると思わず、ますます困惑する。
「え?あのう・・・?ど、どうしたんですか?」
ラリイがカミーラに恐る恐る聞くと、カミーラは顔も上げずに、
厳かな雰囲気の中で話を続ける。
「ラリイ王女様。どうか、今までの私の無礼をお許し下さい。」
「え?」
「出会いの瞬間から、私は貴女が鳥人であると言うだけで、
自分の身分も弁えずに、貴女に散々、酷い事をして参りました。
態度だけでなく、暴言も。本来なら、一国の王女に対して、
許されることではありません。場合によっては、私は今からでも
処分を受けても良いと思っております。」
淡々と語るカミーラに、ラリイは、ただ唖然としていた。
そして、我に戻ったラリイはすぐにカミーラに返す。
「い、いえ!あの時は、その・・・私も何も事情も知りませんでしたし、
ネイルから話を聞いた時は、鳥人のその・・・王族の女性は
恨まれていても、しょうがなかったんだと理解しましたし、
私は別にカミーラ様を恨んでなんかいないし、処分なんて望んでないです!」
「ですが、それでは・・・」
「なら!今後もどうかネイルの側に居てあげて下さい!」
「え?」
ラリイの返事に、顔を上げたカミーラの方が唖然とする。
カミーラ的には、てっきり何かしらの処分をされるだろうと、
覚悟していただけに、こんなに穏便に事が終わろうとしてることに、
逆に困ってしまったのだ。
しかし、ラリイの方が穏やかな表情で更にカミーラに言う。
「カミーラ様はネイルにとって、とっても大事な方です。
だから、今後も一緒に居て貰って支えてあげて欲しいです。
で、もしお許し下さるなら、未熟な私にもお力を
お貸し頂けたら、嬉しいです。」
「ラリイ王女様・・・」
ラリイの屈託のない笑顔に、カミーラは何も言えなくなってしまった。
フェニキアの至宝、歌姫は、こんなにも穏やかで優しい存在だったのかと、
カミーラは心の中で再認識した。
「これじゃ・・・ダメですか?」
ラリイは笑顔のまま、耳を2,3度パタパタさせて、カミーラに確認する。
カミーラはまた深々と頭を下げて、「有り難うございます。」と
短く返事をした。
一瞬だけ、泣きそうになる自分を必死に隠して。
「なんだ、カミーラ・・・まさか、今頃になって・・・
お前もラリイを狙いだしたのか?」
2人の会話が済み、カミーラが立ち上げってすぐに、カミーラの
背後からネイルの声がした。
声からして、明らかに嫉妬しているのがわかる。
ラリイもカミーラもお互い顔を見合わせて笑う。
「全く、ラリイもお茶の準備してる様子ないし、何処にいるのかと
思えば・・・」
「ごめんね!ネイル!すぐに準備するから、待ってって!」
「すいませんね、ネイル。どうしても、ラリイ王女とお話し
しておきたいことがあったので、私が引き留めてしまったのですよ。
だから、ラリイ王女に非はありません。」
「ふーん・・・話ね・・・俺抜きで?」
ネイルは2人を疑うように見比べる。
どうやら、自分だけが蚊帳の外なのが、どうしても気に入らないらしい。
「どんな話したんだ?」
「そ、それは・・・」
嫉妬心むき出しのネイルの質問に、ラリイは口篭もる。
そんな時に、カミーラはさっと答える。
「それは秘密です。」
「はぁ?何でだ?」
「それは、今後、ラリイ王女はドラゴネス国の王妃になって頂く方です。
なので、大事な話しをしていました。だから、ネイルには内緒です。」
「はぁ?何だよ・・・それ・・・」
カミーラの意外な答えに、ネイルが動揺して、つい大きな声を出す。
それを見ていたラリイは、クスクス笑ってしまった。
きっとカミーラはさっきの話をすぐにするのは、
恥ずかしいのだろうと、ラリイは直感的に思った。
本当は何も隠すことではないのだろうが、カミーラの性格が
それを許さないのだろうと。
「ラリイ・・・そうなのか?」
ネイルが今度はラリイに向かって、恨みがましい顔で聞いて来る。
ラリイは笑顔で、「そうだよ!」と答える。
ラリイにも裏切られ、ネイルは何やらショックを受けてる
様子ではあったが、2人の問題がいい方向に進んだのだけは
心の中で理解していた。
「なら、今回の密会は許してやるか・・・」
ネイルは心の中で、そう2人に向かって呟いていた。
ネイル達の結束は徐々に固いものになっていったのだった。
城の方に戻る。
「ネイルとのお茶の用意しなくちゃ!」
パタパタと可愛く走るラリイの前に、城に後少しと言うとこで、
カミーラが姿を現して、ラリイの道を塞ぐ。
ラリイは急に立ち止まり、カミーラと出会ったので、走るのを止める。
「あ・・・あのう?」
なんとも言えない表情で、無言で立ち止まっているカミーラに、
ラリイは少したじろぎ、動揺する。
何か怒らせるような事でもしただろうか?と考えてしまう。
すると、突然、カミーラは膝を折り、ラリイに深々と頭を下げる。
ラリイはカミーラがこの様な行動に出ると思わず、ますます困惑する。
「え?あのう・・・?ど、どうしたんですか?」
ラリイがカミーラに恐る恐る聞くと、カミーラは顔も上げずに、
厳かな雰囲気の中で話を続ける。
「ラリイ王女様。どうか、今までの私の無礼をお許し下さい。」
「え?」
「出会いの瞬間から、私は貴女が鳥人であると言うだけで、
自分の身分も弁えずに、貴女に散々、酷い事をして参りました。
態度だけでなく、暴言も。本来なら、一国の王女に対して、
許されることではありません。場合によっては、私は今からでも
処分を受けても良いと思っております。」
淡々と語るカミーラに、ラリイは、ただ唖然としていた。
そして、我に戻ったラリイはすぐにカミーラに返す。
「い、いえ!あの時は、その・・・私も何も事情も知りませんでしたし、
ネイルから話を聞いた時は、鳥人のその・・・王族の女性は
恨まれていても、しょうがなかったんだと理解しましたし、
私は別にカミーラ様を恨んでなんかいないし、処分なんて望んでないです!」
「ですが、それでは・・・」
「なら!今後もどうかネイルの側に居てあげて下さい!」
「え?」
ラリイの返事に、顔を上げたカミーラの方が唖然とする。
カミーラ的には、てっきり何かしらの処分をされるだろうと、
覚悟していただけに、こんなに穏便に事が終わろうとしてることに、
逆に困ってしまったのだ。
しかし、ラリイの方が穏やかな表情で更にカミーラに言う。
「カミーラ様はネイルにとって、とっても大事な方です。
だから、今後も一緒に居て貰って支えてあげて欲しいです。
で、もしお許し下さるなら、未熟な私にもお力を
お貸し頂けたら、嬉しいです。」
「ラリイ王女様・・・」
ラリイの屈託のない笑顔に、カミーラは何も言えなくなってしまった。
フェニキアの至宝、歌姫は、こんなにも穏やかで優しい存在だったのかと、
カミーラは心の中で再認識した。
「これじゃ・・・ダメですか?」
ラリイは笑顔のまま、耳を2,3度パタパタさせて、カミーラに確認する。
カミーラはまた深々と頭を下げて、「有り難うございます。」と
短く返事をした。
一瞬だけ、泣きそうになる自分を必死に隠して。
「なんだ、カミーラ・・・まさか、今頃になって・・・
お前もラリイを狙いだしたのか?」
2人の会話が済み、カミーラが立ち上げってすぐに、カミーラの
背後からネイルの声がした。
声からして、明らかに嫉妬しているのがわかる。
ラリイもカミーラもお互い顔を見合わせて笑う。
「全く、ラリイもお茶の準備してる様子ないし、何処にいるのかと
思えば・・・」
「ごめんね!ネイル!すぐに準備するから、待ってって!」
「すいませんね、ネイル。どうしても、ラリイ王女とお話し
しておきたいことがあったので、私が引き留めてしまったのですよ。
だから、ラリイ王女に非はありません。」
「ふーん・・・話ね・・・俺抜きで?」
ネイルは2人を疑うように見比べる。
どうやら、自分だけが蚊帳の外なのが、どうしても気に入らないらしい。
「どんな話したんだ?」
「そ、それは・・・」
嫉妬心むき出しのネイルの質問に、ラリイは口篭もる。
そんな時に、カミーラはさっと答える。
「それは秘密です。」
「はぁ?何でだ?」
「それは、今後、ラリイ王女はドラゴネス国の王妃になって頂く方です。
なので、大事な話しをしていました。だから、ネイルには内緒です。」
「はぁ?何だよ・・・それ・・・」
カミーラの意外な答えに、ネイルが動揺して、つい大きな声を出す。
それを見ていたラリイは、クスクス笑ってしまった。
きっとカミーラはさっきの話をすぐにするのは、
恥ずかしいのだろうと、ラリイは直感的に思った。
本当は何も隠すことではないのだろうが、カミーラの性格が
それを許さないのだろうと。
「ラリイ・・・そうなのか?」
ネイルが今度はラリイに向かって、恨みがましい顔で聞いて来る。
ラリイは笑顔で、「そうだよ!」と答える。
ラリイにも裏切られ、ネイルは何やらショックを受けてる
様子ではあったが、2人の問題がいい方向に進んだのだけは
心の中で理解していた。
「なら、今回の密会は許してやるか・・・」
ネイルは心の中で、そう2人に向かって呟いていた。
ネイル達の結束は徐々に固いものになっていったのだった。