第八章「結婚準備」
「ちちうえーーー」
「ラリイ!おお、元気であったか!」
「父上、お久しぶりです・・・」
「ラリイ・・・よく無事で戻って来た・・・」
フェニキア城の王の間で、親子は感動的な再会を果たした。
ラリイは王座に座ってる父の元に走っていき、父にしがみつく。
フェルオリアも玉座から立ち、娘を抱きしめる。
よほど嬉しいのか、ラリイの耳はさっきからパタパタしっぱなしだ。
最初は二度と戻って来れないとお互い思っていただけに、
そんなに長い期間、離れていたわけではなかったのだが、
親子の間には喜びの空気が流れていた。
「ラリイ、お帰り。」
「お兄様、ただいま!」
父の次は、兄と抱き合い合う。
あの決闘騒ぎの後の再会だったが、2人にわだかまりはなかった。
ネイルは親子の久しぶりの再会を微笑ましく見守っていた。
城の他の者達も静かに、この光景を見守っている。
「フェリオリア王。大変、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
「うむ。ネイル王も、息災であったか?」
「はい。」
ラリイとの再会が無事に済み、ネイルとラリイは一緒に並んで、
フェルオリアと謁見する。
ネイルもラリイも膝を折り、フェルオリアに頭を下げる。
「良い良い。2人とも頭を上げよ。」
「はい。」
「今日は、大事な報告があるのであろう?ネイル王。」
「はい。今日は、正式にラリイ王女との結婚のお許しを頂きたく、
参りました。どうぞ、ラリイ王女を私の妻に下さい。」
「父上・・・お願いします。」
2人はまた頭を下げる。重い沈黙が続く。
城の者達もざわつく。フェルオリアの顔も厳しいものになっている。
だが、ネイルとラリイは、フェルオリアが口を開くのを待つしかなかった。
「アディリスから話は聞いた。娘を賭けて、ネイル王は見事に決闘で勝ったと。」
「はい。ですが、それはラリイ王女の援助もありました。」
「ほう。娘の?」
「はい。歌で私を応援してくれておりました。」
「そうなのか?アディリス。」
「はい、父上。」
「そ、それは、私が勝手に歌っていただけで!ネイル王は、ちゃんとお兄様と決闘して勝ちました!」
ラリイは慌てて、父に言う。不正などはしていないと。
ネイルも何か言えばいいのに、と思いラリイはネイルを見るが、
ネイルは沈黙したままだった。
「うむ。試すようなことして悪かった。アディリスの話通りだ。
ネイル王は嘘はつかれていないようだ。」
「私は真実しか言いません。私の実力不足なのは、明らかでした。
でも、あの時、勝てたのは、間違いなくラリイ王女のおかげだと
思ってます。」
「ネイル・・・」
素直に率直にフェルオリアに自分の言葉を言うネイルに、
ラリイは思わず、いつもの様に呼んでしまった。
「噂とは、大分違う男のようだ。てっきり、娘をもう我が物として、
こうして挨拶など来るとは思ってもいなかった。
それほどまでに、娘との結婚は真剣だと言う事か?」
「はい。私にとって、とても大事な事です。」
「あの大国のドラゴネスの王ともあろうものがか?」
「はい。将来、妻になるラリイ王女の祖国である、フェニキアとも、
また昔の様に友好的な関係でありたいと強く願っております。」
ネイルの意志の強い眼差しに、フェルオリアも息を飲む。
自分よりも遥かに年下の王に、威厳を感じさせられるなど、
フェルオリアも思ってもいなかった。
「ラリイ・・・」
「はい。」
「お前は、どうなのだ?ここまで、ネイル王に思われて、
本当に結婚したいと、思っているのか?」
「はい!父上!私はネイル王の元にぜひ嫁ぎたいと思います!」
重い空気の中で、ラリイは飛び抜けて明るい声と笑顔で、
父の質問に、何の迷いもなく答えた。
「ふっ・・・・あはははは!」
ラリイの姿にアディリスが、突然笑い出す。
次いで、城の者達からも笑い声が出てくる。
フェルオリアにしては、がっかりと言うか、物凄く寂しそうな顔と悲しい声でネイルに向かって言う。
「おお、ネイル王よ。其方もいずれ、私の様に娘を持つ身になれば、
私のこの悲しみもわかる日が来るかもしれませんな。
こうも、ラリイがはっきり言うのなら、否定など出来ようもない。」
「では?認めて下さると?」
「認めようではないか。決闘にも打ち勝ち、婚姻の試練の儀も済み、
娘のこの返答。もう、何を拒否出来ようか、この結婚に。」
「有り難うございます!フェルオリア王!」
ネイルは深々とフェルオリアに頭を下げた。
ラリイもネイルと一緒に。
その姿はまるでオシドリの夫婦のようだとフェルオリアは思った。
悔しいことではあるが、ラリイがネイルと心を通い合わせて
いるのは、見ていてもわかる程だった。
こうなれば、逆に別れさせることなど無理であろうと。
最初にフェニキアを立った頃と真逆であった。
「良かったな。ラリイ。」
「お兄様・・・うん。」
アディリスは優しい笑顔で妹に言う。
ラリイも素直に頷く。ここまでくれば、兄も異論はないようだ。
「さて、そうと決まれば、今夜は宴であるぞ!
こんなめでたい日はそうそうあるものじゃない!
一族を上げて、ネイル王を歓迎せよ!」
「ははー!!!」
フェルオリアの掛け声に城の者が一斉に反応する。
城の中は一気に騒がしくなった。
やっと、やらなければならなかったことの1つが終わり、
ネイルは内心では、無事に終わったことに、
安堵してはいたが、ドキドキは、まだ治まらなかった。
「ラリイ!おお、元気であったか!」
「父上、お久しぶりです・・・」
「ラリイ・・・よく無事で戻って来た・・・」
フェニキア城の王の間で、親子は感動的な再会を果たした。
ラリイは王座に座ってる父の元に走っていき、父にしがみつく。
フェルオリアも玉座から立ち、娘を抱きしめる。
よほど嬉しいのか、ラリイの耳はさっきからパタパタしっぱなしだ。
最初は二度と戻って来れないとお互い思っていただけに、
そんなに長い期間、離れていたわけではなかったのだが、
親子の間には喜びの空気が流れていた。
「ラリイ、お帰り。」
「お兄様、ただいま!」
父の次は、兄と抱き合い合う。
あの決闘騒ぎの後の再会だったが、2人にわだかまりはなかった。
ネイルは親子の久しぶりの再会を微笑ましく見守っていた。
城の他の者達も静かに、この光景を見守っている。
「フェリオリア王。大変、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
「うむ。ネイル王も、息災であったか?」
「はい。」
ラリイとの再会が無事に済み、ネイルとラリイは一緒に並んで、
フェルオリアと謁見する。
ネイルもラリイも膝を折り、フェルオリアに頭を下げる。
「良い良い。2人とも頭を上げよ。」
「はい。」
「今日は、大事な報告があるのであろう?ネイル王。」
「はい。今日は、正式にラリイ王女との結婚のお許しを頂きたく、
参りました。どうぞ、ラリイ王女を私の妻に下さい。」
「父上・・・お願いします。」
2人はまた頭を下げる。重い沈黙が続く。
城の者達もざわつく。フェルオリアの顔も厳しいものになっている。
だが、ネイルとラリイは、フェルオリアが口を開くのを待つしかなかった。
「アディリスから話は聞いた。娘を賭けて、ネイル王は見事に決闘で勝ったと。」
「はい。ですが、それはラリイ王女の援助もありました。」
「ほう。娘の?」
「はい。歌で私を応援してくれておりました。」
「そうなのか?アディリス。」
「はい、父上。」
「そ、それは、私が勝手に歌っていただけで!ネイル王は、ちゃんとお兄様と決闘して勝ちました!」
ラリイは慌てて、父に言う。不正などはしていないと。
ネイルも何か言えばいいのに、と思いラリイはネイルを見るが、
ネイルは沈黙したままだった。
「うむ。試すようなことして悪かった。アディリスの話通りだ。
ネイル王は嘘はつかれていないようだ。」
「私は真実しか言いません。私の実力不足なのは、明らかでした。
でも、あの時、勝てたのは、間違いなくラリイ王女のおかげだと
思ってます。」
「ネイル・・・」
素直に率直にフェルオリアに自分の言葉を言うネイルに、
ラリイは思わず、いつもの様に呼んでしまった。
「噂とは、大分違う男のようだ。てっきり、娘をもう我が物として、
こうして挨拶など来るとは思ってもいなかった。
それほどまでに、娘との結婚は真剣だと言う事か?」
「はい。私にとって、とても大事な事です。」
「あの大国のドラゴネスの王ともあろうものがか?」
「はい。将来、妻になるラリイ王女の祖国である、フェニキアとも、
また昔の様に友好的な関係でありたいと強く願っております。」
ネイルの意志の強い眼差しに、フェルオリアも息を飲む。
自分よりも遥かに年下の王に、威厳を感じさせられるなど、
フェルオリアも思ってもいなかった。
「ラリイ・・・」
「はい。」
「お前は、どうなのだ?ここまで、ネイル王に思われて、
本当に結婚したいと、思っているのか?」
「はい!父上!私はネイル王の元にぜひ嫁ぎたいと思います!」
重い空気の中で、ラリイは飛び抜けて明るい声と笑顔で、
父の質問に、何の迷いもなく答えた。
「ふっ・・・・あはははは!」
ラリイの姿にアディリスが、突然笑い出す。
次いで、城の者達からも笑い声が出てくる。
フェルオリアにしては、がっかりと言うか、物凄く寂しそうな顔と悲しい声でネイルに向かって言う。
「おお、ネイル王よ。其方もいずれ、私の様に娘を持つ身になれば、
私のこの悲しみもわかる日が来るかもしれませんな。
こうも、ラリイがはっきり言うのなら、否定など出来ようもない。」
「では?認めて下さると?」
「認めようではないか。決闘にも打ち勝ち、婚姻の試練の儀も済み、
娘のこの返答。もう、何を拒否出来ようか、この結婚に。」
「有り難うございます!フェルオリア王!」
ネイルは深々とフェルオリアに頭を下げた。
ラリイもネイルと一緒に。
その姿はまるでオシドリの夫婦のようだとフェルオリアは思った。
悔しいことではあるが、ラリイがネイルと心を通い合わせて
いるのは、見ていてもわかる程だった。
こうなれば、逆に別れさせることなど無理であろうと。
最初にフェニキアを立った頃と真逆であった。
「良かったな。ラリイ。」
「お兄様・・・うん。」
アディリスは優しい笑顔で妹に言う。
ラリイも素直に頷く。ここまでくれば、兄も異論はないようだ。
「さて、そうと決まれば、今夜は宴であるぞ!
こんなめでたい日はそうそうあるものじゃない!
一族を上げて、ネイル王を歓迎せよ!」
「ははー!!!」
フェルオリアの掛け声に城の者が一斉に反応する。
城の中は一気に騒がしくなった。
やっと、やらなければならなかったことの1つが終わり、
ネイルは内心では、無事に終わったことに、
安堵してはいたが、ドキドキは、まだ治まらなかった。