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第八章「結婚準備」

ベアードがネイルに殴られ、勢いよく吹っ飛ぶ。
ベアードはこうなることを予期していたらしく、ネイルに
殴られても、怒るどころか笑っていたくらいだ。

「な、何も殴らなくても!ネイル、酷いよ!!」

ラリイはネイルを非難して、ベアードの元に駆け寄り、回復魔法をかける。

「いいんだ、ラリイ。これは男同士の話なんだ。」
「そうだな・・・」

ベアードはラリイにお礼を言いつつも、立ち上がって、
再び睨んでくるネイルと対峙する。

「ベアード、お前、ラリイが俺の初恋の子だって、知ってたな?」
「え?」

ネイルの言葉に、ラリイの方が驚く。
ベアードはネイルの言葉を素直に認めた。

「ああ、知ってた。知ってた上で今日まで隠してた。」
「何でだ?もっと早くに教えてくれてれば、俺はラリイを・・・
無用に傷つけることなかったのに・・・」

ネイルにはそれが許せなかった。
早く教えてくれていれば、あんなにも最初に冷たい態度など
取ることもなかったのにと。

「俺はな、ネイル・・・
お前にちゃんとラリイ王女と向き合って欲しかったんだよ。」
「はぁ?どういうことだ?」
「どうせ、ネイルは初恋の子がラリイ王女だと、最初から
知っていたら、ラリイ王女が、どんな女の子であっても、
速攻、結婚をOKにしてただろ?」
「そ、それは・・・」
「ネイル・・・そんなに想ってくれていたの?!」

ベアードの言葉から、ラリイはネイルが、そんなにも初恋で
あった自分に深く重いほどの想いを寄せられていたことを知った。

「俺は心配だったんだ。お前のラリイ王女への想いは
少し異常だと思う程に過剰だったから。
だから、あえて教えなかった。
あんな状態で、もし教えていたら・・・
ラリイ王女がお前を拒否したとしても、無理矢理にでも
自分のモノにしただろうしな。」
「そ、そんなにですか?!」

ラリイはチラリとネイルを見る。
ネイルは図星をさされた顔をしていた。
ベアードの言う通り、もしかしたら、初恋の相手だと知っていたら、
ネイルは今までにない行動に出ていたかもしれない。
それこそ、ラリイと言う存在を盲目的に愛するだけで、
ちゃんと見てくれなかったかもしれない。
ラリイはさっきのネイルの熱い告白を通じて、ベアードの
言いたいことがわかる様な気がした。

「お前の異常なまでの執着的な愛をラリイ王女が
いきなり受け止めるのだって、難しいと思ってな・・・」
「ベアード様・・・そこまで気を使ってくれて・・・」
「ベアード・・・」

ベアードは2人に向かって苦笑いをする。
ベアードは本当に心配してくれていたのだ。
2人がちゃんとお互いの気持ちを確かめ合えた上で
愛し合えるようにしてくれたのだ。
こんなにも思ってくれる人にラリイは感謝せずにはいられなかった。

「ネイル・・・もうやめよう!
こんなにも、私達の将来を気遣ってくれる方を、
もしまたネイルが殴るなら・・・
今度は私が許さないよ・・・ネイル・・・」
「ラリイ・・・お前・・・」

本気で怒ってるラリイに、ネイルはたじろぐ。
そして少しの沈黙ののちにネイルが折れた。

「ベアード・・・悪かった。ラリイの言う通りだ。
俺は少し初恋ってことにこだわりすぎてた。
大事なのは気持ち。前にもそう言ってくれてたよな?
今後も、それをちゃんと考えるよ。」
「わかってくれれば、それでいいんだ。」

ベアードはいつもの様に、ネイルとラリイに向かって、にかっと笑う。

「それにしても、だからあんなにもラリイと結婚しろって
うるさかったわけだ・・・本当に・・・」
「俺がネイルに対して、悪い事をしたことないだろうが。」
「まぁ・・・そりゃ・・・な」
「だが、俺が変な心配するよりも、ラリイ王女様の方が、
ちゃんとネイルと向き合ってくれていたから、俺も安心してたよ。」
「そうだな。やっぱり、俺のラリイは違うな。」
「俺の?もう、結婚した気でいるのか、ネイル?」

ネイルの言葉にベアードはニヤニヤし出す。
ネイルも咄嗟に言ってしまっただけに、ハッとしたが遅かった。

「もう・・・ネイルの馬鹿・・・」

ラリイは恥ずかしそうにして、2人の会話を聞いていた。
ネイルには、本当に信頼できる人が側にいるんだなぁーと
ラリイは改めて思った。
ベアードには、今後、一生、2人で感謝していくんだろうなと、
ラリイは再確認した。

「ベアード様、本当に有難うございました。」

ラリイはベアードにお辞儀しながら、感謝した。

「いやいや!ラリイ王女!頭を上げて下さいよ!!
ラリイ王女こそ、こんなネイルに嫌気も差さずに、ここまでに
なってくれて、俺こそ感謝ですよ!」
「こんな・・・ネイルだ?」
「そうだろうが!恋愛経験少ない俺が苦労したんだぞ!」
「よく、言うぜ・・・全く・・・」

ベアードとネイルは、そう言い、互いに睨みをきかせていたが、
すぐにお互い笑い出す。
いつもの、ちょっとしたやり取り。
場の空気は、いつにも増して、とっても穏やかなものだった。
ラリイも何よりも嬉しそうに、その場に加わっていた。
3人の繋がりはますます強固なものになったのだ。
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