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第七章「試練」

「あのう・・・ネイル?」
「ん?何だ?」
「あう・・・」

プロポーズされてからも、ラリイはネイルに抱きしめられたままだった。
どうやら、ネイルはまだラリイを離す気はないらしい。
自分が初恋の人だと知っただけで、こんなにも変わるものなんだろうか?
ラリイは、少し複雑な気持ちになる。
そんなラリイの気持ちを察したのか、ネイルが話を始める。

「ラリイ。最初はあんなに冷たくして、傷つけて、本当にごめん。
俺は、あの時は初恋の子としか、結婚する気なかったんだ。
なのに、ラリイがその初恋の子だって・・・
今の今まで気づかないなんて・・・
俺は、本当に馬鹿だよな・・・本当にごめん。」

ネイルは深く後悔した声と顔でラリイの首に自分の顔を沈める。
どうか愚かな自分を許して下さいと甘えるように。
ラリイとネイルの身体がますます密着する。
ラリイはどんどん顔が真っ赤になる。

「ネイルに、そんなに想われていたなんて、
知らなかったよ・・・でも・・・」
「でも?」

ラリイの言葉に不安そうにネイルはラリイを見つめる。

「今は、凄く嬉しいよ。
ネイルの気持ちがようやくわかったから・・・」
「ラリイ!!!」
「きゃあ!!!」

ラリイの言葉を聞いた瞬間にネイルは、ラリイをもっと
きつく抱きしめる。ラリイは思わず短い悲鳴を上げる。
どうやらネイルは嬉しくて仕方がないらしい。

「ラリイ・・・愛してる。
もちろん、お前が初恋の子じゃなくても、俺は結婚したいと
思ってはいたけど、でも、今はもっと、お前と結婚したいと
心から思ってる。」
「ネイル・・・」
「俺はラリイをこの国に閉じ込めたり、縛ったりしない。
ラリイは自由にしていいんだ。それで、俺と一緒に
色々な所に行こう。俺と一緒に生涯を歩んで欲しい・・・」

ネイルの言葉を聞いて、ラリイはネイルの胸で静かに泣いた。
こんなにも嬉しい事があるだろうか。
自分が結婚するなら、言われたかった言葉をネイルが言ってくれたのだ。
国の発展の為に縛ったりしないと。
祈り続けるだけの人生じゃなくていいと。

「ネイル・・・嬉しいよぉ・・・」
「ラリイ・・・」

いい雰囲気に、ネイルは我慢出来ずに、ラリイにそっとキスをした。
慰めるつもりで。
最初はラリイも、無抵抗でネイルとキスをしてしまったのだが、
途中になって顔を真っ赤にしてしまう。

「あわわわわ」
「うん?どうした?」
「結婚する前にキス・・・しちゃった・・・」
「あ・・・」
「もう!ネイルの馬鹿!!!」
「ご、ごめん!ラリイが泣いてるから、その、慰めてやりたくて・・・」
「知らない!」

ラリイは怒って、ネイルから顔をぷいと背ける。
そう、フェニキアの女性は身持ちが固いのだ。
初めてのキスは結婚式で、そしてそれ以上は初夜で・・・
それが決まりになっていたはずなのに、ネイルにほだされて
ラリイはキスを許してしまった。
だが、可愛く怒るラリイにネイルは優しく笑う。

「じゃあ、責任を取るから、俺と結婚してくれるな?ラリイ。」
「ず、ずるい・・・そんなの・・・」
「怒らないでくれ、ラリイ・・・愛してる」
「もう・・・」

結局、ラリイはもう一度ネイルにキスされてしまう。
ネイルにはこの先もこんな感じにされてしまいそうで、ラリイは
少し不安ではあったものの、なんだかんだ幸せであった。
2人はやっとお互いの気持ちが通じ合えたのだった。
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