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第七章「試練」

2人が寝てしまってから、1時間もしないくらいだろうか。
2人は一緒に目を覚ました。
ネイルは身体の痛みが、かなり治ってることに安心していた。
そして、辺りを見回すと、幼竜が嬉しそうにネイルとラリイの
目の前を嬉しそうに飛び回っている。

「ピーピー♪ピー♪」
「え?こいつ・・・あの温泉街の時の?」
「んん・・・あれ?私・・・寝ちゃった?」

ネイルは幼竜に驚きつつ、横にラリイが居たのも驚く。
だが、すぐに辺りを警戒する。

「あのドラゴンは?どうした?!」
「ピーピー!!」

幼竜は突然ネイルの胸にダイブする。
まるで、もう大丈夫だよ!と言わんばかりに。

「お、おい・・・?」

幼竜の予期せぬ行動に困惑するネイルに、ラリイは笑う。

「何が可笑しいんだ、ラリイ?あのドラゴンはどうなったんだ?
俺達は無事・・・なのか?」
「うん。大丈夫だよ、ネイル。
あのドラゴンは、この子の母親の竜だったんだよ。」
「え?本当か?!」
「うん。だから、子供を守る為に、勘違いして、ネイルを
攻撃しちゃったんだって。また攫いに来たのか思われたみたい。」
「そ、そうだったのか・・・」

ラリイの説明を聞いて、ネイルは一気に力が抜けたのを感じた。
ラリイの言う通りなら、もうこれ以上の危険はないと言う事だろう。
自分の胸でスリスリしてくる、幼竜の頭を撫でて、ネイルは安心して、静かに笑った。

「悪かったな。お前のお母さんを騒がせて・・・ごめんな。」
「ピー!ピピピ♪」
「うふふ、その子、別に気にしてないよ!だって♪」
「そっか・・・」

ネイルは心底安堵した。ラリイも無事で、尚更安心したのだ。

「ラリイが来てくれなかったら、俺は死んでたな。」
「本当に、びっくりしたよ!この子と、この洞窟で再会して、
ネイルに逢わせたいと思って、探してたら、ネイルは
あんなに怪我してて・・・
本当にびっくりしたんだから・・・」

ラリイはあの出来事を思い出したのか、いきなり泣き出して、
ネイルに思わず、しがみついてしまった。

「おい・・・何も今頃になって泣き出さなくても・・・」
「でも、本当に無事で良かった!ネイルが無事で・・・本当に!」

泣きながらも、笑顔でネイルにしがみついて来たラリイを見て、
ネイルに衝撃が走る。
どこかで、この顔を見たことがある気がする・・・
もっともっと昔に・・・
ネイルは何とも言えない感覚に襲われそうになったが、
今は何とか耐えて、ラリイから離れた。

「ラリイ。そろそろ、帰ろう。ベアード達も心配してるだろうから。」
「そ、そうだね・・・ごめんね。
でも、ネイルの身体が回復出来てたみたいで良かった。」
「うん。ラリイの回復はしっかり効いたよ。ありがとうな。」
「うん!」

2人が立ち上がると、幼竜は母親竜の元に行く。
母親竜は座ったままの姿勢で2人に頭を下げる。
ラリイ達も頭を下げて、静かに巣を去った。

「にしても、こんな事があるんだな・・・」
「だよねー私も本当にびっくりしちゃった・・・」
「でも、これで・・・ラリイはもう・・・」
「そうだね。これが終わったら、ネイルとお別れだね・・・」

洞窟の反対の出入り口に近づくたびに2人の会話は減っていく。
お互いに何か言わなくちゃと思っているのに、大事なとこで何
も言えない。
もう、すぐそこにベアード達の姿も見えている。
ベアード達も2人に気づき始めていた所で・・・

「ピーピー!」

突然の幼竜の出現に、ラリイとネイル、ベアード達が驚く。

「なんと!国竜の子供?!」
「これはなんて幸運なんだ!」
「お2人を祝福してるのか!」

ベアードの兵士達が騒いでいる。

「ど、どうしたの?」

ラリイが心配そうにすると、幼竜はラリイの胸に飛び込み、ラリイに石を渡す。緑色の綺麗な石を。

「お前・・・それ、ドラゴンアイじゃないか!」

ネイルがその石を見て驚く。しかも、緑色のドラゴンアイは
希少価値が高く、王家の者であっても、所有してる数は少ない。

「ネ、ネイル・・・この子が、お礼と謝罪にくれるって・・・」

ラリイは思わぬ事態になって、困った顔でネイルに報告する。
ネイルも驚愕してはいたが、すぐに大爆笑し始めた。
こんなにも笑うネイルに、わけもわからずにラリイはポカーンとしてしまう。

「ああ、悪い。ラリイ・・・」
「ううん、大丈夫だけど・・・どうしよう・・・」

笑いすぎて泣いてるネイルは涙を拭いて、ラリイに謝罪する。
ラリイは困った顔のままネイルを見る。

「貰ってくれないか?」
「え?でも、それって・・・」

ネイルの突然の言葉に、ラリイは驚く。
そんなラリイにネイルはしっかりとラリイを見て言う。

「俺の気持ちは、後で別の場所でしっかり言う。
だから、今はラリイはその石を持ってってくれ。いいか?」
「う、うん・・・」

ネイルの熱い真剣な眼差しにラリイは照れて、短く返事するしか出来なかった。
婚姻の試練の儀は、無事に成功したと言う形で終わったのだった。
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