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第七章「試練」

ドドーンと何かがぶつかる音がして、洞窟内が少し揺れる。
ラリイはネイルに何かがあったのかと慌てる。

「ど、どうしよう!ネイルに何かあったのかな?」

ラリイは真っ直ぐに進めとネイルに言われたが、凄く嫌な胸騒ぎを覚えて、真っ直ぐ進むのを止め、ネイルが落ちたところへ引き返した。

「どうにか、ネイルの落ちた先に行けないかなぁ・・・」

覗き込むも、道具も何もない状態では、無理そうだった。
そこへ、パタパタと何かが飛んでくる音がする。
ラリイは一瞬モンスターかと思い、身構えるが、そこには、
温泉街で出会った、あの幼竜が居た。

「え?嘘、あなたはここに帰って来てたの?」
「ピーピー♪」

幼竜は、嬉しそうにラリイに飛びつく。そして、ラリイの頬を舐める。

「きゃあ!もう!そんなに舐められたら、くすぐったいよ!
えへへ、良かった!本当に無事で!お母さんには逢えた?」
「ピーピピピ!」
「そうか!お母さんが迎えに来てくれたんだもんね!今はどこにいるの?」
「ピーピー――!」
「ここの洞窟の巣にいるんだ。
そっか、一緒に暮らせてるなら良かった♪」
「ピピピ!ピ?」
「あ、そうなの。ここから落ちた、竜人の男の人知らない?」
「ピー!ピピ!」
「本当?!この先に合流できる場所ある?!」

ラリイは幼竜の案内で、落ちたネイルに合流出来そうだった。
まさか、ここで運命的な再会を果たすことになって、ラリイは思わず顔を綻ばせずにはいられなかった。

「うふふ、早くネイルと合流して、この子に逢わせてあげよう。
きっと、びっくりするよね♪」

ラリイは幼竜の速さに合わせて、駆け足になっていた。

「くそ・・・身体が動かない・・・
これは逃げるのも無理・・・か」

ネイルは激痛に耐えながら、何とか意識を保ち、ドラゴンと対峙していた。
ドラゴンの方は怒りはしているものの、ネイルに必要以上の
攻撃はしてこなかった。
ただ、変な動きをすれば、今度は確実に殺されるだろう。
ドラゴンは戦闘態勢だけは解いていないのだから。

「このまま、ここに居たら、ラリイが・・・来ちまう・・・
そしたらラリイも危ない・・・どうにか・・・しなきゃ・・・」

ネイルは必死に考えるものの、意識がどんどん遠のいていく。
そこに、誰かの駆け足の音がする。
まさか・・・ラリイが?
ネイルが何とか、その駆け足のする方に顔を向けると、ラリイが
口元を抑えて、深刻そうな顔でネイルを見ていた。

「ネ、ネイル!!!!!」

ラリイは急いでネイルの元に駆け寄って来る。

「だ、駄目だ、ラリイにこっちに来るな!」

なんとかネイルはそれだけを、残りの体力を振り絞って叫んだ。
だが、戦闘態勢に入ったドラゴンは、ネイルに駆け寄ろうとする
ラリイにまさに攻撃しようとしていた。その時。

「ピーギィィイイイイ!!!!!!」

凄い声が洞窟内に響いた。幼竜が怒り、母親竜の顔を小突いたのだ。
母親竜は我に返り、ラリイへの攻撃を寸で止めた。
幼竜は何かを訴えるように母親竜に向かい鳴く。
母親竜は戦闘態勢を解いた。
緊迫していた空気は一気になくなった。

「ああ、ラリイは・・・助かったんだな・・・」

ネイルはそれだけを見届けると、安心して意識を失ってしまった。

「ネイル!ネイル!しっかりして!ネイル!!!」

ラリイは、酷い怪我をしているネイルの側に寄り、泣きながら、
ネイルに回復魔法をかけ続ける。
幼竜も心配そうにラリイとネイルを見守る。

「ググググ・・・」

と、母親竜も我が子とラリイ達を申し訳なさそうに一緒に見守る。
どうやら、母親竜は、また我が子を攫いに誰か来たのだと、
勘違いしていたようだった。
だから、巣に迷い込んでしまったネイルを瞬時に攻撃してしまったらしい。
ラリイは、幼竜を通じて、母親竜に、婚姻の試練の儀を行う為に、
この洞窟に来たことなどを説明し、余計な心配をかけたことを詫びた。
母親竜も、我が子を助けるきっかけくれたラリイに感謝し、こちらも悪かったと謝ってくれた。
回復魔法をかけ続けたラリイは、疲れからか、しばらくしてネイルと一緒に寝てしまった。

「ピー?ピー?」

幼竜は、ラリイが寝てしまったのが不思議なのか、ラリイ側に寄り、ラリイの身体を揺らす。
母親竜は我が子の悪戯を止めて、一緒にラリイ達が起きるのを
静かに見守った。
2人は静かな寝息を立てて、国竜の親子達に見守られて寝ていた。
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