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第七章「試練」

「じゃ、ここからは、俺達は同行出来ないからな。」
「ああ、わかってる。」
「ラリイ王女様。ご武運を。」
「ありがとうございます。ベアード様。」

ベアードとその部下達に見送られ、ラリイ達は婚姻の試練の儀を
行う、洞窟の前に来た。
ここからは2人で奥に進まなければならない。

「ラリイ・・・行くぞ。」
「うん!」

2人は覚悟を決めて、洞窟奥に一緒に進む。
ネイルは剣を構えていつでも戦えるようにし、ラリイはネイルの背後から、光の魔法で辺りを照らす。
モンスターが出ると言う割には、洞窟は静かなものだった。

「これは、事前に色々やったな・・・」
「ん?」

ネイルの呟きにラリイが首を傾げる。
ネイルはすぐに気が付いた。洞窟の中は誰かの手が入っていると。
モンスターを事前に処理し、かなりの安全性を高めたうえで、
ここぞとばかりに安物ではあるが、国石のドラゴンアイが
ゴロゴロ落ちている。
どうぞ、取って下さいと言わんばかりに・・・

「おばあ様か・・・
ここまで露骨にされると、試練の意味がない気がするんだが・・・」

ネイルは心の中で苦笑いせずにいられなかった。
これで、国石がなかったとは言い訳出来ない。
どうあっても、成功させろと言わんばかりである。

「どうしたものか・・・」
「どうしたの?ネイル?」
「あ、いや・・・」

困っているネイルにラリイは心配そうに声を掛ける。
この調子で真っ直ぐに進めれば、後20分もしないで、
洞窟の反対の出入り口に出るだろう。
ラリイは国石には見向きもしていないと言うか、関わろうと
していない感じだ。
そうなれば、国石を持ち帰ることもなく、当初の目的通りに、
ラリイと別れるしかなくなる。
ネイルは気持ち的に焦っていた。
やはり、洞窟内ではあるが、告白すべきかと。
ネイルは洞窟内をグルグル歩き出して考え込む。
それを見たラリイは不思議そうにネイルを見守る。
と、ふっとしたはずみに、ネイルの足元が崩れ、ネイルが洞窟内の深い場所に落ちる。

「ネ、ネイル!!!大丈夫?!!!」

ラリイは大慌てで、ネイルが落ちた場所に大声で呼びかける。
「いたたた・・・
あ、ああ、こっちは大丈夫だ!ラリイの方は平気か?!」
「うん!こっちは大丈夫だけど、ネイルと合流出来るかな?」
「俺がなんとか、そっちの道に戻るから、ラリイはゆっくり前に
進め。そうすれば、反対の出入り口に辿り着けるはずだ!」
「うん!わかった!ネイル、気を付けてね!!」

2人は大声で呼び合い、お互いの行動を確認して、先に進むことになった。

「どうして、俺は告白しようとするたびにこうなるんだ。」

ネイルは自分の運のなさに、悲しみを覚えた。
これは、告白するなと言う事なのか・・・と。
だが、気持ちを切り替えて、ネイルは早くラリイに
合流しなければと思い直した。
いくら、洞窟内にモンスターがかなりいない状態とは言え、
油断は出来ない状況であるには違いないのだ。
洞窟内に盗賊が居る恐れだってなくはない。
最悪はドラゴンだっている可能性がある。

「そうなって欲しくはないけどな・・・」

ネイルは落ちた先で、どんどん進む。
進んだ先には、広い空間があった。まるで何かの巣のような感じだ。

「過去に居たドラゴンの巣か?」

ネイルは場所の確認をしようとした、その時に何か衝撃を身体に
受けて、洞窟内の壁に飛ばされた。
激しい激突に血反吐が出る。
何とか意識は保ってはいるが、すぐに体が動かせなかった。
頭上から、恐ろしい声が響いて来る。
危惧していたことが起きていることを悟る。

「こんな時に限って、ドラゴンに逢うとはな・・・」

ネイルは死を覚悟した。このドラゴンは怒っていたのだ。
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