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第六章「確認」

「温泉って、こんなに気持ちがいいものなんだ・・・
あーこんな気分、初めてかも・・・」

ラリイは自分の部屋の露天風呂で、のんびりくつろいでいた。
変わったお風呂ではあるものの、ラリイはいつも通りの感じで
入浴していた。
お湯が常に足されているのか、サラサラと水の流れる音が、
また何とも言えずに癒しを感じる。
最初は寒いと感じた、外の風も、今は火照った顔には心地良い。

「ネイルに良いとこ教えて貰っちゃった。
今度、父上やお兄様にも教えよう♪」

ラリイは露天風呂を満喫して、家族の事を思い出し、今後の自分の事も考えていた。

「婚姻の試練の儀が終わったら、もう今度こそ、自分の国に帰るんだ・・・」

ラリイはそう思った瞬間に涙が止まらくなった。湯船に涙が落ちる。
国に帰るのは嫌じゃないはずなのに、何故だか悲しくなる。
ネイルと離れるのが嫌だから?
でも、ネイルは自分と結婚する気はないのだ。
自分だけが側に居たいなんて、我が儘すぎるじゃないか。

「ネイルは優しいから、ここまで付き合ってくれたんだもん。
ネイルに甘えちゃ駄目だ。これ以上迷惑かけたくない。」

ラリイは自分に言い聞かせるように、何かを決意した。
最後は笑顔でネイルと別れようと。絶対に泣かないようにしようと。

「夕食はどうだった?口に合ったか?」
「うん!とっても美味しかったよ!」

温泉を楽しみ、夕食も済ませた、2人は宿の庭にある長椅子に座り、会話を楽しんでいた。
極東の島国をモデルにしてる庭園は、今までに見たことがない
木々や花が咲いていたが、これはこれで美しい景色だった。
夜なのもあり、所々にある蠟燭の明かりがまた儚げで庭園に、
幻想的な美しさを足していた。

「ネイル。」
「うん?」
「温泉に連れて来てくれて、ありがとう!
とってもいい思い出になったよ!」
「そうか、なら良かったよ。」

喜んでいるラリイ。とても良い雰囲気だった。
このままなら、ラリイに・・・
ネイルは自分の気持ちを打ち明けようと、口を開けようとした瞬間、
温泉街の方から、凄い爆音と共に、大勢の街の人の声が
飛び交うのが聞こえ出した。

「な、何だ?!」
「え?何だろう?!」

2人もお互い顔を合わせて驚く。
急いで宿に戻ると、バルトが慌てて、女将に報告している。

「ど、ど、ど、ドラゴンが!!いきなり温泉街に現れたって!
しかも、見世物小屋だけ集中して攻撃してるらしい!」
「何だって?!」

バルトの報告を聞いた、女将もたまげている。
他の宿の従業員達も、お互いに驚き合いながら、会話をしていた。

「何で、ドラゴンが?!」
「どこかの見世物小屋が怨みでも買ったんじゃないの?」
「あ、あそこか?悪名高い、あそこ!」
「ああーあいつの見世物小屋じゃない?確か、子供の竜がいるって噂聞いたよ!」

バルドの報告に、従業員達の噂を聞いて、ラリイとネイルは顔を合わせる。

「まさか・・・ラリイの小鳥の伝達が母親竜に届いた?」
「まさか・・・無事に届いたのかな?」

2人は居ても立っても居られずに、女将が危険だから行くのは止めなと
言う制止も振り切って、あの見世物小屋に向かった。
予感は的中していた、あの見世物小屋はボロボロになり、
見るも無残な状態になっていた。
そして、捕まっていた生き物は全て逃げ出したようだ。
あの幼竜が捕まっていた鉄の檻も綺麗に壊されていた。

「聞いたか?ここを襲ったドラゴン。
この見世物小屋だけ綺麗に襲ったんだとよ。」
「ああ、何でも、自分の子供を取り返しに来たんじゃないかって話だろ?」
「まーあそこの見世物小屋を管理してた男は、悪い噂が
絶えなかったから、いいんじゃないか?」
「これで少しは懲りるだろうぜ。」
「だな。」

2人の兎人がひそひそと会話をしている。
それが耳に入ったラリイとネイルは笑顔になる。
どうやら、ドラゴンは、他の人間には害を与えることはなかったようだ。
自分の子供を取り返しにだけやって来たようだ。

「な、なんか凄いことになっちゃったけど、良かったね!ネイル!」
「ああ、なんかわからんが、解決したみたいだな。」
「これで、私達も安心して帰れるね!」
「そうだな。」

2人は、あまりにも可笑しくて、笑いながら宿に帰った。
その後で、心配した女将に少し説教はされたものの、
事の顛末を女将に話たら、女将も流石に驚いていた。

「あっ・・・」

夜も遅く、ネイルはラリイと別れて、自分の部屋に戻って来てから、気づいた。
また自分の気持ちを伝えることが出来なかったと。
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